・ぼくは、ふだんはあんまり世代語りをしないのですが、
　このところ続けて、
　近い年齢の人と話をすることがありまして、
　そこで感じた共通の「違和感」について考えてました。
　
　まず、創刊記念日の対談での矢沢永吉さんです。
　昔は、にらんで噛みつく
　というような表情をしていた人ですが、
　いまはゆったりと考えたり、
　待つこともじょうずになったり、というふうに見えます。
　でも、おだやかな表情はしているけれど、
　断崖をよじのぼる決意が感じられるんですよ。
　垂直に切り立つ岩肌に、両手両足の爪を立てている。
　顔は笑っているけれど、人には見えない指先から、
　血が出てますよという気がしました。
　つまり、「目を覚ましてる」んです。
　
　昨日は前川清さんでした。
　この人は、とても穏やかに見えます。
　そして、すこしでも話をすると繊細な人だとわかります。
　のんびりしていると言い切ってもいいかもしれません。
　ご本人も、口を開けばやる気のなさそうなことを言う。
　だけど、つまり「目を覚ましてる」のはわかるんです。
　
　矢沢さんや前川さんというような、
　みんなの知ってる人たちだけでなく、
　ぼくの知ってる「いい年をしたおやじ」たちは、
　のんびりしたことを言いつつ、
　眠そうな薄目を開けつつ、実は「目をさましてる」。
　そんなことに気づいちゃったんですよね。
　そりゃ、お恥ずかしいけど、ぼく自身も勘定のうちです。
　なんていうか、警報が鳴ったら、
　どこにそんな瞬発力があったのだという速度で、
　飛び出せる用意はあるんだなぁ、と知っちゃった。
　‥‥貧乏性だなぁと笑われるかもしれないけどね。

　どうやら、どうも、これくらいの年のおやじたち、
　あんがいお役に立つことも多そうです。
　もう少しの間、こきつかってもいいのかもしれないです。
　いやがりますけどね、まずは。

今日も「ほぼ日」に来てくれて、ありがとうございます。
ベイちゃんの結婚式の日だ。いやでも祝ってやるうーっ。