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【社会】

長良川でアユ寄生虫激減 河口堰の影響か

2010年6月13日 10時54分

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 アユに寄生する宮田吸虫の数が長良川下流で激減していることが、岐阜大の粕谷志郎教授(寄生虫学)と浜松医科大の共同調査で分かった。寄生虫数は生態系の健全性を示す指標で、一般にこうした寄生虫が自然界に適度に存在していることは生態系の豊かさを示す。粕谷教授は「長良川河口堰(ぜき)の影響で川底にヘドロがたまり、アユの前に寄生する巻き貝のカワニナが死んだため」と推測している。

 粕谷教授らの研究グループは1990年から2008年に、木曽川、長良川、揖斐川でとれたアユ(各10匹ずつ)の宮田吸虫の数を調査した。

 90年には長良川のアユ1匹あたりの寄生虫は3663匹で木曽川(770匹)や揖斐川(1020匹)より圧倒的に多かった。だが、2000年に1105匹に激減。以後、減り続け、08年は157匹で、3川の中で最も少なかった。木曽川と揖斐川は増減を繰り返している。

 08年7月には長良川と揖斐川の河口から34キロ地点で、カワニナの生息調査を実施。揖斐川では6匹が見つかったが、長良川は確認できなかった。

 粕谷教授は04、05年の調査で、河口堰の湛水(たんすい)域に堆積(たいせき)したヘドロに、下水などから流れ込んだ化学物質(環境ホルモン)が高濃度で付着しているとの研究結果をまとめている。寄生虫の減少について「長良川下流の川底は生物に厳しい環境でカワニナが生きられなくなったと考えられる。正常な生態系が機能していない」と指摘する。

 長良川河口堰管理所の丹羽賢一環境課長は「寄生虫やカワニナの調査はしていないので何とも言えない。堰運用後に行った堰上流の底質調査では、状態が悪化したとの結果は出ていない」と話している。

 【宮田吸虫】 成虫の大きさが1〜1.5ミリほど。哺乳(ほにゅう)類の小腸に寄生し、糞(ふん)とともに卵が川に排出され、糞を食べたカワニナを中間宿主にして体内でふ化する。その後、幼虫が水中に泳ぎ出し、アユやフナなど淡水魚に寄生する。

(中日新聞)

 

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