
最近、国債の需給が悪化して金利が上がるリスクがよく話題になる。バラマキ財政を支持する人々は「円建てで発行していれば問題ない」などというが、本質的な問題は国債の相場ではなく、片山=池田本でも論じたように世代間の負担の不公平である。
「無駄を省いてから」といって増税を先送りすると、税率はいま引き上げるより高くしなければならず、若い世代の超過負担が大きくなり、将来の増税の不安が消費を減退させる。本書の次のような提言は、多くの財政学者のコンセンサスだろう:
負の所得税とベーシック・インカムは、所得の捕捉率が100%だったら同じである。いま課税前の所得をY、税率(一定)をt、課税最低限度額(控除額)をY*とすると、負の所得税の課税後所得Ynは、Y≧Y*の場合は課税前所得より小さくなり、Y<Y*の場合は大きくなるが、いずれの場合も次の式であらわせる:
Yn=Y-t(Y-Y*)=(1-t)Y+tY*
他方、ベーシック・インカムBを一律に支給する場合の所得Ybは
Yb=(1-t)Y+B
したがってtY*=Bのとき、Yn=Ybとなり、両者は同一である。しかし負の所得税の場合は税の給付額がtに依存するので、所得捕捉率の低い自営業者などの所得がY*が超えていても不正に給付を受けることができるが、BIの場合は給付額は一定である。もちろん課税逃れはいずれの場合も起こるが、不正受給が起こらず事務処理が簡単な分だけBIのほうがすぐれている。
「無駄を省いてから」といって増税を先送りすると、税率はいま引き上げるより高くしなければならず、若い世代の超過負担が大きくなり、将来の増税の不安が消費を減退させる。本書の次のような提言は、多くの財政学者のコンセンサスだろう:
- 消費税率をすみやかに引き上げる
- 生活保護の不備を是正するために給付つき税額控除を導入する
- 労働所得には累進課税し、金融・資本所得には20%程度の定率課税を行なう
- 法人税率を引き下げ、租税特別措置を縮小する
負の所得税とベーシック・インカムは、所得の捕捉率が100%だったら同じである。いま課税前の所得をY、税率(一定)をt、課税最低限度額(控除額)をY*とすると、負の所得税の課税後所得Ynは、Y≧Y*の場合は課税前所得より小さくなり、Y<Y*の場合は大きくなるが、いずれの場合も次の式であらわせる:
Yn=Y-t(Y-Y*)=(1-t)Y+tY*
他方、ベーシック・インカムBを一律に支給する場合の所得Ybは
Yb=(1-t)Y+B
したがってtY*=Bのとき、Yn=Ybとなり、両者は同一である。しかし負の所得税の場合は税の給付額がtに依存するので、所得捕捉率の低い自営業者などの所得がY*が超えていても不正に給付を受けることができるが、BIの場合は給付額は一定である。もちろん課税逃れはいずれの場合も起こるが、不正受給が起こらず事務処理が簡単な分だけBIのほうがすぐれている。
コメント一覧
法人税の減税は高額所得者の増税とセットにするしかないでしょう。法人税を20%にするのは無理でも30%以下にしないといけない、その場合、年収1800万以上の所得税を50%以上にするしかないと思います。
ベーシックインカムはリスクプレミアムとセットで導入するしかないと思います。問題は消費税です。課税対象から主要な食料を外すのであれば、主要な燃料も外さないといけない。二酸化炭素がどうのこうのと言っている民主党政権に電気、ガス、水道料金を非課税化できるのでしょうか。
たしかに社会保障費を増やして景気対策にというのは意味不明ですね。現場レベルでは、厚労省などは既に相当に頑張って医療費の支出などの圧縮のために知恵を絞っているようですし。長妻さんも当然そのラインで合意してるようですし、その流れからいっても、これ以上なにか余計な支出を増やすというと混乱してくるし、全く非現実的なことにしか聞こえないですね。中身のない官僚たたきも見苦しい。
所得税最高税率引き上げを主張する人がいるのは心外ですね。
所得税の最高税率を上げたら絶対に日本から出て行きます。
今でも検討中ですが、税率引き上げは迷っている私に決断させるでしょう。
多少不便でもネットでいくらでもやりとり可能なので、会社組織に縛られない人はみんなそうすると思います。
最高税率を引き上げたら、企業におんぶ抱っこの人以外の税収は望めなくなります。
私のような無名な人間が何書いても説得力がないのでユニクロの柳井さんの言葉を借ります。
国にお金がないのに、国民に分配ばかりしていると、将来、日本は潰れる可能性があります。国民も、国からお金をもらうことばかり考えているようでは、おしまいです。
一生懸命働いて税金を納める人が敬意を払われるような社会にしていかないといけない。今の日本は税金を払わない人のほうが、声が大きい気がします。それはちょっと違うのではないでしょうか。
つまり所得税の最高税率引き上げというのは税金を払わない人達の大きな声に過ぎません。
日本は現在でも世界で4番目に最高税率の高い国です。
相続税世界一、贈与税世界一、法人税世界一、これに所得税も世界一になったら日本はますます衰退することでしょう。
これ以上税金上げられたらリスク取るのもバカバカしくなってきます。
私はモルモットになるつもりは更々ありません。
世代間格差だけでなく、地域間格差も問題ですね。
法人税は国税ですが、もし地方が法人税を決めれるようになれば、今のような東京一極集中が是正され、地域間で競争が生まれるでしょう。
たとえば、横浜の法人税が東京よりも5%低ければ、横浜に移る会社も出てくるだろうし、大阪が法人税を下げれば、大阪からの企業流出を防げるでしょう。
地域間での競争が生まれるような税制を考えてもらいたいものです。
「平等主義」を捨てるときなのかも知れません。所得税を上げるのであれば、納税額が大きい人にはある種の特権を認めるようにしなければ国を捨てる人が続出するでしょう。
政治的には不可能でしょうが思考実験としては次のような特権が考えられます。
「高額納税者は納税額に応じて複数の妻、もしくは夫を持つことが出来るようにする。」
「高額納税者とその親族は納税額に応じて優先的に臓器移植を受けられるようにする。」
etc.
日々向上する努力をしているが、現状恵まれていない人々を支援するためなら協力を惜しみません。しかし、変わる努力もせず文明に寄生しているような輩に分けてやる金はびた一文ありません。
http://rionaoki.net/2010/06/4215
子供手当ての効果も薄いでしょう。子供の教育にとって重要なのは親の生活習慣です。親の生活習慣を変えずに金だけ配っても教育レベルなんて上がりません。大体勉強するのに金なんて要りません。私は小学校中学校の頃は自転車で30分程かかるところにある図書館に毎週通って本を借りて勉強していました。必要な経費は0です。これは親の影響です。
高額所得者を妬み、弱者保護などの名目でその富を奪い取ろうとする人たちには次の言葉がお似合いです。
「富を軽蔑する、という人間をあまり信じるな。富を得ることに絶望した者が富を軽蔑するのだ。そして、こういう人間がたまたま富を得ると、何よりも始末が悪い。」
byフランシス・ベーコン
>金融・資本所得には20%程度の定率課税
所得にではなく元本に税金をかけるべき。
過剰貯蓄がデフレの原因のひとつなら、預貯金課税はデフレ脱却の有効な手段だと思います。
私は世代間の不公平の本質的な原因は人口ピラミッドの形状にあると考えています。
よって世代間の不公平は税制の変更では本質的には解決しないと考えています。
財政学者のコンセンセスであるとされる4つの税制改革には基本的に賛成します。
しかし絶望的な低成長を予測する(低金利の)国債の相場を毎日みてきた者としては、4つの税制改革を行っても日本の成長率が安定的に押し上げる事になるとは思えません。
人口ピラミッドの形状の問題は少子化の問題と置き換えてもいいでしょう。
(移民の問題は大きくなりすぎるので書きません)
少子化問題は今の日本がどんな無理をしてでも解決しなければいけない問題だと思います。
よって民主党の子供手当に私は全面的に賛成です。
出産育児一時金の支払い方法の変更も非常に良い。
安易なようにみえて日本の危機をストレートに認識している政策だと思います。
使わない道路ではなく子供の数に対してバラまくのであれば、同じバラまきでも意味が違います。
マインドを動かす政策だと思うので数理的に説明する事はできませんが、税制改革より効果は大きいと思います。
社会主義でも自由主義でも市場主義でも子供の数が減ればその国の成長率は上がらないというのが私の考え(仮説)です。
子供手当は満額にならなくて非常に残念。
私は子供手当の財源にするなら、高額所得者の所得税の増税にも消費税の増税にも賛成します。
無駄な支出を切り詰める事を前提にしてですけどね。
10年国債が継続的に1%台って本当にまずいですよ。
私は国債の相場が本質を映していると思います。
重箱の隅をつつくようで大変恐縮ですが、国債の需給が逼迫すると金利は下がります。
国債の需給が緩んで金利が上がる、が普通の表現ですが、これだと良い金利上昇も含まれてしまいます。
悪い金利上昇のリスクを表現するなら、国債の需給が崩壊して金利が上がるリスク、という感じでしょうか。
ほぼ間違いなく単純な誤植だと思いますが、生意気ながら一応間違いを指摘しておきます。
そうですね。訂正しました。
BIと組み合わせるなら、消費税が効率なのですかね?一方で、所得税の累進はできるだけ緩和すべきですし、法人税も下げなければ話にならないと思いますので。皆でより公平に税負担をし、より公平に社会保障の恩恵にあずかるというのはある種の理想ですが、具体的にどのようなものが効率的なのかは難しい問題ですね。実際にBIをやるとすれば、現行の生活保護のうちの一部の扶助や、国民年金の未納問題ともかね合わせて議論させるべきなのでしょうか。
少子高齢化が進むとわかっている以上、日本経済の縮小は明らかで、現在のデフレはそれに向けての調整と考えられます。
しかし子供手当てはその財源が将来の増税であると人々に織り込まれた時点で効果を失います。
だからこそ税制の枠組みそのものを変えましょうというのが税制改革の必要性を訴える趣旨かと思われます。
ベーシック・インカムは将来への不安払拭の為の財源の確保を先送りしない、理にかなったものだと考えています。
需給の悪化がもっとも自然な表現ですね。
ありがとうございました。
初めまして、いつも興味深く拝読させて頂いています。
この記事では、負の所得税よりもベーシック・インカムの方が効率が良いという事ですが、そのベーシック・インカム分はバウチャーで対応するのは難しいんですかね
たとえば一月の平均食費の6割とか7割までなら食料品を専用のクーポンICカードで買えるとか
衣食住それぞれ専用のカードを配れば少なくとも生きてはいけるから、後は自分でがんばれみたいな
ただ住居は地価とかあるんで面倒臭そうですが・・・
これなら消費税率を全商品一律2,30%位にしても、「生活必需品は云々」みたいな文句は少なそうです
まあこんな事は専門家の方々はとっくに検討してて、問題点いっぱい出てそうですねw
素人の戯言、失礼しました。
法人税を世界水準に引き下げると同時に、

赤字の繰り越しを廃止すべきだと思います。
過去に、巨額の利益を計上しておきながら、
税金を払わなくてすむ企業がありました。
「…租税特別措置を縮小する」
に含まれていれば、勉強不足で失礼しました。
年収1800万以上の所得税を50%以上にすることに反対の人がいるようですが、それをやらないで法人税を30%以下にすることはできないでしょう。アメリカのように所得税を小さくして住民税と相続税を大きくするという手もあります。しかし日本の場合、適切でないと考えます。
高額所得者が海外に引っ越したとしても優良法人を国内に残すことのほうが国益になると考えます。個人的に、金持ちは嫌いですね。うざいですからw
法人税を引き下げる代わりに消費税を上げるんでしょうね。法人税を30%以下にするために、かつ、税収不足を補うために、消費税をいくらあげる必要があるのか判りかねますが。
消費税を上げれば、消費が減少し国内企業の収益が悪化し賃金が下がり税収がかえって下がる、と思うのですが、そのようにならない事を過去の消費税増税時の出来事とそのときの経済情勢を踏まえて説明して欲しいです。
もちろん、法人税を引き下げることによってどの程度企業収益が増加して、その増加が賃金にどの程度反映されて、税金として回収できるかもセットで説明をお願いします。
橋本内閣時の消費税増税、トヨタが過去最高の収益を上げたときの春闘などが、良い例と思いますので、是非、宜しくお願いします。
jestemnekoさん
>住民税と相続税を大きくするという手もあります。しかし日本の場合、適切でないと考えます。
これはなぜでしょうか?相続税は控除が強力に効いており”実際に課税されるのは相続発生件数全体の5%”と知って驚いたのですが、控除をやめることにより税収を増やす余地が有るのではないでしょうか。
増税する場合、「広く薄く」増税するのがセオリーだと思いますね。といっても消費税のことではなく、各税率をまんべんなく少しずつ上げるのです。
現在は、所得、消費、資産を担税力の指標として各税目が設定されてます。今のバランスが最適かどうかは分かりませんが、一応の社会的合意ができてると思います。
どんな増税であれ何らかの悪影響を及ぼすことは避けられないでしょうが、全体のバランスを崩すことは、より大きな悪影響をもたらし、社会的合意の形成を阻む結果となるのではないでしょうか。
他人の税負担を増やす提言には大胆になりやすいものですが、「消費税を数%増やして貧乏人も負担しますので、所得税の最高税率も少し上げますが、高額納税者のみなさんも我慢してください」
これしかないと思います。
kiyoshi_kazuyaさん、日本の場合、「家業を継ぐ」という人が多いじゃないですか。アメリカ型への変更はあまりなじまないと思うわけです。
統治機構をイギリス型に変更するのであれば徴税の形態もイギリス型にしたほうがよいのかもしれません。イギリス型の徴税を勉強してみたいと思うのですが、今の私にその余裕はありません。
さしあたり言えるのは、法人税の減税と消費税の増税を一対にするというのは、よい組み合わせではないということです。法人税の減税と高額所得者の増税を一対にするのであれば、政策として妥当でしょう。自民党は政府民主党案に反対するしかないと思います。
日本より所得税+地方税の最高税率が高い国はオランダ、スウェーデン、デンマークの3ヶ国です。
これらの国の最高税率は日本よりせいぜい約5%高い程度です。
そしてこれらの国々では相続税がありません。
なぜアメリカの相続税を出してきたのか理解できませんが、アメリカは未公開株への税金は非課税です。
日本の未公開株は税務署が勝手に値段をつけて、現金で要求してきます。
現金で要求されるから、銀行が貸してくれなければ廃業するしかありません。
仮に貸してくれるとしても、借金背負ってまで家業を継ぐのはリスクがあるから廃業に追い込まれます。
それにアメリカの税控除は最大350万ドル(3億円以上)で日本のそれは5000万円+1000万円×法定相続人しかありません。
税率もアメリカは約45%で日本より低いです。
それに日本の相続税収なんてたった1兆2000億円です。
廃止した時のメリットの方がはるかに大きいでしょう。
税金が高いとアングラマネーが増えて自由な経済活動を妨げます。
税金を払わない人ほど痛みが理解できないのでしょうが、日本ほど高所得者への税の重い国は他に思い当たりません。
法人税だけを引き下げても、海外からはもちろん、国内の優秀な人材が集まりにくくなってしまい、メリットは限定されます。
なぜ世界中の金持ちが日本に移住したくなるような税制を考えられないのか。
金持ちへの激しい妬みの思考は成長を妨げます。
80年代のスウェーデンでは所得税の税率を平均約1.5倍にしたら、数年後には0.6%税収が減ったそうです。
その時の景気の波もありますが、所得税という比較的安定財源となる税源でさえ増税すると税収が減ってしまうのです。