南天の天の川の前を右下から上方へ横切った「はやぶさ」と回収カプセル=13日午後11時21分、豪南部グレンダンボ近郊、赤道儀を使って3分露光、東山写す
「はやぶさ」からカプセルの分離が確認されると宇宙科学研究所はファンの拍手に包まれた=13日午後7時51分、神奈川県相模原市中央区、福岡亜純撮影
地球を旅立って7年。約60億キロにわたる長旅を終えて小惑星探査機「はやぶさ」が、再び地球に戻ってきた。多くのトラブルに見舞われながら、世界初の小惑星往復に挑戦し成功した小さな探査機の最後の姿を、多くのファンが見守った。
「はやぶさ」の管制室がある宇宙航空研究開発機構の宇宙科学研究所(神奈川県相模原市)には、13日午後から親子連れのファンらが400人以上詰めかけた。管制室の様子が中継される会議室だけでなく、ロビーも立ち見であふれた。帰還したカプセルからの信号の受信が伝えられると、「おー」とどよめきがわき、30秒近く拍手が鳴りやまなかった。
市内の小学6年生、福井啓太くん(11)は、父親で会社員の隆之さん(43)とロビーの最前列に陣取った。啓太くんは「帰ってくるまであった不安が消えた。ありがとう、すごかったねと言いたい」。
相次ぐ困難を乗り越えてきた姿に共感した人は少なくない。ネットなどで「はやぶさ君」として人気者になった。
帰還の様子はネット中継され、夜空にきらめいたはやぶさの最期の輝きに見入った。動画サイトや簡易投稿サイト「ツイッター」などには「忘れられない美しさだった」「感動をありがとう」と次々にコメントが寄せられた。生中継した「ニコニコ動画」のサイトには約20万人が集まり、視聴者の人数を制限した。
和歌山大の尾久土(おきゅうど)正己教授は、ネット中継のため、オーストラリアに向かった。日中に流した試験映像でも4千人以上の視聴者が集まった。「はやぶさファンの一人として、地球帰還を見届けられるのはうれしい。多くの人に見てもらいたい」
現地に足を運んだファンもいた。東京都世田谷区の公務員秋田雄一郎さん(35)は、カプセルが着地する予定の砂漠地帯までレンタカーを約800キロ走らせた。目標に向かってあきらめない研究者の姿勢に自分の人生を重ね、夢を実現するため転職を決意したという。「はやぶさと、宇宙機構の人たちから決断する力をもらった」