アゴラでも書いたが、ソフトバンクの「アクセス回線会社」は、彼らが4年前に「竹中懇談会」に提案して却下された「光ファイバー公社」と同じものである。後者ならまだ検討の対象になるのだが、「民営」だとか「NTTの株主価値が上がる」とかわけのわからないことをいうから話が混乱する。問題は「1円も税金を投入しない」ということではなく、コントロール権(議決権)の所在である。
ブロードバンドのインフラは道路と同じだから政府が敷設すべきだ、という議論は昔からあり、そういう制度を実施している国(カナダ、オーストラリアなど)もあるので、これはナンセンスな提案ではない。しかし問題は、なぜ政府(国営企業)がやらなければならないのかということだ。これについては契約理論で厳密な議論が行なわれているが、簡単にいうと次のような場合にわけられる:
国営化が意味をもつのは、3の場合に限られる。NTTのアンバンドル規制は、これにあてはまるきわめて例外的なケースだった。他の国では、政府の規制に既存の通信業者が従わず、訴訟などで対抗したが、NTTは重要事項を否決できる1/3の株式を政府が保有していたため、政府に対して訴訟を起こすことができなかった。その結果、NTTの株主価値は毀損されたが、国民にとっては望ましい結果が実現した。
しかしこれは日本政府が正しい情報をもっていたからというより、いろいろな偶然の複合した「まぐれ当たり」であり、2度おこることは期待できない。通信速度の絶対的な上限は光ファイバーのほうが上だろうが、無線でも1Gbpsは出ており、費用対効果の点では無線のほうがまさる。それより大きな変化は、通信の主流が固定から無線に移動し、個人ユーザーの光ファイバー需要が減少する可能性があることだ。
つまりソフトバンクの計画が意味をもつためには、政府が今後30年の市場とイノベーションを完全に予見できるという条件が不可欠で、これが満たされない場合には、全国民を巻き込んで赤字事業を強行するリスクが大きい。民営化によって大きな成果を上げたNTTを国営化することは政治的に不可能であり、望ましくもない。
- 政府が完全な情報をもち、完全な契約が結べる場合:政府が全知全能なら、すべての経済活動を政府がコントロールすることが合理的である。
- 政府の情報が不完全だが、完全な契約が結べる場合:政府が企業を所有する必要はなく、企業を規制(契約)によってコントロールすればよい。
- 政府が完全な情報をもっているが、完全な契約が結べない場合:企業に機会主義的な行動の余地がある場合は、政府が企業を所有してコントロール権をもつ必要がある。
- 政府に完全な情報がなく、完全な契約が結べない場合:所有形態は意味をもたず、企業が分権的に問題を解決するほうが効率的である。
国営化が意味をもつのは、3の場合に限られる。NTTのアンバンドル規制は、これにあてはまるきわめて例外的なケースだった。他の国では、政府の規制に既存の通信業者が従わず、訴訟などで対抗したが、NTTは重要事項を否決できる1/3の株式を政府が保有していたため、政府に対して訴訟を起こすことができなかった。その結果、NTTの株主価値は毀損されたが、国民にとっては望ましい結果が実現した。
しかしこれは日本政府が正しい情報をもっていたからというより、いろいろな偶然の複合した「まぐれ当たり」であり、2度おこることは期待できない。通信速度の絶対的な上限は光ファイバーのほうが上だろうが、無線でも1Gbpsは出ており、費用対効果の点では無線のほうがまさる。それより大きな変化は、通信の主流が固定から無線に移動し、個人ユーザーの光ファイバー需要が減少する可能性があることだ。
つまりソフトバンクの計画が意味をもつためには、政府が今後30年の市場とイノベーションを完全に予見できるという条件が不可欠で、これが満たされない場合には、全国民を巻き込んで赤字事業を強行するリスクが大きい。民営化によって大きな成果を上げたNTTを国営化することは政治的に不可能であり、望ましくもない。
コメント一覧
ただ歳出削減するにも、公共事業で箱物・土建の雇用を
維持していのを、福祉関連へ人間をまわすということを
言っているのでしょうか。
公務員の知人は自分の職場を「うちの会社」といいます。
採用された省庁に忠節をつくしているんですね。
これを日本全体に忠節を尽くすような仕組みに変更する
ことを期待します。新規採用するのではなく横断的に人の
足りない横の省庁に移籍させる。民間では転勤出向、転籍は
ざらですよね。いやならやめるしかないですよ民間は。
政治改革として、代議士公設秘書は「現物」支給をする
のはどーでしょうか。
総務庁などから中立の公務員を派遣する。数年おきに別の
政党でも議員さんのところに移動してもらう。漫画を買う
ような秘書が必要なら自腹の私設秘書でお願いする。
たとえば、親父の政治家の資金団体から、子供の政治団体へ
寄付は認めないようにする。今は無税の贈与となっている
のでは? 政治資金はあまったら、国に帰すのが筋ですね。
現小泉衆議員さんへ、純一郎さんの政治団体から
寄付があったかどうか、だれかご存知?
これくらいやったら、菅さんを偉いといいます。