ところが実際に動いたのは3日間だけだった。感染が発生していない10〜20キロ圏内の畜産農家は、感染の危険性が高い10キロ圏内の加工場へ家畜を車で運び込むのを嫌がった。出荷に最適の年齢よりも早く出荷することについて、農水省は差額の穴埋めを約束したが、具体的金額が示されなかったことも農家の不安をあおった。加工場側も、風評被害などで食肉の売値が通常より下がることを恐れた。
食肉処理が進まない間に感染地域はじわじわと広がり、6月初旬時点で早期出荷の対象は、牛と豚で計約4万7千頭に膨らんだ。農水省は、都農町の加工場に処理した食肉を冷凍保管してもらい、倉庫代などを補助すると決め、6月9日に山田農水相が加工場側に伝えた。
しかし農家側の不安が解消されたとはいえず、出荷がなお進まないまま、9日には都城市に飛び火し、皮や骨の処理場が10キロ圏内に入ってしまった。翌10日には日向、宮崎、西都の3市でも感染が拡大。早期出荷対象の10〜20キロ圏は大幅に広がったが、農水省は11日時点で積算さえできていない。農水省は「少しずつでも出荷を進め、徐々に密度を薄めたい」としている。(大谷聡)