春になって、女性雑誌もいっせいにリニューアルしたり、新しいコンセプトを打ち出したりしている。電車に乗って雑誌の中づり広告をぼんやりながめるのは楽しいものだが、今年はなんだか息がつまりそうになる。
「35歳からが本当にカワイイ!」「40代はもっと若くなれる!」など、各世代が「私だってまだまだかわいい」「いや、私のほうがもっと」と若さ、かわいらしさを競い合い、読者にもそれを求めているように私には見えるのだ。
50代以上の女性に「あなたもオンナの現役」と訴えかける雑誌まである。
そういった雑誌の広告には、あたりまえのことかもしれないが、どう見ても20代という感じの若々しい女性モデルが写っている。しかし聞いたところによると、その中には30代後半とか40代、中には40代後半といった人もいるそうだ。いくら写真加工の技術が進んだとはいえ、その年齢の時の自分とのあまりの“格差”に、なんだか気持ちが暗くなってくる。
世の中の女性たちは、どうなのだろう。従来の常識からは考えられないほど若々しいモデルを見たり、女性雑誌から「あなたももっと若く、かわいくなれますよ」と言われたりすると、「よーし、自分も」とやる気や元気がみなぎってくるのだろうか。きっと私のように、「もうトシだから、というのは言い訳にならないのか……」と逆に疲労感やむなしさを感じてしまう人もいるのではないか。
私は今年、めでたく50歳を迎えるのだが、この年齢までなんとかたどり着き、仕事も続けてきたのだから、そろそろあまりめんどうくさいことは考えずに、好きなものを食べたり、ゆるめの洋服を着たりして暮らしたい、と思う。
「半世紀も生きてきてごくろうさん」と〓自分へのごほうび〓として、気楽でリラックスした生活を与えたい、と思うのだ。
ところが、女性雑誌はそうやって気を抜こうとたくらむ私を、「いいや、まだまだ」と戒めようとしているようだ。
そんなの気にすることない、といくら思っても、表紙のモデルに「この人、私と同世代? 私の娘みたい……」とあせってしまう自分もいる。
診察室にやって来る女性たちの中にも、異常な若さや異常な向上心などと自分とを比べて、「あれが世間並み。私がダメなんだ」と落ち込む人が少なくない。
「そうじゃない、私たちこそフツウ」というメッセージを、どうやって伝えていけばよいのだろう。
毎日新聞 2010年4月6日 地方版