中国新聞オンライン
中国新聞 購読・試読のお申し込み
サイト内検索

日本の宇宙開発史に金字塔 はやぶさ帰還 '10/6/14

 【ウーメラ(オーストラリア)共同=斎藤香織】小惑星探査機「はやぶさ」が達成した成果は、日本の宇宙開発史に何段跳びもの飛躍をもたらした金字塔といえる。効率良く、小さいが独自性の高い衛星や探査機をつくるのは日本のお家芸。はやぶさは、柔軟な発想と精密な技術の裏打ちにより、こうした日本の伝統的な宇宙開発の強みを再認識させてくれた。

 オーストラリアの砂漠に落下したカプセルが回収され、中に小惑星の砂が入っていれば、太陽系形成史の理解に貢献する試料としても生かされるだろう。

 米国が宇宙空間から彗星すいせいのちりを回収した例はあるが、月以外の天体に着陸して戻った探査機はない。着陸前には小惑星を至近から観測、未知の実態を詳細に伝えた。欧米では、はやぶさに刺激されて小惑星探査への関心が急速に高まった。

 プロジェクトチームは、度重なる危機をあらゆる技術的なアプローチで克服。宇宙の過酷な環境による劣化で機能が次々失われると、別の機能でやりくりする離れ業で、絶望視された帰還を実現した。技術的、科学的な成果以上に、次世代の科学者、工学者が育つ貴重な経験の場となった。

 ただ、こうした経験を生かす次の計画はまだ政府に認められていない。次の機会があるのかどうか、不透明なままではあまりに寂しい。有人宇宙開発と比べると地味な印象の科学探査だが、夢とロマンをかき立て、世界をリードする新たなプロジェクトを期待したい。




HomeTopBackNextLast
安全安心