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2010.06.12

 半島有事 政府「適切に対応」米に伝達 在日米軍出撃の事前協議 

カテゴリ日本政府出典 読売新聞 6月12日 朝刊 
記事の概要
日本政府が、朝鮮半島有事への在日米軍出撃に関して米側から事前協議の要請があった場合、「適切かつ迅速に対応する」と米政府に伝えていたことが11日、わかった。

日本側が「半島有事には米軍が事前協議なしに日本の基地を使用できる」という密約の存在を認める一方、その有効性を否定したことで米側に出ている「米軍活動に支障が出るのではないか」という懸念を払拭するためだ。

米側には、ここに来て密約の存在を公にした日本側の真意をいぶかる声もある。このため、外務省は米側に報告書の内容を説明した際、あわせて事前協議に適切に応じる方針を伝えた。


外務省の有識者委員会は3月、1960年の日米安保条約改定時に結ばれたとされる密約の存在を報告書にまとめた。ただ、66年に当時の佐藤首相が米国での演説で、「事前協議に前向きに、速やかに態度を決定する」と述べたことなどから、報告書では「密約は事実上、過去のものになった」とした。
コメント
1960年の密約では、半島有事の際、日本の基地から出撃する米軍に対して自由な行動を保証していた。それが”密約”である。半島有事を事前協議の枠外に置いたのである。

しかし今回の「適切に対応」とは、「半島有事の際、日本の基地から米軍が出撃には事前協議があれば、無条件で自由な行動を保証する」と説明したことになる。

密約は破棄されたが、その内容は継承されたことになる。

なぜ外務省は”この時期”にそのような説明を行ったのか。それは明日にでも起こりそうな半島有事(ただし北朝鮮の崩壊)に備え、北朝鮮の混乱に在日米軍の出撃が迫っているからと思う。

具体的には、今月に入って嘉手納基地には12機のF22戦闘機が飛来した。また同基地にRC135弾道ミサイル観測機も来ている。一昨日はホワイトビーチ(沖縄県)にトマホークを搭載したオハイオ原潜(SSGN)が寄港している。

さらに北の事態が緊迫すれば、嘉手納基地にはグアム基地からB52爆撃機やF22戦闘機が飛来することが想定される。

横須賀(神奈川県)や佐世保(長崎県)の米海軍基地から、空母機動部隊や海兵隊を乗せた強襲揚陸艦が朝鮮半島に向かうことになる。

北で大規模な混乱が始まれば、岩国基地には米海兵隊の攻撃機やMC53特殊作戦ヘリが集結することになる。

そのような事態になっても、米政府の日本政府との事前協議は形式的なものにしておく措置だと思う。

ちなみに半島有事の際の自衛隊の役割は、日本にある米軍基地を警備することと、半島有事で出動した米軍部隊に燃料、弾薬、食糧などを補給することで、自衛隊の戦闘行為は想定していない。

このような日米同盟の態勢は半島有事が最後になると思う。日米も半島有事が終わり、朝鮮半島に統一国家が誕生すれば、このような取り決めは霧消する軍事体制としか考えられない。

だから普天間移設問題の仕切り直しは、半島有事が片づいた時が”最後のチャンス”になると思う。その日に備えて、政府も沖縄も代替準備を怠りなく始めておこう。

在沖海兵隊は日本政府(外務省)が駐留を頼んでも、沖縄から出て行く世界規模で機動する有事即応の戦闘部隊なのである。
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