新小児科医のつぶやき

2010-06-12 新聞協会調査の素朴な検算

昨日のお話のオマケ編なんですが、ちょっと気になった事がありました。世帯構成の表を再掲しますが、


* 一世代家族 二世代家族 三世代以上 単身 その他 無回答
新聞協会調査 16.3 53.9 23.0 5.3 1.4 0.2
厚労省データ 21.5 37.5 9.1 25.3 6.6 *


これが実数として成立可能かどうかです。新聞協会調査の調査数6000は厚労省データに副って分布し、調査回収数3683は新聞協会調査結果に副う事になります。そうなれば、


分類 厚労省データ 新聞協会調査 回答率
分布 n=6000 分布 n=3683
一世代 21.5% 1290 16.3% 600 46.5%
二世代 37.5% 2250 53.9% 1985 88.2%
三世代 9.1% 546 23.0% 847 155.1%
単身 25.3% 1518 5.3% 195 12.8%
その他 6.6% 396 1.4% 52 13.1%

世帯構成により調査の回答率に差があるのですが、どうしても目を引くのは三世代家族の回答率の異常な高さです。異常と言うより不可能な回答率になっています。新聞協会がそこまでのデータ操作を行なっているとは思えませんから、何らかの理由を考えないといけません。

まずは調査年度の違いです。新聞協会調査は平成21年度データであり、厚労省データは平成18年度データです。3年の差はありますが、たった3年でこれほど差は開かないと考えるのが妥当です。三世代家族の比率は2000年度でも厚労省データでは10.6%ですから、3年間の変化は多くとも1%以内と考えるのが妥当です。

次に考えたいのは昨日しろうず様から頂いたコメントですが、

同居していても生計が別なら世帯は別ですので、同居親族数だけで世帯平均人員数と比較されるのは適当ではないと思います。

なかなか鋭い指摘です。新聞協会と厚労省データでは三世代家族の定義が異なっている可能性はあります。厚労省データの三世代家族の定義は、

三世代世帯とは、世帯主を中心とした直系三世代以上の世帯をいう。

同居していても世帯主が異なれば三世代家族にならないと考えられます。つまりサザエさん型の家族構成であれば、外から見れば三世代家族ですが、厚労省の定義では、

    波平世帯・・・・・波平、舟、カツオ、ワカメ
    フグ田世帯・・・マスオ、サザエ、タラ

この2つの二世代家族がある事になります。これが新聞協会調査では同じ定義を用いず、単純に同じ家に同居していると定義している可能性です。世の中にサザエさん型家族がどれほどいるかなんて判りませんが、どう考えても統計を左右するほどの数とは思いにくいところがあります。

仮にサザエさん型の家族が多いとすればどうなるかですが、厚労省データのうち、二世代家族が合体して三世代家族としてカウントされる事になります。三世代家族が成立するには孫まで存在する必要がありますから、一世代家族の合併では三世代は成立しにくくなります。あえて成立するとすれば、三世代がすべて世帯主であれば可能ですが、これはさすがに統計上の誤差の範囲としても良いかと考えます。

新聞協会調査の三世代家族が単純同居であるならば、データ上で大きく動くのは一世代(祖父母所帯)と二世代(子ないし娘所帯)になるはずです。新聞協会調査では一世代は確かに減っていますが、二世代は減るどころかかなり増えています。二世代の比率が大幅に増えながら、さらに三世代がさらに増えるという調査結果が出ています。

これが成立するには・・・難しいですね。三世代家族の増加数は301家族です。三世代家族の回答率が100%としても、サザエさん型家族が301家族存在する必要があります。二世代家族が100%の回答率であったとしても、新聞協会調査と厚労省データの二世代家族の差は265家族しかありませんから、少々数が足りません。


昨日からこの算数を考えているのですが、どこかにピットホールはあるのでしょうか。結局のところ解答と言うか、合理的に説明できる方法が見つからなかったのですが、判られた方は是非コメント下さい。

卵の名無し卵の名無し 2010/06/12 09:08 アンケートの答え「新聞を読む」の内容の分析がないまま「新聞が重要なメディアである」とは誰も「確認」できないということではないでしょうか。
つまり私のように訃報と囲碁将棋スポーツ欄以外は読まないで積読購読者でもアンケートされれば読むと答えます。ぜんぜん生活の基盤に必要じゃない情報しか見ていませんがw
新聞本体じゃなく挟まれてくる地域のスーパーなどの宣伝チラシは大事ですから毎日目を通していますよw
私だけじゃなくうちの家族が全員アンケートに対して「新聞を読む」と回答すると思います。つまり、無効票ですねw

このようにアンケートはナンボでも集計結果の意義を捏造できますからね、科学的にはこのアンケートの結果からは
>同協会は「新聞が日常生活に欠かせない基幹メディアであることが改めて確認された」としている。
は『絶対に』w確認できません。そういう条件設定のできる統計学的調査方法じゃないから「アンケート」w

元ライダー元ライダー 2010/06/12 09:22 厚労省調査は「三世代以上」ではなくて「三世代」ですから

三世代以上サンプル数(新聞協会調査)≒ 三世代(厚労省データ)+ その他(厚労省データ)

という可能性があります。そうすると不可能な回答率ではなくなります。
そうだとしても新聞協会調査の「その他」が具体的にどのような世帯形態を指すのでしょうか。たとえば孫と祖父母だけで構成される世帯のこと?

YosyanYosyan 2010/06/12 09:28 元ライダー様

厚労省の三世代世帯の定義も「三世代世帯とは、世帯主を中心とした直系三世代以上の世帯をいう。」です。もっとも「その他」が厚労省調査では多いですから、この辺のデータの取り方で変わる可能性がありますが、いずれにしても回答者の偏りは相当だと思います。

元ライダー元ライダー 2010/06/12 09:28 誤解無きよう補足しますと、その他(厚労省データ)とは主に四世代、五世代・・・のことではないかと。

元ライダー元ライダー 2010/06/12 09:34 追加コメントが前後したようですね

>厚労省の三世代世帯の定義も「三世代世帯とは、世帯主を中心とした直系三世代以上の世帯をいう。」

そうですか。では厚労省データでは6.6%をも占める「その他」が具体的にどのような世帯形態なのか想像困難です。「孫と祖父母だけ」のような世帯で6.6%も占めるでしょうか。

SeisanSeisan 2010/06/12 09:36 えーっと、アンケートのとり方にもポイントがあるのではないかと。

アンケートの回答が一世帯あたり1通、という場合、サザエさん型家族では三世代同居で2通の回答がありますよね。逆に二世代でも孫なし(親および結婚して子供なしの子供夫婦の二世帯)なら2通、未婚の子供がいる場合の二世代なら1通になります。

更には、一人1通、というような回答パターンなら、もっとえげつなく、単身者は1通だが、一世代なら2通、2世代なら2-4通、3世代ならもっと回答アンケート数が増えてしまいます。

アンケートが「どれだけの人が新聞を読んでいるか」である以上、夫婦でも夫は読まず、妻だけが読んでいる場合は50%になったりするので、回答対象は個人である可能性があり、そうなると、世帯を抽出する、といいつつ、回答は個人単位で行われているのであれば、二世代、三世代同居の世帯の方が明らかに回答数が高くなる(一世帯でも6人同居ならアンケートは6通になる)ので、このような分布になるのではないでしょうか。

そして、たとえば6人三世代同居の1世帯で一つの新聞を取って読んでいるのなら、販売数は1だけれど、「読んでいる」という回答は6になりますから、この異常に高い「新聞を読んでいる」人の数は増えることになります。

あくまで「新聞を読んでいる人」の数であり、「新聞を購買している人」の数ではありませんからね。読んでいる人が全員新聞を購買している人ではありません。
もちろん、目的が「広告を目にする可能性」ですから、アンケートとしてはそれでいいのかもしれませんが、単身者のほうが新聞を購買する頻度は少ないが、世帯当たりの回答数としては少ないので、このような結果になる、というのは確信犯的なやり方ではないかと思います。

YosyanYosyan 2010/06/12 09:42 元ライダー様

わかる範囲の厚労省の定義ですが、

(1)単独世帯とは、世帯員が一人だけの世帯をいう。
(2)夫婦のみの世帯とは、世帯主とその配偶者のみで構成する世帯をいう。
(3)夫婦と未婚の子のみの世帯とは、夫婦と未婚の子のみで構成する世帯をいう。
(4)ひとり親と未婚の子のみの世帯とは、父親または母親と未婚の子のみで構成する世帯をいう。
(5)三世代世帯とは、世帯主を中心とした直系三世代以上の世帯をいう。
(6)その他の世帯とは、上記(1)〜(5)以外の世帯をいう。

もう一つ別分類で

 ・高齢者世帯とは、65歳以上の者のみで構成するか、またはこれに18歳未満の未婚の者が加わった世帯をいう。

こういうのもあり、高齢者世帯は17.8%あるとなっています。「孫と祖父母だけ」は「その他」に含まれると考えますが、他は・・・事実婚で籍を入れていないなんてのはどうでしょうか。別居中なんてのも場合によっては分類がややこしそうですね。

SeisanSeisan 2010/06/12 09:58 天気が良くて、診療が暇なので(^_^;)、簡単に計算してみました。
アンケートを世帯を構成する成人ということを前提に、単身世帯の回答数が1通、1世代世帯の回答数が2通、2世代世帯の回答数が3通、3世代世帯の回答数が4通、その他世帯の回答数が2通と平均して仮定して、回答数から世帯分布を計算すると…

単身世帯:11%
1世代世帯:18.7%
2世代世帯:48.8%
3世代世帯:15.8%
その他世帯:5.7%

とだいぶ新聞協会発表のデータに近付きますね。
更には、単身世帯やその他世帯のアンケート回答率が低く、2世代、3世代世帯の回答率が高い傾向を示せば、十分に新聞協会発表データになりそうです。

SeisanSeisan 2010/06/12 10:13 アンケートを厚労省分布に則った個人に無作為抽出して送り、「世帯の成人全員が個別に回答してください」とすれば、このような結果は簡単に得られそうです。

元ライダー元ライダー 2010/06/12 10:13 Yosyan先生

リンク先に定義が示されていましたね。よく確認しませんで申しわけありません。
厚労省データにも新聞協会調査にも謎がありますね。役所の常として厚労省データは定義に従って厳密に分類しているのでしょうが、新聞協会調査だと近い類型に当てはめている可能性があります。それが「その他」の差でしょうね。

サンプルの偏りはこのような調査には付き物なので、これによる結論の偏向は「嘲笑っておわり」でも良いのですが、不可能な数字が出てくると捏造やデータ操作(同じですかね)の疑いが出てきますから、徹底的に突き止めたいところです。

はるはる 2010/06/12 10:18 上記の厚労省の定義だと、親と「子供夫婦(子無し)」とが同居しているのが「その他」に入りそうな。

やはりやはり 2010/06/12 15:53 押紙のデータなぞ見るだけ・分析するだけ無駄なのでヤメ、とならないのが不思議です!

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