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マニフェスト検証:’10参院選/3 診療報酬アップ /奈良

 ◇処遇改善へ不透明な配分 改定評価も充実遠く

 「おなかが痛いので診てもらえませんか」。6月初旬の午後8時過ぎ、県北部にある中規模の民間救急病院。腹部をおさえた60代の男性が、家族に付き添われて駆け込んできた。レントゲンやCTなどの検査をした結果、男性は腸閉そくと診断され、そのまま入院することになった。

 男性の処置が終わったのは午後10時ごろ。翌朝までに受診した救急患者は6人に上った。当直医は「仮眠ができればましなほう。いつ電話が鳴るか気になって眠れないですけど」と話す。

 昨年度の診療報酬改定では、救急や産科、小児科などが重点配分された。同病院の事務長は「上げるべきところを改定した」と評価する。改定前より約3%の増収となる見込みで、一部は医師や看護師らの昇給に充て、残りは借入金の補てんに回すという。別の民間病院の事務長も「増収分で人を増やしたい」と話す。

    ◇

 しかし、深刻な経営難に陥っている公立病院の場合、診療報酬の増収分が医師の処遇改善に向けられるかどうかは不透明だ。

 奈良、三室、五條の県立3病院は、08年度決算が総額約21億円の赤字になり、県の補助金で補てんした。3病院の診療報酬は1・5~4%の増収が見込まれているが、どう配分するかは未定だ。県の武末文男医療政策部長は「超過勤務気味の医師や看護師の処遇改善に充てたい」と言うが、財政を統括する稲山一八総務部長は「要望は考慮したいが、補助金を減らす可能性もある」と、赤字補てんに充てる可能性も示唆する。

    ◇

 一方、開業医は再診料が引き下げられ、事実上のマイナス改定との受け止め方が大勢だ。塩見俊次・県医師会長は「開業医の士気を低下させる改定だ。公立病院は赤字なので、診療報酬を上げてもどこまで現場を充実できるのか」と疑問を投げ掛ける。

 厚生労働省によると、県内の医師数は2907人(08年)。内科医が820人で最も多いのに対し、救急医は18人、産婦人科医は79人、小児科医は154人と、大きな偏りがある。背景には、過酷な労働条件などが指摘される。

 ある民間病院の事務長は「医師の定数を増やしても、現場で戦力になるのは10年後。医師の奪い合いをしている厳しい現状に変わりはない。改定は評価できるが、根本的な解決にはほど遠い」と話す。救急や産科医療が、現場の奮闘によって支えられている状況は今後も続きそうだ。

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 ■ことば

 ◇診療報酬

 保険診療によって医療機関が受け取る報酬。民主党は衆院選マニフェストで増額を掲げ、昨年度の診療報酬改定では、0.19%と10年ぶりに引き上げられた。財源5700億円のうち4400億円を入院医療に充てて病院を優遇。特に医師不足が深刻な救急、産科、小児科、外科への配分を手厚くした。一方、2回目以降の外来診療にかかる再診料については、診療所を引き下げて病院と同じにした。

毎日新聞 2010年6月13日 地方版

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