1 はじめに
国民の皆さん、国会議員の皆さん、菅直人です。このたび国会の指名により首相の重責を担うこととなりました。国民の皆さんの期待に応えるべく、力の限りを尽くして頑張る覚悟です。
【信頼回復による再出発】
長きにわたる閉塞(へいそく)状況を打ち破ってほしい、多くの方々のこの強い思いにより昨年夏、政権交代が実現しました。しかしながらその後、「政治とカネ」の問題、さらに普天間基地移設を巡る混乱により、当初いただいた政権への期待が大きく揺らぎました。私も前内閣の一員として、こうした状況を防げなかった責任を痛感しています。
鳩山由紀夫前首相は、ご自身と民主党の小沢一郎前幹事長に関する「政治とカネ」の問題、そして普天間基地移設問題に対する責任を率直に認め、辞任という形で自らけじめをつけました。
前首相の勇断を受け、政権を引き継ぐ私に課された最大の責務、それは、歴史的な政権交代の原点に立ち返って、この挫折を乗り越え、国民の皆さんの信頼を回復することです。
【「草の根」からの取り組み】
私の政治活動は今をさかのぼること30年余り、参院選に立候補した市川房枝先生の応援から始まりました。市民運動を母体とした選挙活動で私は事務局長を務めました。ボランティアの青年がジープ(四輪駆動車)で全国を横断するキャラバンを組むなど、まさに草の根の選挙を展開しました。
そして当選直後、市川先生は青島幸男さんとともに経団連の土光敏夫会長を訪ね、経団連による企業献金のあっせんを中止する約束を取り付けたのです。この約束はその後、骨抜きになってしまいましたが、まさに今年、日本経団連は企業献金への組織的関与の廃止を決めました。
「1票の力が政治を変える」。当時の強烈な体験が私の政治の原点です。政治は国民の力で変えられる。この信念を胸に、与えられた責任を全うしていきます。
【身一つでの政治参加】
私は山口県宇部市に生まれ、高校生のとき企業の技術者だった父の転勤で東京に移りました。東京ではサラリーマンが大きな借金をしないと家を買えない。父の苦労を垣間見たことが、後に都市部の土地問題に取り組むきっかけとなりました。大学卒業後、特許事務所で働きながら、市民運動に参加しました。
市川先生の選挙を支援した2年後、いわゆるロッキード選挙で初めて国政に挑戦しました。初出馬の際には、論文で「否定論理からは何も生まれない」「あきらめないで参加民主主義をめざす」と題して、参加型の民主主義により国民の感覚、常識を政治に取り戻すことが必要だと訴えました。
3度の落選を経て、1980年に初当選しましたが、議員生活はミニ政党からのスタートでした。民主党の国会議員の仲間にも私と同様、若くして地盤も資金もない身一つで政治の世界に飛び込んだ人たちがたくさんいます。志をもって努力すれば誰でも政治に参加できる。そういう政治をつくろうではありませんか。
【真の国民主権の実現】
私の基本的な政治理念は国民が政治に参加する真の国民主権の実現です。その原点は政治学者である松下圭一先生に学んだ「市民自治の思想」です。従来、我が国では、行政を官僚が仕切る「官僚内閣制」の発想が支配してきました。しかし、我が国の憲法は国民が国会議員を選び、そして国会の指名を受けた首相が内閣を組織すると定めています。
松下先生が説かれるように、本来は「国会内閣制」なのです。政治主導とはより多数の国民に支持された政党が、内閣と一体となって国政を担っていくことを意味します。これにより官僚主導の行政を変革しなければなりません。広く開かれた政党を介して、国民が積極的に参加し、国民の統治による国政を実現する。この目標に向けまい進します。
【新内閣の政策課題】
私は新内閣の政策課題として「戦後行政の大掃除の本格実施」「経済・財政・社会保障の一体的建て直し」「責任感に立脚した外交・安全保障政策」の3つを掲げます。
小沢一郎、市川房枝、土光敏夫、菅直人、鳩山由紀夫、青島幸男、ロッキード、ボランティア、草の根、郵便局、民主党、経済、国家公務員、サラリーマン、政治活動、普天間基地、国会議員、日本銀行
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