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【社会】

『最小不幸社会は?』『期待外れ』 派遣法改正 先送りに失望

2010年6月12日 朝刊

 労働者派遣法改正案の今国会での成立が困難になった。長妻昭厚生労働相は、参院選後の臨時国会で成立させたい意向を示しているが、「不十分だが、一歩前進を」と早期成立を求めてきた派遣労働者らには失望が広がった。(橋本誠、寺岡秀樹)

 民主党が参院選の日程を優先したことで、審議時間の確保ができなくなった。リーマン・ショックの二〇〇八年から議論が始まった法改正が、またも先送りになった。

 「残念。年越し派遣村を訪れた菅直人首相の言う『最小不幸社会』の第一歩なのに」

 低賃金の日雇い派遣で苦しみ、規制強化を願ってきた男性(41)が期待を裏切られた心境を語る。

 改正案は「派遣切り」が吹き荒れた〇八年十一月に自民・公明党政権が提出。昨年六月には民主・社民・国民新党が対案を出したが、いずれも衆院解散で廃案になった。新政権は今年四月、仕事があるときだけ契約を結ぶ登録型派遣や、製造業派遣の原則禁止を柱とした改正案を出したが、野党の抵抗や首相交代で国会は空転した。

 「あれだけの社会問題なのに、国会の主要課題になっていなかった」と、自動車工場の派遣労働者だった池田一慶さん(30)は批判。派遣ユニオンの関根秀一郎書記長は「三年越しの法案だっただけに、落胆は大きい。雇用状況を変えてもらいたい労働者の声が政権交代を後押ししたのに、期待に応えていない」と話した。

 ただ、改正案の登録型派遣禁止は専門業務については例外扱いとなっている。製造業派遣禁止も一年を超える雇用見込みがある契約には適用されない。このため、「内容が骨抜き。派遣労働者を呼んで一から議論を」と先送りを歓迎する元派遣労働者の男性(36)もいる。自由法曹団の鷲見賢一郎弁護士は「政府案のまま成立しなくて良かった。次期国会で抜本改正を」と語った。

 

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