野球賭博認めた！武蔵川理事長、厳重注意の大甘処分

数人の力士の間で野球賭博が行われたことを認めた武蔵川理事長

　日本相撲協会は１１日、複数の力士が野球賭博を行っていたことを発表した。重大な違法行為にも個人情報保護の観点で個人名を隠す不透明さに加え、処罰も厳重注意という大甘となった。さらに武蔵川理事長（６２）＝元横綱・三重ノ海＝がこの日、全親方、関取を対象にした講習会で１４日までに賭博への関与を名乗り出れば厳重注意で済ませる異例の訓示を行ったことも発覚。角界のぬるま湯体質をさらけ出す結果となった。

　疑惑ではない。土俵を覆った野球賭博の黒い霧は事実だった。国技館で会見した生活指導部の陸奥部長（元大関・霧島）によると、関与した力士は数人で師匠を通じ申告し発覚した。いずれも一部週刊誌で野球賭博疑惑が報じられた大関・琴光喜らとは別件で、琴光喜を含め記事で掲載された力士は含まれていないという。

　協会は個人情報保護の観点から力士のしこ名、地位に始まり賭け金、時期など内容に関する事実関係も一切、明かさなかった。処分についても暴力団とのかかわりが確認できなかったことに加え、自らの行為を反省し自発的に申し出たことで情状として酌み厳重注意を下したという。関与した力士は、大関候補と期待されている元三役力士で数日前に協会に呼ばれ事情聴取を受けており、この関取と親しい２～３人の関取も対象となった可能性が高い。

多くの力士、親方が出席し講習会が行われた

　木瀬親方（元幕内・肥後ノ海）らが暴力団幹部へチケットを手配していた疑惑に続く重大な不祥事。連続する激震へ協会トップも黙っていなかった。講習会後に武蔵川理事長が異例の訓示を行った。全親方、全関取を前に野球賭博へ関与した力士が名乗り出たことを発表した上で「違法な賭博にかかわった覚えがある者は自ら名乗り出てほしい」と呼びかけたという。期限を週明けの１４日に区切り「それまでに申告すれば厳重注意」で納めることを通達。ただし、期限以降に発覚した場合は「厳正に対応する」と明言し、解雇も辞さない方針を明言した。

　理事長は訓示の中で協会の存亡を訴えたという。「自分たちはあと２年で退職するが、協会が将来も続いていくためにもこれからを支える君たちが自覚を持って行動してほしい。協会がなくなるようなことがあっては大変なんだ」。相次ぐ不祥事は公益法人の制度改革で財団法人の資格取り消しへ発展する可能性がある。国技の将来へトップ自らが警鐘を鳴らした。

　警視庁は週明けにも同協会から報告を受け、必要と判断した力士を事情聴取する方針で、刑事事件に発展する可能性がある。今回、協会は自らが賭博へ関与した力士を公表することで膿（うみ）を出し切ったつもりかもしれない。ただ、違法行為への処分が厳重注意では世論の反発も高く逆に大甘体質をさらけ出した結果となった。

　◆野球賭博とは　プロ野球や高校野球などの勝敗や順位を予想し金銭をかける。結果の予想がしやすい場合もあるため、ハンデをつけるのが一般的。常習性があれば、刑法第２３章・賭博及び富くじに関する罪の第１８６条が適用され、「３年以下の懲役」。常習性なしとされれば同１８５条で「５０万円以下の罰金又は科料」。

　◆角界の過去の主な賭博事件

　▽１９７３年１０月　龍虎が暴力団の総長らとマージャン賭博をした疑いで東京地検に書類送検。師匠の花籠親方（元幕内・大ノ海）から厳重注意。

　▽９５年１月２８日　二所ノ関親方（元関脇・金剛）が、都内のマージャン店で現行犯逮捕された。相手は知人に貿易商と紹介された暴力団員だったが面識、交際はなく悪質でないと判断。６か月間２０％減俸、審判委員解任、２月１５日から春場所千秋楽の３月２６日まで謹慎処分。