相川俊英の地方自治“腰砕け”通信記
【第4回】 2010年6月9日
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相川俊英

危機感欠如がもたらした口蹄疫の爆発的拡大
行政は後手に回った防疫活動の虚しさを知れ

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 宮崎県は6月6日、家畜の伝染病・口蹄疫の感染を防ぐために特例で避難させていたエース級種牛5頭について、抗体検査の結果が陰性だったと発表した。

 これにより5頭は殺処分を免れ、宮崎牛ブランドを支える種牛の全滅という最悪の事態は回避された。県管理の種牛55頭のうち50頭は既に殺処分されており、この5頭は県にとっては最後の砦であった。東国原英夫知事はこんな談話を寄せた。

 「種雄牛は農家の皆様のご協力のもと作り上げてきた貴重な財産であり、5頭を守れる可能性が高まったことに安堵するとともに、5頭以外を失うことになってしまった事態を重く受け止めております」

 宮崎県で発生した口蹄疫が猛威を振い続けている。4月20日に感染の牛が公式に確認されて以降、拡大の一途をたどっている。発生例が相次ぎ、感染は未だに終息してない。

 これまでに(6月7日時点)276ヵ所で発生し、殺処分対象となった家畜は約18万頭に達した。牛がこのうちの約2割を占め、約8割が豚だ。さらに発生地から半径10キロ以内の未感染の家畜も、予防的に殺処分されることになり、その数は約9万3000頭近くにのぼる。まさに未曾有の事態である。なぜ、これほど拡大してしまったのか。

牛10頭にワクチンを接種し
殺処分の日を待つ

 「町も県も国も危機感が余りに希薄だった。そのうえ、連携もできていなかった」

 怒りを抑えながら語るのは、宮崎県川南町で畜産業を営むAさん。消毒剤の匂い漂う自宅前で取材に応じてくれた。

 冷静なAさんの語り口からやるせない思いが溢れてきた。それもそのはずである。飼育している牛10頭にワクチン接種し、殺処分の日を待つ身という。防疫作業を続け、わが子同様の牛たちの感染を懸命に防いできたが、努力は報われなかった。国は5月19日、口蹄疫ウイルスを根絶するために、地域内の未感染の家畜も殺処分することを決定した。健康なAさんの牛たちも殺処分を免れることはできなかった。

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相川俊英

1956年群馬県生まれ。放送記者を経て、1992年にフリージャーナリストに。地方自治体の取材で全国を歩き回る。97年から「週刊ダイヤモンド」委嘱記者となり、99年からテレビの報道番組「サンデープロジェクト」の特集担当レポーター。主な著書に「長野オリンピック騒動記」など。


相川俊英の地方自治“腰砕け”通信記

国政の混乱が極まるなか、事態打開の切り札として期待される「地方分権」。だが、肝心の地方自治の最前線は、ボイコット市長や勘違い知事の暴走、貴族化する議員など、お寒いエピソードのオンパレードだ。これでは地方発日本再生も夢のまた夢。ベテラン・ジャーナリストが警鐘を鳴らす!

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