県の畜産試験場で豚への感染が発覚して以降、口蹄疫は爆発的に拡大し、今に至っている。ウイルスの流入と並ぶター二ングポイントのひとつと考えられる。口蹄疫のウイルスは、靴や衣服、車のタイヤなどについて拡散する恐れがあるという。つまり、人が知らずに運び屋になってしまうケースである。
だからこそ、農場に出入りする機会の多い人は、徹底した消毒をしなければならないはずだ。それではなぜ、県の施設にウイルスが入り込んだのだろうか。職員の緊張感に問題があったと考えざるを得ない。
環境への配慮も必要で
埋却地の確保にも手間取る
「あの連中も自分の牛や豚だったら、必死になってやったと思うが、彼らは一日が過ごせればいいんだ。もう覚悟を決めたので、怒りは収まった。今は早く無菌状態にして、やり直したい」
こう語るのは、川南町の畜産業Bさん。十数頭の牛を飼うBさんは、自宅からわずか100メートル先のCさん宅で感染牛が判明し、半ばパニック状態に。自宅前の道路は交通量が多く、しかも、消毒ポイントを通過せずに脇道から出入りする車が少なくなかった。
堪りかねて役場に乗り込んだが、とても手が回らないと動かない。それならばと自分で三角柱を準備し、道の要所要所に設置したが、車の往来は一向に減らない。危機感を強めたBさんはトラクターを道に横付けし、遮断する強硬手段に出た。
近所の農場から新たな感染が見つかり、さらにCさん宅の殺処分が進まずにいたからだ。Cさんが埋却予定地を掘ったところ、水が湧き、作業は中断。感染牛はそのままの状態となった。結局、Bさんの孤軍奮闘も全頭処分の決定で虚しい幕引きとなった。