きょうのコラム「時鐘」 2010年6月12日

 別れるのか別れないのか。はっきりしろと言いたくなる国民新党、亀井代表の閣僚辞任劇である

「いっそ死ねと言って下さいな」は、泉鏡花の婦系図(おんなけいず)のせりふだが、今回は「お蔦(つた)」のように潔くない。郵政法案成立の約束を先送りされて亀井代表は閣内を去る。だが、与党として「死ぬ」わけにはいかない。何とも歯切れの悪い別れ方だ

「郵政あって国民なし」に見える国民新党。一方の民主党は「選挙あって政策なし」のようで、支持率が回復した勢いで参院選に入りたい。その民主党が選挙で圧勝すれば「捨てられる」恐れもある国民新党は、今国会での成立にこだわった

先の沖縄の基地問題での社民党の連立離脱劇は、身勝手な男に三行半(みくだりはん)を突き付けた女の物語のようだった。今回も身勝手な男にかわりはないが、未練がましい女の側も、相当に計算高くしたたかである

民主党と国民新党の確認項目にはこうあった。「これまでの信頼関係を再確認し、信義に基づき誠実にこれを実行する」。新派大悲劇ばりの、きれいな契りの言葉の裏でだましあう、永田町の田舎芝居を見る思いだ。