宮崎県の口蹄(てい)疫被害がさらに拡大している。殺処分や消毒作業などによる封じ込め策をあざ笑うかの様に県内南北に飛び火した。感染ルートは何なのか。人説や車説から野鳥、ネズミ、シカ、ハエ……と様々な説が飛び交っている。
「これだけ防疫態勢をとっているのになぜ。感染経路が分からない」。初めて感染が疑われる牛が見つかった同県日向市の黒木健二市長は、2010年6月10日の記者会見でこう語った。同市は、感染多発地帯にある都農町と接しており、すぐ北部にある。
その前日の9日には、都農町や川南町など県東部の多発エリアから約40キロも南西に離れた都城市で感染の疑いが強い家畜が見つかっていた。殺処分や車両などの消毒による対策が進む中、4日には県西部のえびの市で家畜の移動制限が解除になり、事態は終息に向かうのでは、との期待感が出始めた矢先だった。都城市は全国屈指の畜産のまちとして知られる。県東部と都城市、えびの市は、それぞれ境を接していない。
感染拡大防止策として、一般車両も含めた消毒作業などが連日全県規模で行われていた。靴底を消毒するマットの設置も広がっている。にもかかわらずなぜ拡大を防げなかったのか。感染ルートを断とうにも、そのルートがはっきりしていないのだ。
都城市での発生について、日経新聞は11日の朝刊(東京最終版)で、「もっとも可能性が高いのは川南町周辺から人や物、車などにウイルスがくっついて広がったケース」と指摘した。
一方、11日朝に放送された情報番組「スッキリ!!」(日本テレビ系)では、東京農工大の白井淳資教授(家畜伝染病学)が、野鳥犯人説を唱えた。車などの消毒作業は徹底されているため「そのルートは考えにくい」と話した。野鳥が家畜の落ちたエサをついばむ際にウイルスが付着し、それを別の畜舎へ運ぶのではないか、という訳だ。
確かに、都城市の農場のケースでは、場所は山中で途中は一本道だ。関係者以外は人があまり通るようなところではないという。一般の人より意識の高い畜産関係者の消毒が徹底していたとすると、車説には疑問が出てきて野鳥説の可能性も出てくる。
口蹄疫対策にあたっているある行政関係者によると、感染ルートとして疑われるのは車や野鳥だけではない。ハエやネズミの可能性も指摘されていると明かす。地元の畜産農家の中には、畜舎の場所によっては野生生物のシカが関係しているのではないか、と不安をもらす人もいる。
(続く)
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