逆襲のジャミラ

逆説のHERO評論(特撮・アニメ)※「ウルトラマン『故郷は地球』は名作か?」「怪獣ジャミラは可哀想か?」という疑問から始まったブログ。ヒーロー番組に仕込まれた自虐史観について考察中。

ジャイアントロボ 殺人兵器カラミティ

殺人兵器カラミティ

前回からの続き)

ジャイアントロボ』で、まったく語られることのないその国。
たしかに「ハワイ」「ニューヨーク」といった州名や都市名は出てくるが、驚くべき事にその国名は全26話を通して、ついにただの一度も口に出されることはなかった。それは”タブー”であり、忌み言葉のようでもあった。

その忌み言葉っぷりが現れているのが、第22話「殺人兵器カラミティ」だろう。
この回は”メルカ共和国”という国の大統領が在留大使を呼びつけ、GRのVTRをみている場面から始まる。そして大統領は大使にこう叫ぶ。
「わがメルカ共和国は、いつも、あらゆることで世界一だ。しかしジャイアントロボが現れてからは、ロボットのことは日本が世界一になってしまった。これはわが国民にとって我慢ができないのだよ」
結局、日本政府はメルカ共和国の圧力には抵抗できず、ロボの秘密を開示させられてしまう・・・。


メルカを英語風に舌を丸めて発音すれば、それが何を意味しているかはすぐに分かる。
そしてそうして意味される国に、南極なんて僻地でさえ襲撃したギロチン帝王はただの一度も攻め込むことがなく、その国は彼の侵略の外部に置かれたままだった。

この異様な違和感がもたらす印象は、『鉄人28号』でのそれとは大違いだと思う。鉄人がその国を無視することには理由はいらないが、『ジャイアントロボ』は”地球征服”を目論む敵との戦いの物語だ。そこではあの巨大な大陸を無視することは許されない。しかもその侵略を防衛する組織、ユニコーンの本部はまさにその国の中にある。

ちなみに、メルカ共和国で建造されたジャイアントロボのコピー品には、カラミティという名がつけられた。意味は「悲惨、惨禍」といったところだろう。少なくとも、いい意味ではない。
そして、そのカラミティはあっさりとギロチン帝王に奪われてしまうとジャイアントロボに襲いかかり、その目をつぶしたのだった。


さて、そうなってくると問題なのは、ギロチン帝王とはいったい何者なのかということだろう。もちろんそれは、彼が宇宙からやってきた謎の宇宙人でBF団を結成して云々・・・というようなことではなく、ギロチン帝王がこの作品のなかで意味するもの、象徴しているものという意味でだ。

実は『ジャイアントロボ』にはもう一つ、また別の違和感が存在する。
この作品を1話から順番に見ていくと、中盤あたりからある単語が頻繁に登場しだすことに気がつくのだが、それは本来であれば、それこそが”タブー”であり、忌み言葉であっても不思議ではない単語なのだ。

まず第15話。ギロチン配下のミスターゴールドは日本全土を核ミサイルで攻撃しようとする。

第18話。日本の科学者グループが超放射能元素YZ金属を開発する。それはウラニウムの数千倍の威力があると説明される。

第20話。ギロチンのロボットが襲撃したのは西南村原子力センターだった。

第24話。ユニコーン日本支部が警備していたのは、世界初の空飛ぶ原子力タンカーの就航式だった。

一目瞭然、「核」「原子力」だ。
お断りしておくが、これら作中での「核」「原子力」には作劇上の必然性はほとんどない。原子力センターは後楽園球場でも東京タワーでもよく、原子力タンカーは豪華客船でもジャンボジェット機でも、ストーリーは大して変わるものではない。
ならばこの物語は、まるで故意に、意図的に「原子力」という言葉を使いたがっている。そんな印象さえ受ける。

そしてついに最終回第26話「ギロチン最後の日」では、ギロチンの正体が明かされることになる。自ら巨大化し、最終決戦を挑んできたギロチン帝王は、ユニコーンの面々に向かってこう言い放つ。
「わしの体は原子力エネルギーのかたまりだ。わしの体が爆発したら、地球は木っ端みじんになってしまうぞ」

ここまで来れば、もうクドクドした説明は不要だろう。
ギロチン帝王は「核」そのものであり、その脅威でもって地球を征服しようとする者だった。ではその「核」はどこから来た脅威なのか? 言うまでもなくそれは、(タブーであり忌み言葉でもある)「アメリカ」から来たものだ。だからギロチン帝王がアメリカを攻撃することは有り得ない。ギロチンは「核」のメタファーであり、「アメリカ」のメタファーでもあった。

ところがそんなギロチン帝王は、奪われたジャイアントロボの奪回には必死になるが、それをバラバラに破壊しようとはしない。その理由も今は分かる。
なぜなら、ジャイアントロボ自身が原子力エネルギーで作動するロボットだったからだ。ロボを破壊することは、ギロチンが欲しがっているこの地球を破壊してしまうことに他ならない。だからギロチンはジャイアントロボを抹殺することはできなかった。


そしてそうして見ると、特撮テレビ映画『ジャイアントロボ』とは、日本人がアメリカの核兵器を奪い、それを利用してアメリカの核兵器に対抗している構図をもつ物語のようにも思えてくる。
実際『ジャイアントロボ』の最終回は、「核」を突きつけられて手も足も出せなくなったユニコーンに代わって、ロボが自由意思でギロチンを抱きかかえて宇宙に飛び出すと、ギロチンもろとも流星に激突して爆死することで幕を閉じるというものだった。
結局のところ、「核」を倒すことができるのは「核」だけだったのだ。


ところで「核抑止力」としてのジャイアントロボを考えたとき、ここにひとつ新たな厄介事が姿を現すことになる。平和憲法だ。
『ジャイアントロボ』において、日本人がアメリカさえもが羨むような軍事兵器をもち、それを海外で実戦使用しているという事実は、明らかに憲法第9条に違反しているという問題だ。

では『ジャイアントロボ』において「平和憲法」とは、一体どのように描かれたものだったのだろうか。

つづく

テーマ:特撮 - ジャンル:サブカル

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