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NIMBYとWIMBY

2010年6月12日0時7分

 米軍普天間飛行場の移設をめぐる鳩山由紀夫前首相の迷走で明らかになったことのひとつが、沖縄の苦難は理解するが、危険・迷惑施設は自分のところは勘弁してほしいというNIMBY(ノット・イン・マイ・バックヤード)症候群である。

 負担の分担という前首相の協力要請に、全国知事会の反応が冷淡だったことでもわかる。

 利害に敏感なのは人の性(さが)なので、NIMBYがあれば、WIMBYというものもある。ちなみにWIMBYとはウエルカム・イン・マイ・バックヤードの略で筆者の造語である。

 失うものが少なく、得るものが多ければ、「わが町へ」という陳情合戦が繰り返される。例えば、日本航空破綻(はたん)の一因となった100近い地方空港の乱造や、巨大な釣り堀と化した全国の港湾施設などでWIMBY症候群が顕著である。

 国の官僚は、バラマキによって地方への利権が拡大するし、地方選出の政治家も利益誘導で選挙戦を有利に戦える。

 通常は、住民の利害が一致することはまれなので、NIMBY派とWIMBY派に分裂する。この対立やすき間を狙って、補助金や利権誘導で、政治家、知事、官僚、業者たちが暗躍する。人の強欲は限りなく、成功した手法は、反復し、拡大していく。この手口は長年にわたり、原発、ダム、道路、新幹線、橋梁(きょうりょう)、干拓事業等々で散々見せられてきた。

 だが、このようなパラサイト型モデルはしょせん持続できない。政・官・業がもくろむ三方一両得は、結局、国民負担の増税に帰結する。近視眼の政治と行政がもたらした経済の衰退と社会の疲弊は、目を覆うばかりである。(六菖)

    ◇

 「経済気象台」は、第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるものです。

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