ホセ・ルイス・ロドリゲス・サパテロ首相率いるスペイン政府は緊縮財政措置を打ち出したが、実行しようとすると多くの傷害にぶち当たる〔AFPBB News〕
悲しいかな、悲観論者が疑問を呈するのも無理はない。スペインの10%ルールも、医療、教育、高齢者介護などの分野には適用されず、州政府が新たなポストを創設しようとする際の歯止めにもならない。
さらに言えば、グラナドス氏のような有力者は、いざ現状を打破しようとすると、不思議なまでに無力になる。スペインの公務員は基本的に、解雇することができないからだ。
マドリード州政府は先日、125台ある公用車のうち48台を廃車にし、残るアウディやプジョーのリムジンを中型車に換えると発表した。
「矛盾しているのは、公用車の運転手を誰一人解雇できないことだ」と、グラナドス氏はため息を漏らす。政府の運転手を新しい職務に就かせることは可能だが、それには本人の同意が必要になる(それでもグラナドス氏は有期雇用契約の運転手23人は解雇する予定だ)。
大臣は職員を社会福祉課から健康保険課に異動させたり、日勤から夜勤にシフトを変更したりすることができない。職員の欠勤率は平均18%にも上るのに、その乱用を阻む手立てもほとんどない。公務員は、医師の診断書がなくても3日間の病欠が認められているのだ。
また大臣は、一流の外科医を採用したくても、ボーナスを提示することができない。外科医の賃金は同一でなければならず、そもそも医師の給料は病院の清掃人を含む全職員の賃金レートと連動しているからだ。
保守派率いる州政府は、マドリードの2つの公共テレビ局を含む一部の公共機関を民営化したいと考えているかもしれない。だが労使協定の下で、新たに民間化された企業から解雇を言い渡された職員は、再び公務員として雇い入れなければならない決まりになっている。マドリード州から給料を受け取っている3242人の労働組合代表者が、こうした協定の遵守に目を光らせているのである。
スペインはしばしば、欧州の経済大国の中でも最も労働市場改革を必要としている国として取り上げられる。中央政府は何カ月も、民間企業が正規従業員を解雇する際に高額な費用を負担しなければならない法律を修正しようと苦闘してきた。
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