建設業や小売業などの自営業者らがつくる国民健康保険組合(国保組合)に対して、公表されている補助金制度とは別枠で、総額229億円の補助金が出ていた問題で、長妻昭厚生労働相は6日、2011年度予算の概算要求に向けて、この補助金の内容を調べ、不要と判断される分については減額・廃止することを決めた。
朝日新聞の報道を受け、厚生労働省は同日、個別の国保組合に対する国庫補助率を初めて公表した。これまで補助率について、「医療機関に払う医療費の55%が上限」と説明してきたが、実際は、このほかに「財政力以外の特別の事情」(厚労省)を考慮した「特別調整補助金」が出ていた。165組合中19組合が上限を超え、最高は京都府酒販の70.6%。
07年度の国民健康保険事業年報に基づく試算では、医療機関に払う医療費に対する補助率で見ると、30組合が上限を超えていた。厚労省が今回公表したデータは、直接の医療費支払いではない高額療養費共同事業分も含んでいる。
この日の会見で厚労省は、特別調整補助金について「1970年に政治運動により建設国保の設立が認められた時に増額され、その時にある一定の考え方に基づき各組合に配分した。その後は前年実績を重視して支払い続けてきたが、そもそもの配分の根拠は分からない」と説明。「特別調整補助金は疑念を招きかねず、11年度概算要求に向け精査・検討する」とした。
一方で、すでに閣議決定された10年度予算案分については「いきなり変更すると国保組合の保険料が跳ね上がるなど影響が大きい」とし、見直しは見送るとした。
法律で加入者は原則、医療費の3割(現役世代)を負担すると定められているが、全国建設労働組合総連合(全建総連)系の11国保組合で入院時の自己負担を実質無料としている。厚労省によると、このほかに奈良県歯科医師国保など4歯科医師国保、2医師国保と1建設国保でも実質無料としていた。
厚労省は「自己負担無料化についても国民の疑念を招く可能性があり、各国保組合に是正するよう指導する」としている。(太田啓之)