建設業や小売業などの自営業者らがつくる国民健康保険組合(国保組合)に対して、公表されている補助金制度とは別枠で、2008年度で総額229億円が国庫補助されていることが分かった。国庫補助は財政が厳しい医療保険の支援が目的だが、黒字続きで多額の剰余金を保有する国保組合にも「隠れ補助金」が出ていた。この補助金について厚生労働省幹部は「与野党の政治家の働きかけによるもの」と話している。
厚労省は従来、国保組合への補助金について、「医療機関に払う医療費の55%が上限」と審議会で説明してきた。定率の32%に加え、財政的に苦しい国保組合には加算しており、補助額は08年度で2787億円。
ところが、このほかに「財政力以外の特別の事情」(厚労省)を主に考慮した「特別調整補助金」が出ており、165組合中30組合は上限の55%を超える。この補助金支出の法的義務はなく、国の裁量だ。隠れ補助金を含めた補助率が約8割の組合もある。
07年度の国民健康保険事業年報に基づく試算では、特別調整補助金も加えた補助率が最も高いのは京都府酒販国保組合の79.2%。同組合への補助3億6800万円のうち3割近い1億100万円が特別調整補助金。同組合は積立金名目で4億8千万円の剰余金を保有し、財政は豊かだ。
また、08年度の特別調整補助金の約半分の111億円は、建設関連の業者らでつくる全国建設労働組合総連合(全建総連)系の国保組合に出ている。長崎県建設事業組合への補助率は60.3%。同組合は積立金などの名目で剰余金5億7千万円を保有する。国民健康保険法により加入者は医療費の3割(現役世代)を自己負担するが、同組合では入院、通院とも本人負担は1カ月3千円以内だ。