宮崎県での家畜伝染病、口蹄疫(こうていえき)の問題で、10日に感染の疑いが出た3カ所の農場はいずれも、それまでの発生農場から半径10〜20キロの地域にある。政府は防疫対策として当初、この地域で飼われている牛や豚は早期に食肉処理してすべて出荷し、「家畜ゼロ」にする構想だった。だが構想が宮崎県の現実と合わず、地域を「家畜ゼロ」にできないまま新たな感染の舞台になる結果となってしまった。
「外側を空にするというのは今、なかなか難航している」。山田正彦農林水産相は11日の記者会見で、構想の遅れを率直に認めた。
前任の赤松広隆農水相が防疫構想を発表したのは5月19日。発生農場から半径10キロ圏内の「移動制限区域」では感染農場にいるため殺処分とする家畜以外に、感染していない健康な家畜についてもワクチンを打った上で殺処分する▽その外側の10〜20キロ圏の「搬出制限区域」では健康な家畜を早く食肉処理してすべて出荷し、家畜のいない「空白地帯」とする――という内容だった。早期出荷の対象は牛が約1万6千頭、豚が約1万5千頭の計3万1千頭と見積もられた。
だがこれまでに処理されたのは牛90頭、豚約3千頭だけ。なぜ全く進まないのか。
利用が想定された食肉加工場は2カ所。うち主力となる都農町の加工場は10キロ圏内に入っており、稼働が止まっていた。農水省は特例として稼働再開をすすめたが、食肉処理後に出る皮や骨などは約70キロ離れた都城市の処理場に運ぶ必要があり、都城市の農家の反対が強く、構想は頓挫しかけた。結局、宮崎市内の廃棄物処理施設に運ぶこととし、加工場は5月31日に動き出した。