かつては形だけの監視機関だった検察審査会だが、2回の「起訴相当」で強制起訴できるようになった。つまり検察は、たとえ検察首脳が抑制しても、「市民の正義感」に基づく審査会によって、捜査現場が望む起訴を、楽々と獲得できることになった。
「起訴相当」は、審査員11人中8人の同意を必要とする。いっけん、それはかなり難しいように思える。しかし、実際に素人の審査員の論議をリードするのは、法務官僚で構成される事務局と、検察との親密な関係を維持したい補助弁護士である。
小沢氏の「起訴相当」を議決した東京第五検察審査会の補助弁護士は、ヤメ検で元裁判官の米澤敏雄弁護士だった。さらに、検察審査会に提供される検察の資料や検事の捜査説明も「検察寄りの結論」を生む。
「話したくないなら話さなくていい。しかし検察審査会が2度、起訴相当を出したら小沢さんは強制起訴される。そんな道もあるんだからな!」
最後に石川元秘書を取り調べたのは直告1班の吉田正喜副部長(当時)は、言質を取らせまいとする石川元秘書に、こう啖呵を切ったという。
こうした事情を考えると、2度の「不起訴処分」を受けた検察審査会が、もう一度「起訴相当」という議決を出す可能性は高い。そうなれば強制起訴となる。検察は、「"お白州"に、小沢一郎を引っ張り出したい」という念願を叶えることができるのだ。
背後にある「検事総長人事」
最終的に検察審査会で起訴に持ち込めるという余裕が、5月末に結論を出すという短期間での「不起訴処分」につながった。本来、4月27日に「起訴相当」が出てから、特捜部は3ヵ月以内に起訴か不起訴かの処理をすればいい。普通なら、再捜査に時間をかけたというイメージを作るためにも、ギリギリまで待って処分を下すだろう。
ところが今回は、1ヵ月のスピード決着だ。5月末というのは「参院選に影響を与えず、政治的中立性を保つため」と、説明された。半分事実だが、そこには6月17日に東京高検検事長の63歳定年を迎える大林検事長を、その前に検事総長にしたいという樋渡検事総長の思惑があった。検事総長定年は65歳だからである。
これまでも指摘されているが、昨年3月に始まった「小沢捜査」には、検事総長人事の内閣同意制、検事正の公選制、取り調べを録音録画する可視化など、多くの改革を突き付ける小沢民主党への牽制があった。同時に、「角栄・金丸流」の利権政治を継承する小沢氏の政治姿勢への反発もあった。
こう考えれば、1年以上の長きに渡った「小沢捜査」は、検察の都合によって始まり、「一体の原則」を崩さず、「法務・検察」という組織に政治を介入させることもなく、最後には「小沢起訴」に持ち込むという、検察の望む形で決着する。
最後の聖域として恐れられ、強大な権力を手放さず、法改正も有効活用する検察――批判をいくら浴びようと、いまだ唯我独尊の組織であり続けている。
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