メジャー団体と呼ばれるための必要条件(後編)

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須山浩継(すやまひろつぐ)
1963年広島県出身。大学卒業後、5年間のサラリーマン生活の後に「趣味で食えたらラッキー」と、プロレス&格闘技を主に取材対象とするフリーライターに。 プロレスに関してはもっぱらインディー系と女子が専門分野で、メジャー団体や選手の取材経験は非常に少ない特殊マスコミ。 現在はサムライTVの怪番組「インディーのお仕事」の企画構成、大日本プロレス中継の解説などを担当。

メジャー団体と呼ばれるための必要条件(後編)

2010年06月12日アダルト

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リングというのはプロレスに不可欠なものですが、これがなかなか厄介な代物です。運搬にはトラック1台が必要ですし、組み立てたり撤収するにも結構な人手を要します。そんなこともあって、プロレス界では長くリングの組み立てや撤収は、リング屋さんと通称される専門業者が請け負っていました。

しかし数人の人手を要するリング屋さんの費用というのは、プロレス団体にとっては少なからぬ負担になります。そこで比較的早くから、若手選手がリングの組み立てや撤収を手伝うようになったのが女子プロレス界です。力自慢のプロレスラーがリングの作業を行えば、リング屋さんの人でも少なくて済むし経費の節減にもなります。やがて、そんな合理的精神はインディー団体の発生とともに男子にも広がり、今では選手がリングを組み立てたり撤収したりするのは、女子やインディーでは当たり前の光景になりました。

私はプロレスラーたる者、自分たちが闘うリングの構造くらいは、知っておくべきだと考えています。ですから若い選手がリングを組み立てたり分解したりできるようになることは、決して悪いことではないと思っています。しかしその一方で、せめて大会当日くらいは若手や新人選手といえども、選手は試合に専念してほしいという思いもあります。とりわけ激しい試合の後に、選手が重労働であるリングの撤収をしている姿を見ると、そういう思いは強くなります。

このあたりは団体の経営者も悩みどころだと思われます。ましてや今は、メジャーと呼ばれている団体でさえも、経営は決して楽ではありません。とりわけお金の出入りを把握している立場の人間ならば、リング屋さんにかける経費が無くなればと考えたとが絶対にあるはずです。それでも選手には試合に専念してもらうために、リング屋さんに業務を委託し続ける。もしかしたら非合理的なやせ我慢かもしれませんが、そのやせ我慢こそがメジャーと呼ばれる団体のプライドでもあるのではないでしょうか。

昨今ではリングが常設された会場も多くなってきました。興行の大半をそのようなリング常設会場で行う団体の多くは、ほぼ全てがインディー団体です。ですから選手がリングの組み立てや撤収をしないことが、必ずしもメジャー団体と呼ばれるための十分条件ではありません。

しかしながら今も地方巡業を行いながら、あくまでリングのことはリング屋さんに任せる。私はそのやせ我慢とプライドは、メジャー団体と呼ばれるための必要条件の一つではあると思うのです。


※こちらとは別に「須山浩継伯爵の身勝手日記」というブログの方もご愛読頂ければ幸いです。またhirotsugukunというアカウントでツイッターもやっております

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