「ラッキードッグ1」発売一周年記念ショートストーリー
『Round 1 memories』
2010.06.11〜2010.06.25


6月の空は澄みきって、青い。
まだ真夏の灼熱に焼かれておらず、煤煙と排ガスで汚されてもいない。そして忍び寄る氷霧の季節など存在すら知らない。そんな、あどけなさを感じるまでに青く、美しく晴れたデイバンの空には、飾り付けのようなちぎれ雲と中天の太陽だけが、あった。
「……ん〜〜〜。車から降りると涼しいなあ。きんもちいい」
「ああ。いい風だね」
「天気予報はあやしかったが……外れたな。雨なんて当分降りそうにないぜ」
「あー、あと1ヶ月もしたらよ。こんなとこにいたら熱射病で死ぬくらい暑くなるぜ」
「……早いな。……その、ジャンさん。今日で――」
「ああ」
俺は、スーツとシャツがずれるのも構わずネコのように背伸びをする。
「1年か。なんか、今年もあっという間だったなあ」
居並んだスーツ姿の伊達男たちを前に、俺は……。
「なかなかのんびり出来ねえが、まあ、忙しいのはいいこと……なのかねえ」
ここデイバンのマフィア、CR:5の二代目カポ、ラッキードッグ・ジャンカルロ、それが俺――は、部下の幹部たちを前にウィンクをし、片手を羽ばたかせて見せる。
「本部の完成から、1年か。いろいろあったが……今のところは、順調だね」
「財務局に噛み付かれてた頃はヒヤヒヤしっぱなしだったぜ。あの頃と比べりゃ、今はフロリダでアイスカクテル舐めてるようなもんだ」
「あー、おめえはヒマそうでいいよな。こっちは鉄道利権にアシ突っ込んだおかげでよ、最近はろくに飯食う暇もなかったんだぜファック」
「……1年、ですか。たしかに、本部が完成してから……も、そうですが――」
ジュリオは、まぶしい日差しに細めた目を、空に、そして俺に向け、急にもにょもにょした顔になって口ごもった。
「ん。どした?」
「い、いえ……。1年、というのは――ジャンさんが、俺……俺たちのカポになってからちょうど、それくらいと思って」
ああ、それか――と、ベルナルドとルキーノが同時に答えた。
「たしかに、それもあるんだがな。しかし……あのころはまだもめてたからな、はっきりと、ジャンが二代目だと宣言出来るようになるまで手間取ったもんだ」
「それに関しては……俺の責任も、ある。すまない。――あのころは、まだ役員会との内紛が決着してなかったし、ちょうど財務局のエージェントがもぐりこんできていて、おおっぴらに動くのはまずい状況だったからね……」
「あー、そうそう、そういやあ、そうだったよなあ。ジャンのよ、たしか二代目の宣誓式のときにガサ入れのタレコミがあったりしたよな」
「そう。……だから……ジャン、おまえがカポになった、正確な日取りを決められないまま来てしまっているのは――本当に、すまない」
俺は、ベルナルドの尻を蹴飛ばすしぐさをしながら、笑う。
「ん、いーや。俺は別に気にしてねえよ。なんだったら、本部完成の日といっしょにしとくか? そーすりゃパーティーも1回で済むしさ」
「ハハハ……そんなところで倹約しなくても」
「でも、俺、は……あのときから、ずっと――ジャンさんが、俺のカポだと思っていましたから……」
「あのとき、つーと。親父が全員、集めたあのときか?」
いえ……とうつむいて、ジュリオの声が消える。
俺は、身体の古い皮がいちまいツルンとむけたような爽快な空気の中――
「しっかし、ド広いなあこの敷地」
部下たちが、幹部のベルナルド、ルキーノ、ジュリオ、イヴァンが、かなりギリギリのスケジュールを無理やりこじつけて、今日――全員揃って、俺を連れ出してきたこの場所をぐるり見渡し……俺は気分のいい深呼吸をした。
「もう整地まで終わってるとはなあ。んでも。マジで今年中に出来るのか?」
「ああ。そちらはおまかせを」
「クリスマスにはお偉方を集めて、派手な落成式をやってやるさ」
「んでよ。31日には記念の初レースだ! 儲かるぜえ〜〜〜」
「――競馬場……本来は、ジャンさんの名前を付けたかったのですが……」
ココは――幹部たちが進めていたシノギのひとつ。チョイ前に法律が変わって、民間でもオッケーになったばかりの賭博ビジネス、そこにCR:5が参入する(もちろんカタギの会社名義で)最初の礎石となるのが、この競馬場だった。
「なるほど。こいつはいい場所だな。きちんと施設作って、道路引っ張って、ホテルとか飲み屋街つくって、人間集めて。ああ、イケそうな気がするぜ」
「お気に召していただけて光栄至極」
「ラッキードッグが気に入ったんなら、当たったも同然だな」
「ちょうどよかったぜ。最近よ、不況で他の街から流れてきた姉ちゃんたちがあふれそうになってて困ってたんだ。ここならガッツリ送り込んで、がっちり稼いでくれそうだ」
「金を落としそうな客集めなら、俺が……。家の名前で、招待状を書いて、持ち馬を全部ここで使います――」
「ワオ。期待しちゃうよショクン。……てか、稼ぎもそうだけどさ。なんか、ワクワクすんよな、こういう、イケそうなハナシを転がす前ってさ」
「ピクニックの前夜理論だね」
ベルナルドが愉快そうに笑い……こいつが笑うの久しぶりに見たよ。いい兆候だ。その笑いは、音色こそ違うが他の野郎どもにも、俺にも感染した。
「ハハッ、しっかし……なあ」
俺は――ぐるり、この広大な青空、だだっ広く整地された広場のど真ん中で――
「??」
俺のほうを見ている、こういう場所には不似合いなスーツ姿の男たちを見、笑う。
「全員、スーツでくるこたあねえのに。ていうか、みんなド忙しいんだろ? ダイジョウブなのけ? こんなところで油売っててよう」
「そ、それは……」
「いや、俺は問題ない。まあ、この競馬場はなんというか、ジャン、おまえのカポ就任一周年を祝うために動かしたようなもんだからな」
「俺は誰かさんと違って、キッチリ仕事はこなすんでな。これくらいのオフの時間もひねり出せねえでどうするよ、なあ?」
「俺は、予定があるのは夜だけですから……」
「なるほどなー。てか、実は俺も、NYに書く手紙の返事溜め込んでるんだけどなー」
ベルナルドが、俺の言葉に「ええええ」とショックを受けていたがあえて無視する。
「あー、しっかし気持ちイイ。やっぱ、たまにはこうやってオモテでねえとなあ」
こういう場所を歩くことは想定されていない靴で、俺は砕石と裸土を踏みしめながら、まっ平らな原野を歩く。向こうには、砕石の山、ときめくほどに巨大な土木工事機械。
そして数カ月のあいだにボサボサ茂った草原の方へと、歩く。
「――…………」
「…………」
「ん…………」
「……ああ…………」
ふと、俺は――背後で、急に動かなくなった部下たちの様子に気づいて足をとめる。
「どうした? なんかヤバイ予定でも入ってるの思い出したのか?」
「い、いや……。なんだか、ふっと思い出してな」
「気にするな。さて、一服したら車呼んで、街に戻るとするか」
ア、ソウ。俺はばらばらと散って動き出した幹部たちを視線の外にして、再び……。
なんというか、ガキの頃にこんな遊び場があったら気が狂うくらい喜んで遊んでたよな、と思うくらいだだっ広い、そして砕石やら資材やらが置かれた敷地をぷらぷら進む。
いい天気だ――
「――…………」
そのジャンカルロの背後で、幹部たち四人は、みなが…………。
四人全員が、まったく同時に、既視感のような感覚にとらわれて――記憶のいとぐちをさぐって、そして――もちろん全員が、他の三人と同じことを考えている、などとは気づかずに、いた。


□ Luchino Memory

「ジャン。俺達四人を連れて脱獄に成功する見込みはあるのか? 悠長にやってる暇はないぞ」
――………………。
「ああ……」
思い出した。さっき、あの場所で――連中と一緒にいるとき、不意に頭をよぎった違和感の正体は、あの時の記憶だった。
状況と、着ているものこそ違うが……幹部たち4人がそろって、ジャンのヤツを前にしていた。その状況がおなじで、あのときの事を、思い出したんだった。
「ムショ、か。懐かしいが二度とゴメンだな」
ルキーノは、銀のケースからスッと一本だけ飛び出させたシガーをくわえ、そして……。
一秒間固まってから、ここには火をつける部下がいないのに気付いた。ばつが悪そうに舌打ちしてライターをとりだし、今のを誰も見ていないのを確かめ、火をつける。
「……あいつが、ボスか――」
あの時のことを、思い出す。
あの時は、口では、ボスの命令に従い、ジャンのヤツを幹部と認め――そして脱獄成功のあかつきにはボスにする、それを認めてはいた。
だが……腹の底では、あのラッキードッグでも全員を連れての脱走は無理だ、と思っていたところがあった。それに賭けるしかない自分の不甲斐なさに腹も立てていた。
だが……サイがふられてみたら――結果は、現在。現状。
「ラッキードッグ……」
最初は、運がいいだけの坊主、シャツの着方も知らないガキだと思っていたジャンが、いっしょにじたばたしているうちに……実は、けっこう度胸も骨もあるヤツだとわかった。
それに、幸運というやつが何度も見せつけられ、最初はありえないと思ったが、何度もあいつに助けられ……。
そのうちに、ジャンが男の流儀を何も知らない坊主なのがかえって嬉しくて、いろいろと教え、コンプレートの着方から夜会の歩き方まで、教えて……。
気づけば、それが楽しくて仕方がなくなっていた。
「……なんてこった」
気づけば、あいつがボスだ。いまでは、アレッサンドロ親父がカポだった時よりも、組織は好調、幹部としての自分もどっしりとしたいい仕事が出来ている、と思う。
「世の中は、わからんもんだ……」
一時は、世界のすべてが嫌だった。幸せを手にいれても、それを無残に踏みつぶすこの世界が憎くて、壊してやりたかった。それもかなわず、自分の頭を撃ってしまいたくなることも、あった。
だが、それが今は――
「……今度、あいつに……墓参りにきてもらうよ――」
ぼそり、空につぶやく。自分が、こんな考え方ができるなんて。
ルキーノはシガーを口から離し、眼が痛いほどに青くまぶしい空を見上げた。
「……ジャン……」
細めた視野の片隅に、砕石の山を蹴飛ばしている、まるきりスーツを着たでかいガキ、といった有様のカポをルキーノは見つける。
周りには、誰もいない。いい頃あいだ――ルキーノはポケットに手を入れ、用意していたものを確かめ歩き出した。


「ん? どうしたルキーノ」
「いや、なんでもない――ン」
ルキーノは、なぜかばつが悪そうだった。
俺は、頭から?を出しながら、ルキーノが出してくれたケースから煙草をつまみ、金のライターで火までつけてもらう。
「オ。サンキュ。……ああ、今日も元気だヤニがうめえ」
俺が、盛大に煙を吹いて清浄な空気をレイプすると――
「…………ああ。そうそう、なあ、ジャン」
あきらかに、このタイミングを図っていた雰囲気で――だが、言い方は、どうでもいいことを今思い出したような口調でルキーノが言った。
「前に、な、おまえの……ジャンの二代目襲名の、儀式というか、パーティーと言うか、あれは目立つからしない、って会議で決めたよな」
「ああ。財務局こわいしな。それがどうかしたのけ?」
「いや、だからと言うわけじゃないんだが――」
ルキーノは、もぞもぞと……スーツの懐から、何かの小さな本を取り出した。
「ん? なにその本。やけに年季入ってるな」
「……古本ですまんが――俺が、昔から読んでた本だ。これ、やるよ」
俺は、急なハナシであっけにとられながらも……ルキーノの大きな手から、その小ぶりなポケットサイズの本を受け取る。
「プレゼント、ってわけじゃないがな。まあ、よかったら持っていってくれ」
「おう、サンキュ。寝る前の睡眠薬がほしかったんだわ。ありがとうなルキーノ」
「いや――」
その本の表紙には……「釣魚大全 瞑想的リクリエ―ション」、とあった。
「釣りの本?? 瞑想と釣りって、なんか関係ねー気がする。てか、えらい昔の本じゃね、これ? ……てか、ルキーノに釣りの趣味があったとはねー」
「ハハ、まだお前に教えていないことのひとつさ。紳士たるもの、まっとうな趣味の一つくらいないと恥を書くぞ。釣りは、いいかんじでカネもかけられる趣味のひとつだ」
「そのハウトゥー本が、これけ?」
「いや、その本は何百年も前の本だが……なんというか、聖書みたいなもんさ」
「ふーん。釣りねえ。ザリガニくらいしかやったことねえけどな。あれなら任せろ」
「カーヴォロ。そんなんじゃないさ。原生林の河で、マスを釣ったり、大海原でカジキと一騎打ちをしたりな――あれこそオトコの趣味だぞ」
「あー。ヘミングウェイのでそんなの読んだわ。マスかー。食ったら美味そうね」
「いや、釣ったら逃……まあ、それもおいおい教える」
ルキーノは愉快そうに笑って、その本をパラパラめくって、ポケットにしまった俺をなぜか、すごくうれしそうな目で見ていた。
「その本の一番後ろに、行きつけの道具屋のチラシを挟んでおいた。今度、竿を買いにいこう。その店の竿は最高だぞ。日本の竹を、イギリスの職人が組んだ最高級品だ」
「へー。日本すげー。サムライガールだけじゃなくて、竿までご立派とは」
「竿を生かすも殺すも使い手だぜ。たっぷりしごいてやる」
「マァいやらしい」
「ファンクーロ」


□ Ivan Memory

「言っとくが今、幹部内の序列は、お前が一番下なんだからな! 忘れんなよ!」
――………………。
「ああ……」
やっとわかった。さっき、あのこっぱげたちとがんくび揃えて並んでる時、なーんか、前にもこんなことをしたことがあったな、と……頭に引っかかっていた。ずっとわからなくて、歯にナッパのすじが引っかかったみたいな気分だったが、やっと思い出した。
もう何年前だ? あのとき……。
イヴァンは、やけに鮮明に思い出せる「あのとき」の記憶を再生する。
ムショにぶち込まれて、CR:5の刺青入れたのは早まったか?とクソッタレな気分でいたあのとき――ボスからの秘密文書で呼び出され、ムショの運動場で、他の連中といっしょにジャンを幹部に、そしてボスに……という話しをしていた、あのとき。
それと、さっきのあれ。シチュエーションだけが同じで頭がこんがらがっていた。
「ハッ、ムショ、か……。あんなクソダメ、もう二度と入らねえぞ」
本当に、あのころはクソッタレた気分だった。
アレッサンドロ親父に見込まれ、意を決して入ったCR:5が実は屋台骨グラグラで、しかも上にはでっかいクソ山がいて、幹部たちとはうまくいかず、しかもムショにぶち込まれ……。
そう、そうだ。最高にクソッタレな気分だった原因は、あいつ――ジャン。
あんなムカツク、なんにも出来ねえしょうもない野郎が、どんなコネを使ったかいきなり自分と同格の幹部に、それどころかボスになると決められ……これ以上はないと言うくらいのファッキンな気分だった。
「あいつが、ボスか――」
どうしてこうなった? というくらい……コニーアイランドのジェットコースターより早くて、がたぴしでいつぶっ飛ぶかわからないヤバイレールの上を走った、そんな数年間だった。今思い出しても……自分の記憶が信じられないくらいの、ヤバイ毎日だった。
最初は、CR:5も、ジャンも放り出して新しい組織を作るか、ギャングに合流しちまおうかと思っていた。それが、いつの間にか……。
「手間かかるからなあ、あのバカ……」
イヴァンは、煙草を忘れたことに気付いて舌打ちし――ニッと犬歯を見せて笑う。
「俺がいねえとな……」
ジャンのバカ野郎、あいつのお守りをさせられ、何度も死にかけて――そして気づいたら、ムカつくことにあいつになんども助けられていた。それは最初、ただのラッキーだと思い込んでいたが……そんな、サイコロの出目が関係ないところでも、あいつは、こっちがぎょっとするぐらいの男を見せて……。
「あいつが、ボスか……」
いまでも、あのタコが組織のボス、って言うのには正直違和感がある。
だが……。
「もうあとには引けねえもんな。腐れ縁だくそったれ……」
あいつをボスにした責任が、自分にはある。ジャンの野郎は、俺がついていないとダメなのはわかってるし……あいつも、何度も、そう言っている。
「ああ、くそ。なんかむかついてきた……」
あいつは、俺がいないと駄目だ。
俺は…………どうだろうか。あいつのいない組織で、やれるか……?もしかしたら、あいつは俺の――いちばん、ほしかったものに…………?
「……ハッ、バカらしい」
なんか、目がシバシバしてきた。真昼の太陽がまぶしすぎるせいだ。
目を細めたいヴァンは、ふと……。
「……ん? ……何やってんだ、あのタコ」
少し離れた場所で、ジャンは――巨大な排水用のコンクリート管が積まれた山を見上げ、その空洞を覗き込んだり、そこに石を投げ込んだりしていた。
まるきりガキだ、しょうがねえ……。
「………………」
ジャンの周りには、ちょうど……誰もいなかった。……まあ、いいか。
イヴァンは、ポケットの中のメルセデスのキーを弄びながら足を進めた。


「おう、イヴァン。すげーよなあ、これ。見ろよ。中に住めそうじゃね、これ?」
「住まねえよボケ。……なあ、煙草持ってねえか」
「ねえ。てか、一本くれ」
「俺も持ってねえよタコ。くそ、役たたねえ」
俺の横で、何をしに来たんだか――イヴァンはファックだのシットだの、なんだか落ち着かない様子で吐き散らしながら行き来していた。
「なあイヴァン」
「な、なんだよ……?」
「むこーのほうに、護衛の兵隊がいるじゃん。あいつから煙草もらってこようぜ」
「い、いや……」
「コイントスできめようぜ。俺インディア……あ〜。小銭もねえクソァ」
「な、なあ、ジャン」
急に……イヴァンが、小便を我慢しているような声を出した。
「前によう、おまえの……二代目のパーティーさ、今回は目立とまずいからやらねえ、って決めたよな」
「ああ、そのことか。気にすんな、来年はテキトーな日取りきめてタカってやる」
「……その、な。今年、ってか、今……えっと。クソ!!」
なんですのん、このひと。急にキレましたわ。
「あのな……! なんつーか、なんにも無しだと、縁起悪い、つーか決まりが悪いだろ? だからよ、プレゼントってわけじゃねえが……」
「ん? なんかくれるのけ?」
「い、いや。あの、な……部品、注文した」
「ち○こが強くなる道具か」
「うるせえ茶化すなボユゲ! ……あの、な。メルセデスの……あいつの運転席、フロントのルーフを、オープンカーに……出来るんだ、あいつは。その部品が、くる」
「へ〜〜〜。あのレディ、オープンになるのか! すげえ、ピカピカのお嬢様が、夏服に着替えたらおっぱいの谷間が見えましたってカンジ? すげえ!!」
「あ、あほ……」
なんか、イヴァンは急に赤くなった。なんですのん、この童貞っぽいやくざもん。
「だ、だからよ、夏のあいだは……オープンにすっからさ。こんど、のせて……やらあ」
「うお、まじ!? うお〜〜。スゲエ楽しみ! まじアンガトなイヴァン!」
「いや、たいしたこっちゃねえ……」
「最近さー、車に乗ると防弾の後部座席だろ。息詰まっちゃってサー。……あー、でも。
オープンってことは丸出しだよなあ。防弾のボの字もねえよなあ。……ベルナルドとかカヴァッリ爺様、絶対ダメっていいそうだぜ」
「ンなもん! 関係ねえ、馬鹿にすんな。ハハッ、そこらのチンピラのタマで、俺の車が、あの戦乙女が止められるってか? ありえねえ!」
「だよな〜。おう、改造終わったらこっそり教えろよ。サングラス用意して待ってるぜ」
「おうよ。小便ちびらせてやるぜ!」


□ Giulio Memory

「信じてます。貴方は只の犬じゃない――『LUCKY DOG』」
――………………。
「ああ……」
あの既視感の正体を思い出すのに、少し時間がかかった。
ジュリオは、小さくため息をつく。
あの時と同じだった――幹部たちが集まって、ジャンさんを前に、ボスの命令をつたえた刑務所の、あの時間、あの空間。
そして……あの時の気持ちも、今感じた感情のように思い出す。
ジャンさんは、自分のこと覚えていなかった。
それが、少し寂しくもあったが、だが自分はホッとしていた。もし仮に、ジャンさんが自分のことを覚えていたら――俺は、どんな顔をすればよかったのだろう。
「…………」
ジュリオは、呼吸をして――周囲に誰もいないこの6月の空の下、少しだけ、記憶の中に自分を沈殿させる。
ボスからの指令を受け取ったあのとき。
あのジャンさんが、自分と同格の幹部になる。そして、自分のボスになる――あのときの高揚、そして不安は、どんな薬物よりも強烈だった。
ジャンさんが自分のボスになる――そのためになら、なんでもするつもりだった。なんでもできる気がしていた。
だが……。
「俺は…………駄目だ……駄目だった…………」
悪夢のなかで、身体が動かないように――自分は、ジャンさんの役に立てなかった。
脱獄を成功させ、このデイバンに戻ったジャンさんは、本来ならボスになるはずが……薄汚れた輩に邪魔をされ、それは叶わなかった。
そして……あの苦境の中で、自分は、自分の力の無さに絶望した。
俺はジャンさんの役にはたてず、いくら敵を殺せても、そのことでジャンさんに迷惑をかけ、それどころかジャンさんを苦境に落として……。
だが、ジャンさんは俺を見捨てなかった。
「……あ…………」
まぶしい。太陽が、初夏の空が――しみる。
そして、あのときのジャンさんの言葉を思い出すと……身体が、揺れる。
――ジャンさんは、俺が必要だと、言ってくれた。
――ボスになるためには、俺がいないとダメだと。
――その言葉で、俺は生かされてきた。
「ジャンさん…………」
ジャンさんは、立派な二代目になった。
俺が、それにどれくらい役立てたかはわからない。
だが、ジャンさんは今でも、俺が必要だと言ってくれる。
――だから、俺は生きている。
――自分のすべてを、自分を必要としてくれる人間のために、生きる。
――そのためならば例え、無残に泥の中で死に、死の影の谷に落ちても構わない。
「俺は……あなたが……」
つぶやいたジュリオの目に……涙がにじんでいたその目に、ジャンが映った。
ジャンは、ブルドーザーが鋤き返した荒地、その隙間に生えている草の茂みに靴をさし、何かを探すように……歩いていた。
「…………」
――今なら、周りに他の幹部たちもいない。
ジュリオは、用意しておいたものを……ポケットの中、少し汗を吸ってしんなりして閉まっているものに触れ…………。
「………………」
その、あまりにも幼稚な発想の『もの』に、死んでしまいたいくらい恥ずかしくなった。
だが……動き出した脚は、もう止まらなかった。


「よう、ジュリオ。どうした」
「い、いえ……。なにか、ありましたか……?」
俺の背後に、わざと小石を踏む足音を立てながらジュリオが近づいてきていた。
「いや、なんにも。ていうかさ、この草ってヤツはタフだよなー。なんにもないところから生えて、もうこんなボサボサだもんな。すげえよな」
「夏、ですから……。植物が、好きでしたか、ジャンさん……?」
「いや、とくに。この生命力すげーって感心してたのさ。ハハハ、ここに来たのがなー。ベルナルドだったらおちょくってやったんだけどなー。ざんねん」
「……すみません」
「なぜ謝る」
俺は、フレッシュな青草の上に身をかがめ、ガキの頃の記憶をひっくり返す。
「どれだったかなあ。確か、笛になる草とかあるんだよな」
「そう……なんですか」
「いや、でも気をつけねえとな。野良犬やオッサンが立小便した笛吹くのはアレだし」
「…………あの、ジャン……さん……」
「ほいよ?」
ケツを上げ、振り返った俺の前で――ジュリオは、なんだか俺より小さくなってしまったような有様で目を伏せていた。
「……すみません、最近……おつかれの、様子で……。俺、なにもできず……」
「ハハハ、忙しいのはまえからさ。ああ、でも。だいじょーぶ、今年の夏は、短いけどバカンスの予定ねじ込めたぐらいだからな」
「はい、たのしみ、です……。その……ジャンさん、お疲れで――」
ジュリオは、すう、と立てた指で、俺から少し離れた空間を撫でた。
「少し、軸がずれています。右腕も、つまっていて……そのままだと、よくないです」
「……ああ。たしかに。肩凝ってさー。あー。そうだな、たまにはまた、ジュリオにアレ、なんていったっけ、マッサージみたいなの」
「はい、整体、です――」
「うん、それそれ。また頼もうかな〜」
俺が肩をぐるぐる回すと――いつの間にか、こちらに差し出されたジュリオの手の上に、なにか…………紙切れが、乗っていた。
「ん?」
それは……何か、太いリボンのような紙に、ペンで文字と数字が書かれた……? なんというか、マフィアの幹部、東海岸有数の資産家のぼんぼん、そして息を飲むようなイケメン王子サマ――どの存在の手のひらにのっていても違和感バリバリの、紙切れ。
「…………す、すみません……。なにか、形になっていた方が、いいと……。その、ジャンさんの――二代目の、プレゼ……すみません、こんなもの……責任――」
「おおおい、いきなり自己完結して死ぬなこのバカ。てか、それ見せろ」
俺は、ジュリオからその紙片をひったくる。
それは……。
「……マッサージチケット。5枚綴りが2セットか。これ、ジュリオが?」
「……すみません……。アイスピックで穴をあけたら、ずれました……」
俺の前で――手作りの券を用意してきたマフィアの幹部、おそらくこの大陸で最強のこの生き物は、もらしたおしっこを見つかった子犬のような有様になっていた。
「……ハハハ、ありがとな、ジュリオ。大事に使うぜ〜。おし、早速今夜頼む」
「え…………。あ、あ。はい……!」
「ジュリオのアレはきくからなー。思わず声でるもんな。勘違いされるとまずいから、他の野郎どもが寝静まってからにすっかな」
「はい……。そ、その、いつでも呼んでください……!」


□ Bernardo Memory

「……さ、俺達をボスの前まで連れてってくれ、ジャン。そしてお前が新しいボスになるんだ」
――………………。
「――なったわけだ。……これでよかったのですね。アレッサンドロ親父」
ベルナルドは、ひとり――身体の芯まで消毒してくれそうな6月の日差しの下、まぶしそうにメガネの下の目を細めた。
さっき、少し思い出せなかったのは、あまりにもあのときと状況が似すぎていたせいだ。
あの刑務所の運動場で、ジャンを前に――幹部全員がそろって、ジャンに指令を伝え、そして彼が俺たちのカポになる、という……。
「今となっては、他の未来は考えたくもないな――」
正直、あのときは……あの運動場での一瞬、あのときからしばらくは、さすがの彼でも、ラッキードッグでも全員を連れての脱獄は難しいと思っていた。そして、脱獄が失敗した場合は、なんとかジャンだけでも先に刑期を終わらせ、デイバンに戻してアレッサンドロ親父と合流させる、その計画を真剣に考えていた。
そして……。自分の仕掛けがすべて裏目って、自分の無力さに絶望していた――
「ジャン……」
そんな自分を、ジャンは引っ張って、叱咤して、この世界に連れ戻してくれた。
そして、組織にとって最悪の時期を、あの若いカポ代理は見事に乗り切った。
敵が、そして味方の裏切り者が、無名な若造だったジャンを見くびっていたのもあるが、だが、それだけではなかった。アレッサンドロ親父は間違っていなかった。
ジャンカルロは、彼の幸運以上のものをもって、組織を――自分たちを助けてくれた。
そして……。
現在が、夢のような希望に満ちた、現在を、ジャンは運んできてくれた。
「ラッキードッグ、か――」
まさに。自分にとって、彼は幸運以上の存在だった。
あのとき。まだ若造の自分がマフィアとしての生き方に迷って、そしてその愚かさで生命を落としかけていたときに、ジャンが救ってくれたあの時から……。
ジャンカルロ、ラッキードッグは自分にとって、かけがえのない存在になっていた。
そして、彼を弟分にもらおうとアレッサンドロ親父と話し――そこで、ジャンカルロの秘密を明かされ、驚き、それを自分の中だけにしまっておく覚悟をした、あのとき――あのあと、まだ幹部ですらないジャンカルロと過ごした数年は、幸せだった。
若造の自分は、無理な仕事を抱え込んで潰れそうだった。そんな俺の救いに、ジャンはなってくれていた。
あのあと、ジャンが幹部に、そしてボスになると聞かされたときにあまり自分が驚かなかったのは、もうずいぶん前から――
「……あいつがいないなんて、ありえないからな……」
――ジャンのいない人生というものがありえないと、わかっていたからだと思う。
――ならば、ジャンがボスに、二代目になってくれれば……。
――聞かされた秘密も、そのまま受け入れて彼に仕えることができると思っていた。
「秘密、か…………」
――秘密。組織では、おそらくアレッサンドロ顧問、カヴァッリ顧問、そして自分しか知らないであろう、ジャンの秘密。その出生と、両親の、秘密。
その因果に想いをはせたベルナルドの目に……。
少し離れた場所で、工事機材の巨大なブルドーザーの周りをぷらぷら歩いている彼の姿が――スーツ姿のジャンが、映った。
「………………」
あの秘密は、このままジャンにも明かすことはなく――自分は沈黙を伴侶に生きてゆく。
それはアレッサンドロ親父との約束でもあり、そして……ジャンのためでもあった。
「秘密、か…………」
その秘密以外にも――ベルナルドは、もうひとつの秘密を……決して明かせない秘密、ある感情を……このまま、胸の奥に隠して、幹部筆頭として生き、そして死んでゆく覚悟をしていた。
その感情、想いは、決して明かすわけにはいかない。
いくら相手がジャンカルロでも……相手がジャンカルロだからこそのこの感情は、絶対に明かすわけにはいかない。
自分が、そういう人間だとわかったときは、絶望しかけた。だがその絶望は、命を捨てるには、あまりにも甘く……そして鮮烈だった。
いや、今でも鮮烈だ。ときおり、ふざけているつもりが危険な気分になるほどに。
「……俺は、これでいいんだ――」
ベルナルドは、自嘲するように小さく笑う。
決して明かせない、秘密。
ベルナルドは、ジャンの方に歩きだした。ちょうど、周りに誰もいない。
……ひとつの秘密を守るために、その気持を強固にするために……。
……もうひとつの秘密は、少しくらい開放しよう、とベルナルドは決めていた。
……二つの秘密は、自分だけで抱くには大きすぎる……。


「おう。ベルナルド、こいつを見ろよ。古代のドラゴンってこんなかな」
「土木機械はいいね、男の子ってかんじのビジュアルでときめくよね」
俺は、ベルナルドの言葉にウンウンうなずいて、小さな家ぐらいあるブルドーザーを見上げる。
「そういや、このドーザーとか、むこうのショベルも組のマシンなのけ?」
「ああ。カタギの建設会社だが……ルキーノの仕切りだね」
「すげー。ああ、クソ。動いてるところ見てえなあ」
「数日後には工事再開だが……残念、ジャンカルロ。明日から出張だよ」
「わーってるって。あ〜、本部の工事のとき、見に行かなかった俺のバカばか」
石など蹴飛ばした俺の背後で……。
「――…………」
「どうした、ベルナルド?」
急に、ベルナルドの雰囲気というか、黄色い雑誌でときたま特集されるオーラとかいうヤツが変わったのが、わかった。
「な、なんだよう。おい、顔がこわいぞ?」
「その……ジャン。……すまん――」
すい、とベルナルドの長身が俺のすぐ前に立った。さすがに、俺もぎょっとする。
「な、なんだよ……?」
「……すまない、ほかのやつらには……見せられないんだ」
「な、なにが……?」
「……すまない、おまえに……秘密にしていたことが、ある――」
なんでか、ドキッとしちまった俺の前で……ベルナルドは、スーツの胸ポケットから何かの平たいケースを取り出した。それが、涼しい音を立てて開く。
「な、なんだ……?」
「――この写真に、見覚えは……?」
そう言ってベルナルドが取り出したのは、ひどく古い写真だった。
だが、腕のいいカメラマンが写して現像したのか――その写真は、色あせてはいるが、被写体が生き生きと――写されているのは、若い女性だった。
その女の若々しく波打つ髪と、目の輝きまでがしっかり見て取れた。
「ん……? なんだ……?」
「――なあ、ジャン。お前の両親は、その……殺されたんだったな……」
「んあ? ああ。そう聞いてる。俺、おぼえてねーんだよな」
「……そうか。そう、だったな」
ベルナルドは、その白黒写真を俺に渡す。俺は、まじまじと……。
「うん。いい女だな」
活発そうな娘さんだ。背が高いのだろう、質素だがよく似合う青か何かのブラウスを着て、腰に手を当て、写真の方にニッっと、少し挑戦的な目つきで笑っていた。
「うおー。くそう、おっぱいでかいなカッコイイな、腰細いな。美人じゃねーか」
「……見覚えは……ない?」
「だから、ねえってば。……誰なんだよ、これ……?」
俺のかしげた首に――ベルナルドは、俺をまじまじと見てから、ふう、と息を吐く。
「そうか……。すまない、俺の早とちりだったか」
「だーかーら。わかるように説明しないと……」
俺は、手をワキワキさせてベルナルドの額のあたりを狙って見せる。
「すまない。――説明するよ」
ベルナルドは降参の仕草をして後ずさり……なにか、寂しそうに笑った。
「……ジャン、おまえの両親……その、親御さんが殺されて――その後、直接的ではなかったが、面倒を見てくれたのがアレッサンドロ顧問……というのは知っていたか?」
「ああ。なんとなく、そんな気はしてた。なんでかはしらねーけどな」
「……そうか。俺も、その件はあまり、な……」
ベルナルドはばつが悪そうに髪の毛をなでる。
「でも、こうは思えないか。アレッサンドロ顧問は、ジャン、おまえの親……母親のことを、何か知っているんじゃないか、と」
「どうかねえ。あのエロガッパのことだから、肘鉄くらいは食らってたかもな」
「だから、ね。……すまない、おせっかいだとはわかっていたんだが――ジャン、おまえも母親の顔くらいは知っていた方がいいんじゃないかと思って、さ……」
「……まさか――」
「ああ。……これはここだけの話しだ。本部が出来たときに、親父の私物を運び込んだだろう? あのとき書類の整理をしていたら……昔の写真を見つけた」
意識しないうちに、俺の喉がゴクリ、鳴った。
「親父が大切にしていた、昔の写真だ。しかも、服の意匠からして20年以上前――」
「じゃあ、これが……」
「……ああ。ジャンの母親かもしれない、と思ってね。なんというか、ジャンの二代目、一周年が節目かと思ってね。こうして、こっそり持ってきた」
「………………」
俺は、その写真を……美人で、なんというか向こうっ気の強そうなその顔を…………。
「……悪い、ベルナルド。たぶん、これ違うわ」
「え……?」
「ほとんど覚えてねーんだけどさ、両親のこと。でもな、ひとつだけ、ぼんやりとだけ覚えてるんだわ。たぶん、俺のママだったオンナは……こんなふうな、金髪だ。触ってわしゃわしゃした記憶があるから、たぶん間違いねえ」
「言われてみれば……」
「だろ。この写真のオンナ、この陰影、色合からすっと赤毛っぽいよな」
「……じゃあ……違うか。……すまない、ぬか喜び、させてしまったな……」
「いや、ぜんぜん。まあ、あのエロガッパおやじのこった、昔、口説けなかったオンナの写真を、未練たらしく持ってただけだろーな」
「ハハハ……。では、このレディは誰なのやら」
「さーねえ。ま、いいオンナ…………だけ……ど……」
――なんだ、この感覚。……不意に、背後が寒くなった。殴られたような、悪寒。
「どうした、ジャン?」
「いや……。いまさ、この写真はもらっていって、おかずにしてやるべえ、とか思ったとたんに……なんか、首筋にこう、ぞぞーっと……きた。これイラネ、返す……」
「そ、そうか。じゃあ……元あった場所に戻しておくよ……」
「そうしてくれ……。うおお、なんだ、この……寒ッ、誰か……あっためてくれ……」
「……ごめん、なんか俺まで背筋が凍ってきた……悪いことはするもんじゃないな……」


□ Five Memory

「――おう、ジャン。そろそろ戻らねえと時間やべえぞ」
「ああ。りょーかい。……んじゃ、日光浴はこのへんにしとくか」
「はい。ジャンさん……明日から、NYでしたね……」
「そうそう。ジュリオ、護衛につれていけねーけど、るすは任せたぜ」
「はい、必ず――」
「ジャン、送別会ってわけじゃないけど店は抑えておいた。7時にはもどってくれよ」
「お〜〜。どの店? 白雪姫?」
「いや、新しい店だ。新装したばかりでな、ちょっと味見をしてもらうぞ」
「まかせろ。きびしい点を覚悟しやがりませ」
「――さあて」
少し離れた場所に……白い女王のようなイヴァンのメルセデス、その背後に、組の車が何台も集まっているのを見て、ベルナルドが手を叩いた。
「いざ、デイバンへ。行こうか、ジャン」
「おう。さあて、気合入れて、あたらしい1年をおっぱじめるとするか!!」
END
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