a-friends tv asahi Mail Club http://www.tv-asahi.co.jp/a-friends/ □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ 2010.5.26. ● 報道ブーメラン 第531号 ●  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ http://www.tv-asahi.co.jp/ □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ 〓 目次 〓 ■01■「『風評被害』への違和感」 報道ステーションコメンテーター/一色 清 ■02■記者コラム 「厳重警備と一般中国人の思いの乖離〜金正日総書記訪中から〜」 中国総局記者/持留 英樹 ■03■「テレビ朝日アメリカ」サイト更新情報 ■04■編集後記 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■01■「『風評被害』への違和感」 報道ステーションコメンテーター/一色 清 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 宮崎の口蹄疫騒動は、東京にいると、5月の中旬以降、突然大騒ぎ になったような感じを受けます。4月20日の発生確認以降、九州では それなりに報道されていたようですが、東京では、新聞もテレビも しばらくはあまり報道しませんでした。 理由の一つは、2000年にも宮崎と北海道で口蹄疫が発生したので すが、計740頭の牛の殺処分という比較的小さな被害ですんだこと です。人間にうつる病気ではありませんし、今回もきっと、似たような 被害だろうと、様子見に入ったところがあると思います。これは、新聞 作りをした経験からいって、理解できるところがあります。 ただ、もう一つの理由も耳にします。風評被害を恐れて慎重になった というものです。この理由は、首相官邸も、発生確認から2週間、赤 松農水相にまかせて動かなかったことの説明に使っているようです。 私は、こちらには違和感があります。風評被害と事実を伝えることを、 混同しているように思うからです。 風評というのは、広辞苑には「世間の評判、うわさ、とりざた、風説」 とあります。つまり根拠のない評判、しっかりした事実に基づかない 評判のことをいいます。風評がなぜ生まれるのかというと、それは しっかりした事実が伝えられないからです。 例えば、「トヨタのプリウスのブレーキに問題があってリコールする」と いうニュースを、「大手自動車メーカーのハイブリッド車のブレーキに 問題があってリコールする」と伝えて、ホンダのインサイトが売れなく なれば、それがまさに風評被害です。プリウスが売れなくなるのは、 風評被害ではなく、その事実そのものによる被害です。 食品の場合、健康に直結するものですし、選択肢も多いものですから、 自動車などよりも風評被害が起こりやすいとはいえます。ですから、 今回の問題でも、しっかりした事実を伝えた上で、「口蹄疫にかかっ た牛や豚の肉は市場には出ませんし、仮に食べたとしてもまったく 害はありません」ということを折に触れて付け加えることは必要かと 思います。 ただ、それでも牛肉や豚肉を買わない人がいれば、それは消費者の 自主的な判断ですので、誰が責任を負うものでもないと思います。 私は、しっかりした事実を伝えれば、基本的に風評被害を恐れる必要 はないと思いますが、付け加えれば、その扱い方がそのニュース価 値とあまりにもかけ離れている場合は、批判はあり得ると思います。 ただ、それはまさにプロとしてのニュース判断が問われるもので、 ニュースを小さくしようという方向にいつも働くのでは、プロの仕事では ないでしょう。 とはいえ、新聞やテレビが、伝える立場として、事実と風評被害との 狭間で悩むこと自体は分かります。その影響力のつかみどころのな さを感じることが多いからです。私がデスクとして目の前のニュースを 判断する立場なら、やはり悩むかもしれません。 しかし、政府までもが「風評被害をおそれて動かなかった」というのは、 解せません。風評被害などというのは、起こるかどうかも分からない 二次的三次的な被害であって、やるべきことは目の前に起こっている 病気の拡大を防ぐことです。そのために必要であれば、事実を積極的 に出し、何としても制圧するという気迫を見せるべきです。 どうも、「風評被害」という言葉が、責任逃れの言い訳に使われている ような気がして仕方ありません。 【一色清さんプロフィール】 http://www.tv-asahi.co.jp/hst/cast/03.html ┌──────────────────────────┐ ★☆ 次回は、浪川攻さんコラムを掲載予定です ☆★ └──────────────────────────┘ ──────────────────────────────── 皆様からのご意見・ご感想をお待ちしています。投稿にあたって、 件名は「報道ブーメランご意見」「氏名(ペンネーム可)/性別/ 年齢/職業/掲載の可否」を明記のうえ、約300字程度にまとめて 下記アドレスよりお願いします。 ・読者投稿はこちら>>> mailto:mm-houdou@tv-asahi.co.jp ──────────────────────────────── ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■02■記者コラム 「厳重警備と一般中国人の思いの乖離〜金正日総書記訪中から〜」 中国総局記者/持留 英樹 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2010年5月3日未明、私は中国・丹東の中朝国境の橋が見えるホテ ルの一室にいた。いや、身を潜めていたと言ったほうがいいかもしれ ない。ホテルの目の前は公安警察や武装警察だらけ。中から橋を 撮影しているのに気づけば、すぐに部屋に踏み込んでくるだろう。 これから北朝鮮の金正日総書記を乗せた特別列車が橋を通過して 中国に入る、はずだから…。 空も明るくなってきた北京時間午前5時15分。現場の状況を北京にい る中国総局長に電話で説明していると、突然列車が橋を通過し始め た。 「来た!ちょっ、ちょっと、電話切りますね」。私は夢中で撮影し始めた。 濃い緑色に黄色い線が一本入った列車が、象が歩くほどのスピード でのろのろと動く。窓ガラスは真っ暗なスモークが張られ、中の様子 を伺い知ることはできない。思わず熱が入り身を乗り出してしまう。 下を見ると、道路に並んだ武装警察と目があった気がした。思わず身 をかがめ、また慎重に撮影を続ける。 15両以上はある列車なので、とにかく通過に時間がかかる。撮影を 始めてもう5分が経過しただろうか、それとも焦っているので長い時間 に感じるのか、そんなことを考えていると突然部屋のドアが激しくノッ クされた。「やばい、バレた…」。 「落ち着け」と自分に言い聞かせながら、列車が写っているテープを 取り出して、ベッドの下に隠す。そして、深夜に撮影していたテープを 代わりにカメラに入れた。あきらめるかもしれないから、とりあえずドア のノックは無視して寝たふりでもするか。しかし、淡い期待もむなしく、 ホテル従業員に鍵を開けさせた武装警察3人が部屋になだれ込んで 来た。 「おまえ、今撮影していただろう。テープを出せ」 「今は何も撮影していない。これがテープだ」 「(映像を見て)これじゃない。お前が撮っていたのは明るくなってから の映像だ。俺は見たんだ。明るくなってからのテープが出てこないと、 俺達は帰らないからな」 武警の態度は、どんどん高圧的になり、勝手に部屋の捜索をはじめ た。あらら、ベッドも動かし始めて…、隠したテープを見つけられた。 テープに特別列車が写っているのを確認すると、「これは違反だから、 テープの撮影部分を削除しろ」という。 「観光客だって毎日この国境を撮影しているではないか」と反論する が、「橋は警備の対象だからダメだ」と言われた。結局、映像を消去 することは拒み、テープは没収された。「中朝友好の取材に来たのに、 何で邪魔するんだ。変じゃないか」というのが精一杯だった。 金正日氏が北朝鮮の最高指導者になってから今回で5度目の訪中 だが、いずれも非公式訪問だ。訪中の事実は、金総書記が帰国して から中朝共にはじめて報道する。中国側は北朝鮮の強い要望に基づ いてこのような異例の対応をとり続けているようだ。 建国60周年でも、オバマ大統領訪中でも中国の警備の厳しさにはう んざりさせられてきたが、ここまで警備が厳しい取材は今回がはじめ てだった。私だけでなく、他社の記者も何人も拘束されたと聞く。 しかし、うんざりしたのは日本人記者だけではなく、金総書記が訪問 した都市の中国人もそうだったようだ。金総書記が最初に向かった大 連市。街のど真ん中のフラマホテルに総書記が宿泊したため、交通 規制で街は渋滞で大混乱となった。翌日、インターネットで大連市民 のBBSは、金正日総書記とそれを受け入れる中国政府への不満の 声で溢れた。 「なんで俺達の生活を犠牲にしなきゃいけないんだ」 「独裁者にここまでしてやる必要はない」 「北朝鮮に援助するのも、結局は私達の税金だ」。等々。 兄弟関係にある中国と北朝鮮だが、いま中国人で北朝鮮に対して特 別な思い入れがあるのは、朝鮮戦争を知る世代までのようだ。それ 以降の世代は北朝鮮に対して、「世界の国々の中で異質な封建的 主義的な国」という印象を持っているようで、80年代以降に生まれた 若い世代にいたっては「時代遅れな国」とか「中国に援助ばかり求め る国」というマイナスイメージを強く持っている。 そこに、兄弟に対する友情のようなものは全く感じられない。むしろ、 日本人やアメリカ人の若者が北朝鮮に対して持っているイメージと近 いようだ。「義兄弟の国の指導者が来るのだから警備で多少生活が 不便になるのは仕方がない」。なーんて思う中国人もいるのではない かと想像していたが、大連市民のとても素直な意見をインターネット でみて、なんだか少しほっとした。 ところで、こういった意見は、一部の若い中国人ネチズンがネットの掲 示板に書き込んでいるのだと察するが、結構中国人の大半の意見を 代弁しているのではないかと思う。 地政学的に東アジアの安定を考えると中国にとって北朝鮮は重要な 国で、他の国に取り込まれたり、予期せぬところで暴発されたりして もらっては困る。だからプロトコル上は最大限のおもてなしをするわけ だが、あまりにも思い通りにならない相手に対し、「なんでここまでし てやらなきゃいけないんだ」というホンネが、どこかにあるのではない だろうか。 あるマスコミの記者は某所で金正日総書記を撮影しようとして私と同 じように拘束された。そして取り調べの最中、警察はその記者にしみ じみとこう言ったという。「あんた、あんな老いぼれを撮影して何が楽 しいんだ」。 これは裏返して考えると、彼らも「自分達がなんでここまでして守って やる必要があるんだ。上からの指示がなければこんなことやりたくな い」と考えていたと想像しても変ではないと思う。この一言、何も中国 がもろ手をあげて金正日総書記を歓迎しているわけではないことを 象徴していると私は考える。 韓国政府は哨戒艦沈没の調査結果について、北朝鮮の魚雷が原因 だと断定した。今後韓国はアメリカや日本と連携して、国連に北朝鮮 への制裁強化を求めていくと見られる。 それに対して、中国がどのような態度をとるのか非常に興味深い。 北朝鮮に配慮した、慎重な態度をとることが想像できるが、それが 一般の中国国民のホンネと、どんどん乖離したものになっていけば、 それはそれで中国の内政を危うくしていくのではないかと、金総書記 訪中取材を終えたいま考えている。(了) ・ご意見・ご感想はこちら>> mailto:houdou@tv-asahi.co.jp ・ANNニュースへの情報提供はこちら>> http://www.tv-asahi.co.jp/ann/info/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■03■「テレビ朝日アメリカ」サイト更新情報 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ─────────────────────────────────── 【アメリカンメディア トピックス】 ─────────────────────────────────── ◇米アップフロント売上げを楽観視 ◇大学バスケ放送はネットワークとケーブル局共同で ◇アバター、DVD/BD販売数が最高記録 ◇米CNNとCBSニュースが提携か ・詳しくはこちら>> http://www.tv-asahi.net/news/media.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■04■編集後記 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ほとんどのタイの人たちは、気づいてしまった。 持つもの、持たざるもの。冨が、権力が、いかに不公平に分配されて いるか。それを「階級闘争」だと位置づけた赤シャツ・タクシン派。 北部や東北部の田舎からデモに来た人たちは、 首都バンコクの繁栄ぶりを目の当たりにして、さもありなんと思った。 そして、その背景には王室を中心とする旧来権力が存在すると信じた。 過去、混乱のたびに<調停役>として登場した国王は、最後まで 国民の前に姿を見せなかった。高齢で体調の問題もあるだろうが、 収拾に乗り出してきて収まらなかった場合、 取り返しがつかなくなると側近たちが考えたと指摘する人もいる。 つまりは立憲君主制の崩壊につながりかねないということだ。 一部の欧米メディアは「国王の影響力の衰退」 「立憲君主制の曲がり角」と書いた。 最高で禁固15年の「不敬罪」があるタイだが、 いくら外国メディアとはいえ、これまでそんな論調はありえなかった。 ただ今回ばかりは、王室に触れなければ本質は見えない。 焦点がボケるだけだ。 騒乱の最中、専門家の一人から「プラニー・プラノーム」という言葉を 聞いた。タイ語で「和解」とか、「妥協」という意味がある。 時の権力に反対した人たちも、それがクーデターという手段であっても、 いつの間に許され、復権する。そうすることで憎しみを和らげ、 ぎりぎりで均衡を保ってきた。それがタイ人の英知だった…と。 強行突入から一夜明けたバンコクの中心部。 一部が焼け落ちたデパートは、まだくすぶり、消防隊の放水が 続いていた。取り囲むように設置されたテントには、食べ物や水、 ビニールシートなどが散乱し、すえたにおいが漂いはじめていた。 近くの寺院やビルからは、潜んでいた赤シャツの“落人(おちうど)”や、 自動小銃や爆弾など大量の武器も見つかった。 日本人にお馴染みのタニヤ通りは、軍の装甲車の駐車場になって いた。“戦場”となったシーロムの交差点は、焼けたタイヤのあとで 真っ黒になっていた。見渡すと、ビルの窓ガラスや看板に、 銃弾のあとが残っていた。きのうまで繰り広げられていた戦闘が、 ウソのように静かだった。 デモを止め、赤シャツを脱いだ人たちは、古里に戻った。 多くの「気づいてしまった人たち」は一連の騒乱を、 地元でどう語るのか。敬愛を集める国王も、いずれは交代時期を 迎える。どう折り合うのか。不敬罪の乱発では、解決にはならない。 もはや旧来の「タイ式民主主義」は通用しないと考えるべきだ。 本当の正念場はこれからになる。 (編集長 中村 直樹) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●テレビ朝日のメールマガジン 報道ブーメラン 第531号 <発行> 株式会社 テレビ朝日 http://www.tv-asahi.co.jp <委託> 株式会社 テレビ朝日メディアプレックス http://www.mediaplex.co.jp/ <報道ブーメラン編集人> 中村 直樹 <a-friends統括編集人> 宮原 香織 ◇メールマガジンの配信停止/配信追加 http://www.tv-asahi.co.jp/a-friends/contents/support/how_to_agg.php 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