レンズを使わず、小さな穴を通った光だけで撮影を行う、ピンホールカメラというカメラをご存知でしょうか。
独特の温もりある写真を撮ることが出来るピンホールカメラの魅力を感じてもらおうというイベントが、福岡県朝倉市で開かれています。
●ピンホールカメラ愛好家・柳和暢さん
「そこも、結構きれいかもしれない…」
手にしているのは、テープが巻きつけられた竹の筒、ファインダーやレンズなど、カメラらしいものは何もついていませんが、これがピンホールカメラです。
愛好家の柳和暢さんが、地元でとれた竹を使って作りました。
カメラの中心部には、レンズ代わりとなる小さな針穴を開けたアルミ缶が取り付けられていて、その穴から光を採り入れることで、フィルムや印画紙に画像を焼付け、撮影する仕組みです。
田園風景にカメラを向けることおよそ10秒。
穴から光を採り込んだだけにもかかわらず、現像すると、こんな写真に仕上がりました。
●柳さん
「今のは10秒とか15秒くらいでやってますけど、これが夕方とか朝方、光が弱い時にはやっぱり30分とか1時間もありますし、ただ、モノを撮るだけじゃなくて、まわり、時間、とくに時間がこの中に入り込むというのが一つありますね」
ピンホールカメラの独特の魅力を知ってもらおうと、柳さんがアートディレクターを務める朝倉市の美術館「共星の里」では、今、全国の愛好家28人の作品を集めた展示会が開かれています。
●作品を見た人
「なんか幻想的」(女性)
「奥深さもあるし、感じるものが普通の写真とちょっと違うなと」(男性)
輪郭がぼやけ、どこか柔らか味を感じさせるピンホールの写真。
露光時間や穴の大きさを工夫することで生まれた、多彩な作品が並んでいます。
事前に申し込みをすれば、カメラ作りから撮影までを体験することもできます。
この日は、大分から写真教室の皆さんが参加。
いつものカメラを竹のピンホールカメラに持ち替えて、撮影に挑戦です。
●ピンホールカメラワークショップの参加者
「全然。見て撮るのと置いただけ、わからん。難しい」(女性)
ファインダーがないため、どのくらいの範囲が映るのかまったく分からず、四苦八苦しながらの撮影ですが、なんとか現像までこぎつけました。
デジタルカメラなどで撮れる鮮やかな写真とはひと味違う表情に、参加者も驚きです。
●ワークショップの参加者
「夢と、ドキドキ感と。次はこんなのを撮りたいなっていう、深みがありますね」(女性)
あすとあさってには、共星の里を舞台に、全国からピンホールカメラの愛好家達が集まり、シンポジウムや来場者の座談会などを行うほか、町のあちこちを撮影してまわることになっています。
●柳さん
「改めてこういう田舎の風景を見て、どういう風に思うか、どういう風に撮ってもらえるか楽しみですね。もう一度、アナログの世界もあるんですよ、こういう面白さもあるんですよ、ということが提案できれば」
朝倉ののどかな田園風景の中で味わう、素朴で原始的なピンホールカメラ。
デジタル時代の今だからこそ、その温かみに心惹かれるのかもしれません。