安倍晋三元首相の政務秘書官を務めた井上義行氏が、17日発売の「新潮45」に特別手記を寄せ、北朝鮮と極秘裏に進めた拉致交渉の驚くべき内幕を明かした。注目は金正日総書記に直結するとされる交渉人Zと、幻の「拉致被害者生存者リスト」。民主党政権になり、拉致問題解決の機運が停滞する中、被害者救出に向けて一石を投じた形だ。
手記によると、井上氏は2003年と04年の2度、密命を帯びて北朝鮮の首都・平壌を訪問したというが、注目すべきは北朝鮮の交渉人Z(年齢は45歳から55歳)の存在。日朝交渉の表舞台に登場する鄭泰和・日朝交渉担当大使が、Zの秘書に最敬礼する立場にあるという。
井上氏は03年12月、平壌で初対面したが、「この国の至る所に掲げられているあの建国の『首領』金日成の若い頃にそっくりだったのだ…」と記している。
井上氏は、国交正常化交渉に入りたがっていたZに対し、「(拉致被害者)生存者リストを出してくれたら交渉に応じる」というと、Zは「わかった。私を信じてくれ」と答えたという。
また、Zが雑談でもらした日本の政治家評も興味深い。民主党の小沢一郎幹事長について、Zは「彼は我が国を裏切った。信用できない」と切り捨て、評価する人物として、河野洋平元外相や野中広務元官房長官らとともに、鳩山由紀夫首相を挙げたという。