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aikeの日記 RSSフィード

2010-05-30 プログラマーが知っておくべきうつ病の知識

少し前にITproにプログラマーは「こころの病」にかかる比率が高いという記事が載っていましたが、あらためて言われるまでもなくプログラマーストレスで精神を病んで離脱するケースは自分の周りを見ても非常に多いです。こんな状況であればプログラマーに対する危険手当やプログラマー専用うつ保険とかあっても良いと思うのですがなかなか社会は変わらないようです。

このような状況に対抗するにはプログラマー自身が自衛のために知識を得ることだと思います。プログラマーの武器は知識であり、ハックする好奇心なのだから、あらかじめ十分な知識を身につけて不当なストレスに対して有利に戦いをすべきなのです。

 

1.判断力低下は想像以上に怖い

うつで一番恐ろしいのは、気分が憂鬱になることではなく、判断力が低下することです。

判断力が落ちるとどうなるかと言うと、自分が健康なのかどうか判断できなくなり、仕事を休むべきなのかどうかで判断を誤り、病院に行くべきなのかどうかで判断を誤り、良い医者かどうかで判断を誤り、周りの助言は正しいのかどうかで判断を誤り、自分は絶望的な状況にあるのかどうかで判断を誤り、生きるべきか死ぬべきかで判断を誤ります。

そういったときに自分の健康状態を把握するのは大変難しいということを認識した上で、たとえば、一日に5通メールが書けなくなったら要注意とか、未処理の案件が5件以上何日も手付かずでたまるようになったら通院するなど定量的に判断できる基準を作っておくと良いと思います。

 

2.カウンセリングという幻想

うつはカウンセリングで治すものではありません。ただの「悩みごと」ではないので相談ではなく治療に取り組むべきです。

世界のどこかにはカウンセリングで劇的にうつを治す先生もいるかもしれませんが、日本で頻繁に通院することができて保険が適用できて怪しくないカウンセラーを見つけるのは大変困難です。少なくとも私のまわりではカウンセリングのみでうつを克服した人は見たことがありません。

 

3.薬を飲むと半年で治る

投薬治療を忌避する気持ちも理解できなくはないですが、本を読んで知識を得れば得るほど、うつの治療には投薬が良いことがわかると思います。薬を飲むことは健康回復への最短の道であり、しかし最短の道でも治るまでには半年程度かかると最初に認識しましょう。

 

4.薬を飲まないと治るまでに数年かかる

どうしても薬が嫌であれば、ストレスがかからない状況で安静にしていることでたぶん治りますが、それには数年かかると思います。普段、風邪くらいしか病気になったことのない人は、治るまでに数ヶ月〜数年かかる病気が存在するということをなかなか実感できないかも知れません。

 

5.治療のセオリーを知る

うつ治療のセオリーは、投薬開始後2週間程度様子を見て効果があらわれないようであれば別の薬に変えてみて、ということを繰り返し、最終的に最適な薬を適用するというものです。これは、うつの薬は定番が何種類もあるものの、患者によって効果が出るものが異なるからです。

また、問診では話の内容をあまり聞いてくれていないように感じることもありますが、精神科の医師は、内容そのものだけでなく、表情や話し方、問いに対する受け答えの的確さのような部分を観察していたりします。また、判断力が落ちているあなたの考えを否定することも多いと思います。

この段階で薬漬けとかヤブ医者とか判断してしまう人が多いのが大変残念です。最初に書いたように自分の判断を信頼しすぎず、また医者にカウンセリングを求めすぎないようにしましょう。

また、何と言う薬を試して最終的に何と言う薬を飲み続けることになったのか記録しておくと、数年後に再発したとき効率よく治療を受けることができるのでお勧めです。

 

6.予防には認知療法おすすめ

それでも薬はちょっと……とか、まだ通院するほどじゃないという人のために認知療法という手法がおすすめです。

ちょっと乱暴にイメージで伝えると、プログラミングにおけるXPタスク管理におけるGTD、生産管理におけるTOCが登場したときのような画期的な手法で、いくつかのプラクティスを実践すると不思議なくらいストレスなく生きられるという、まさにギーク向けのメンタルハックです。

たとえばうつ傾向の人に「深刻に考えるな」という助言は何の役にも立ちませんが、認知療法では、ロジカルに思考して状況が深刻ではないという結論を導くトリプルカラム法というプラクティスを用意しています。また、手付かずの仕事がたまるのは、難易度、満足度を自分の中で不当に見積もっているためであるとして、それを適切に見積もるための手法もあります。

深刻な状態の人は専門医の治療を受けるべきですが、比較的健康な状態のときにこのへんの知識を得ておくことは、うつを予防して健康を維持することに役立つと思います。

認知療法に興味があれば、原典であるデビッド・バーンズ博士の本『いやな気分よ、さようなら』や、2ちゃんねる 認知療法スレッドを見てみてください。

たぬたぬ 2010/06/01 13:39 医師から見ても、非常にしっかりとまとまった内容だと思います。
SI業界の方々は、睡眠を削って仕事を成し遂げる機会が多いと思われます。
これが、精神の変調をきたす原因になると思います。

き 2010/06/01 20:16 1割負担で優秀なカウンセラーを何人も抱える病院は、普通にあります。
また、カウンセリングのみでも、うつ病は克服できます。

薬を飲むべきだと主張しているが、クスリに依存してしまう人が多いのも事実です。
その危険性を示さずに、闇雲にクスリをすすめるのはどうかと思います。

投薬できるのは医師だけですが、認知療法は、カウンセラーでも行えます。
高額な治療費を請求する悪徳カウンセラーもいますが、そうじゃない人も大勢います。
カウンセラーを一方的に批判するのは、やめてください。
何年も勉強して臨床心理士の資格を取得してる人もいるのですから。

madowaserumadowaseru 2010/06/01 22:14 精神科医をしています。
非常にバランスが取れて、大事なことを簡潔にかかれた記事だと思います。

ひとくちにうつ病といっても、病態は人さまざまなので、
治療方針もそれぞれのケースで変わってしまいます。
もちろん「き」さんが指摘されているようなケースもあると思いますが、
カウンセリングのみでも、うつ病は克服できます、と断言されてしまうのは
危険ですし、一方的な批判が行われているとは思えないのですが・・・

私自身の経験ですと、薬でもカウンセリングでもなく、
休養と安らぎと、他者からの支えが一番大きいというのが実のところです。

「メールが返信できなかったら」などの目に見える形での枠組みは、
わかりやすくて参考になりました。

経験者経験者 2010/06/02 01:35  軽いうつなら、薬より運動とセントジョーンズワートの方がいいです。薬(ルボックス、パキシル)は肉体的精神的依存がひどく、また射精障害もありパキシルは半分くらいの人がひどく太ります。セントジョーンズワートはヨーロッパでは保険適用の薬です。日本では通販で買えます。運動する気力があるなら運動が一番、てきめんに効きました。心拍数を上げるテンポの良い運動をやるとかなり良くなります。(経験者からでした。)

ゴリ丸ゴリ丸 2010/06/03 09:50 一般的なメンタルヘルス不全の兆候は「睡眠」に現れてきます。
仕事が忙しく寝る時間が無い、もしくは寝ようと思っても眠れないなど、これまでと異なる睡眠パターンが出てきたことも大きな判断基準になります。

これは同僚や友達から見た場合も同じで、他人の精神状態を会話から聞きだすことは大変難しいですが、相手の睡眠状況が良好かどうかは簡単に判断することができます。
相手のメンタルヘルスに疑いがある場合、まず睡眠状況を聞いてみるのも一つの手段だと思います。

経験者2号経験者2号 2010/06/04 10:58 aikeさんのおっしゃる方針も一つの有効な治療方針としてあると思います。

うつと診断されて、4週間会社を休み、薬は使わずに、カウンセリング+自分で認知療法+呼吸法を続け、完全治癒しました。記憶によると、半年ぐらいでまずまず元気になり、そのあと1年ぐらい、仕事で極度のプレッシャーがかかると2、3日落ち込む、という状態がありました。そのあとは、たまに1日ぐらい落ち込むこともありますが、それは生身の人間にはあることとして受け止めています。

自己を確立すること(自分の意思を持つこと、自分の意思を自分の意志として表現すること、他人の意思を他人の意思として受け止めること、とでも言いましょうか)、これが、私にとっては決定打でした。