心を察するために (2007/09/11)
札幌市内のある福祉施設で、重い知的障害のある女性と出会った。
「こんにちは」 あいさつをしても返事がない。どこまで理解できるのかな−と思いつつ、メモとペンを渡したら「だいこん」と書いてくれた。脇にダイコンの絵を描くとウンウンとうなずいている。 隣にリンゴの絵を小さく描くと「ちいさいな」と書いてくれた。次にサクランボの絵。これには「サクランぼ」と書き加えてくれた。おもしろくなって長ネギを描いた。下手くそで野菜に見えなかったのかもしれない。「セブン・イレブン いい気分」と書いてメモを返してくれた。本当に交流できたのかどうか分からないけれど、でも、楽しくて笑ってしまった。 ある福祉イベントで、数年前に認知症の夫を亡くしたという女性(78)と話す機会があった。 彼女は「認知症だから何も分からないなんてとんでもない。夫は私の気持ちを理解していましたよ」と話した。 福祉の現場で「当事者主体」「当事者本位」といった言葉が聞かれる。 「障害だから」「病気だから」といった思い込みがあっては、当事者の心を察するのは難しい。在宅福祉が進む今、こうした先入観を捨てることが求められていると思う。 (中原洋之輔) |
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