高嶺善伸氏(県議会議長、県民大会共同代表)
稲嶺進氏(名護市長)
島袋俊夫氏(うるま市長)
伊波洋一氏(宜野湾市長)
田岡俊次氏(軍事評論家)
米軍普天間飛行場の県外、国外移設を求める25日の県民大会を前に、琉球新報社と沖縄テレビ放送、ラジオ沖縄が14日開いた緊急フォーラムでは、昨年夏の衆院選前に「最低でも県外」と訴えた鳩山由紀夫首相に公約の履行を強く求める意見が相次いだ。県内候補地が次々と浮上する半面、公約にもかかわらず県外や国外移設をまともに検討していないとして平野博文官房長官らに強い批判があり、政府や大手メディアの「抑止力信仰」への疑問も示された。フロアから書面で50を超える質問があり、関心の高さをうかがわせた。基調講演とパネル討論の模様を紹介する。フロアからの意見集約はラジオ沖縄の屋良悦子アナウンサーが担当した。
沖縄の海兵隊は、海外で紛争や暴動、天災があった際に在留米国人を避難させるためにいる部隊だ。数日間、飛行場や港を占領して、そこへ米国人を連れてきて輸送機で連れて逃げる。沖縄や日本を守るためにいるのではない。
80、90年代にかけて、米国が(経済的に)日本に追い越されて反日感情が強かったころ、米議会では日本に海兵隊を置いて日本を守る意味があるのか、という質問がよく出た。そのたびに国防当局者は「日本を守っているのではない。西太平洋、インド洋全域に派遣するために沖縄に待機させている」と正確な答弁をしていた。海兵隊内からも堂々と沖縄撤退論があった。
普天間問題については、鳩山由紀夫首相が公約した県外移設で、米国にのませるためには米軍の作戦効率が良くなければならない。
私の提案は、海上自衛隊の大村基地(長崎)に普天間のヘリを移し、陸自の相浦駐屯地(同)にキャンプ・シュワブの歩兵連隊を入れ、相浦の陸自を沖縄のシュワブに回してくる。相浦の陸自は南西諸島防衛のために編成した部隊。本来沖縄を守るための部隊が佐世保にいて、佐世保の船に乗るべき部隊が沖縄にいるんだから、逆に入れ替えれば良い。
1月に鳩山首相や平野博文官房長官に説明したが、どうもよく分からないようだ。2月で完全に腹が決まっていて、県内移設もしくは徳之島案で固まっていた。徳之島にヘリ、キャンプ・シュワブ陸上に歩兵を移す案だが、消防車と消防隊員を別に置くようなもので、話にならない。
米国が(代替施設が)いつできるかと気にする理由は、MV22垂直離着陸輸送機(オスプレイ)を2013年に沖縄に持ってくるからだ。あまりに新機軸な飛行機で事故が連続した。今は危険ではないかもしれないが、不安感がある。
騒音も激しい。下に向かってものすごい噴気が出る。最初のころ、テスト中に揚陸艦の甲板に止めてアイドリングで回していたら、甲板が溶けてへこんだ。あれを普天間に持ってこようとしたら一大事だ。普天間を継続使用することはMV22が使うということになる。
米国は、早く移設を進めてもらわないと困るから、日本政府に地元の了解はあるのかと当然聞く。ところが地元了解を取り付けていない。沖縄と徳之島と米軍の三つが全部了解しないといけない。民主政権は、とんでもない難しい状況に自分を追い込んだ。何もできなくて総辞職するだろう。
政局としては鳩山内閣総辞職で一応は片が付くが、民主政権は続く。その後普天間はどうするか。
継続使用はMV22が来るから駄目。辺野古は地元の抵抗があるから難しい。私の提案する相浦か、嘉手納統合が浮上する可能性がある。
司会 鳩山由紀夫首相は昨年の衆院選で「最低でも県外」と公約した。最近では県内移設が検討されているが、現状認識は。
伊波 在沖米軍基地は米国本土を含めて分散して縮小・撤去するべきだ。米軍の基準でも普天間は欠陥飛行場だ。沖縄や日本の中ではなく、世界的な基地の見直し、米軍再編の中で解決するべきだ。グアムを含めた米国内部に戻す思いで取り組んでいる。
稲嶺 名護の市民投票から14年を迎えようとしている。市民は移設問題に翻弄(ほんろう)されている。今に至っても鳩山首相の考えは定まらない。県民は蚊帳の外に置かれ、市民の心痛は計り知れない。国に対して、辺野古、県内移設では駄目だとしっかり伝えたい。
島袋 うるま市には自衛隊を含め11の基地があるが、民間主導型の経済自立を図る立場で、基地の整理縮小を掲げてきた。昨年の衆院選で新政権が掲げた「最低でも県外」を踏まえ、わたしも県外・国外移設を主張する。与勝海上沖の新基地建設はまかりならん。
高嶺 県議会は歴史的な決議をした。世界一危険な米国の基地を閉鎖・撤去、国外・県外移設を求める政党会派を超えた県民の声を具現化した。「最低でも県外」とした民主党公約があるならこれを機に県外・国外移設を求めようではないか。
司会 辺野古沿岸案とキャンプ・シュワブ陸上案の両方に反対する理由は。市議会には異論もあるが、どのように民意をまとめるか。
稲嶺 沿岸案は、現在の普天間飛行場よりも戦略的に規模や機能が強化される計画だ。また、ジュゴンやサンゴなど希少種がいる生物多様性に富むきれいな海の埋め立てが前提の計画で、環境アセスメントでも知事が指摘するように、辺野古の海への移設はもともと駄目な計画だと言える。陸上案は、世界一危険と言われる普天間をそのまま辺野古に持ち込むことにほかならない。その受け入れは全くあり得ない。市議会で異論もあるが、異論を主張する皆さんも「県外移設がベスト」だとしている。地元3区や多くの市民は県外がベストとしている。今回は最善の県外を実現するまたとないチャンスだと思っており、その思いは市民と共有できる。
司会 島袋市長には寝耳に水の勝連沖案だったと思う。うるま市では反発が強まり、住民大会も開かれたが、反対する理由を詳しく聞きたい。
島袋 うるま市の豊かな自然環境を観光資源として生かしたい。私は基地は整理縮小されるべきだという基本スタンスで市長に就任した。過去には旧石川地区、具志川地区、与勝地区で米軍機墜落などさまざまな事件事故があった。昨年の原子力潜水艦ヒューストンの放射能漏れなど、海洋資源を生かしていくための阻害要因ばかりが続いている。基地と隣り合わせの生活はこれ以上ごめんだ。基地から脱却し、自立経済を確立する。
勝連案では五つの漁協組合が生活の糧を失う。市民団体の反対集会もあり、さまざまな団体から「移設ノー」という言葉が相次いでいる。その先頭に立って、公約実現のため頑張りたい。
司会 伊波市長はアメリカの文書を独自に入手し、普天間飛行場の移設はいらないと主張しているが、趣旨を詳しく聞きたい。
伊波 今回の再編協議の中で2005年10月と06年5月の二つの合意は似ているようで全く違う。その実態が日本でほとんど報じられていない。アメリカではグアム統合計画がつくられ、中部の市町村長でグアムに調査行った時も、海兵隊のヘリ部隊や航空ヘリ部隊が(グアムに)来ることを確認している。昨年11月の海兵隊グアム移転に関する環境影響評価書(アセスメント)は、沖縄の普天間も含めてほとんどの実戦部隊がグアムに移ることになっている。当然実戦部隊が移るところにヘリも行き、新たな拠点が沖縄からグアムに移ることが明らか。そのことが全く示されないで日本に対して米国が迫っているという単なる基地移転の議論だけが示されているのは大変な問題だ。
司会 高嶺議長は全国議長会に働き掛けて議論していると思うが、本土で基地の受け入れや安全保障について議論にならないことをどう感じているか。
高嶺 沖縄は廃藩置県以来差別の歴史がある。全国の議長の認識を新たにするため、本や新聞を送ったり手紙を書いたりしている。東国原宮崎県知事にも聞いたが、政府から移設の打診はなかったという。
全国議長会長の計らいで移設協議が決着するまで、国外移設について議論することになった。国外移設の見通しができたら暫定的な議論ができると、全国議長会でやっと共通認識ができた。25日の県民大会が成功し、その声が全国津々浦々に知れ渡ると、沖縄に対する認識が足りない部分が改められる。
阿佐慶 SACO合意以来、14年間も普天間返還が進展しないのは、そもそも移設条件を付けた点に問題があったのではないか。
田岡 今でなら、日米安保条約に基地提供義務があるので、基地を動かそうとすると米国と協議しないといけない。そういうことなしに強制的に(米軍に)出ろというのであれば安保条約を終了すれば、全部出ていく。しかし、同時に米国と敵対関係になる。
潮平 フロアから今声が上がったのは、基地撤去を言ったら、米国とけんかする、条約改正がなくなると決めつけるのではなく、根本的にどういうふうな日米関係をつくったらいいのか、ということだと思う。
田岡 安保条約を残しながら移設させようというのなら交渉でやるしかない。
司会 「基地がなくなって困るのは沖縄だ」「海兵隊の抑止力は必要だ」と声高に語られる部分がある。メディアの報道含め、本土側の沖縄に対する認識について。
田岡 防衛省やメディアの人と話しても、海兵隊は抑止力として沖縄にいることが必要なんだという擦り込みが非常に強い。結局は中国の軍拡の脅威が染みついている。だが現実には中国と台湾の一体化政策を、米国も後押ししている。今や米国は戦略協議も日本でなく中国とやっている。日本がそれをよく分からずに、反中であれば米国が喜ぶと思って行動すれば、逆に邪魔者扱いされてしまうのではないか。
司会 基調講演などの田岡氏の意見をどう思うか。
高嶺 基地がなくなると困るのではないかと、実際に全国議長会でも言われた。県内総生産の5%程度しか基地に依存していないと説明して、ようやく理解する。基地の負担も認識の差がある。今の地位協定ではとても海兵隊は受け入れられないと言うが、では沖縄に置いておけばいいのか。一つ一つ誤解を解きながら、知らせていかないと分からない。
稲嶺 メディアの報道の在り方について、本土の新聞をみても現象ばかりを追い掛け、本質論に迫っていない。本当に海兵隊が抑止力になるのか、必要なのかもしっかりと国民に知らせるべきではないか。
司会 本土と沖縄の温度差をどう埋め合わせていけばいいか。
島袋 新政権が誕生した際に、日米地位協定を人権対等協定に改めるべきだと主張した。人権が無視された状態で沖縄だけで常に事件事故が起きる。沖縄だけの問題という意識が本土にあるのではないか。文化人、経済人にも多くの沖縄ファンがいる。彼らや県民がスピーカーになり、全国民に訴えていくしかない。
伊波 温度差というのは現実に負担を感じてきた沖縄と本土の歴史の違いから生まれてくる。鳩山政権の各閣僚が気軽に発する言葉が沖縄の感情を害する。移設問題では厄介者が来るという認識があるが、本当の意味で沖縄が日常的に感じている基地の重圧を、理解しきれていない。
−なぜ他府県が駄目なのか政府は説明していない。地元説得が困難というなら、沖縄の反対は無視するのかを答えさせてほしい。その結果国内が駄目なら国外という答えしか出ないのではないか。(西原町、65歳)
−田岡氏が首相に提案した佐世保案は、どのような経緯で駄目になったのか。(那覇市、56歳)
−抑止力とは何かの論議がない。イラクやアフガニスタンでの戦争に参加する米軍兵がなぜ沖縄に駐留しなければならないのか。米国の非をたださず、ただ従うことが国益なのか。(宜野湾市、50歳)
田岡 民主党が県外を当たった形跡がない。初めからシュワブ陸上案に固まっていた印象だ。米国がのむ案は佐世保に集めることだと1月に提案したが、平野官房長官は徳之島案に凝り固まっている印象を受けた。しかし政府の今の案は駄目になる。佐世保案が復活してくる可能性もある。北沢防衛相はどこでも反対があるというが、沖縄の抵抗が最も激しい。
うるま市の男性 田岡さんは以前、テレビで普天間が辺野古に移ったら普天間は喜んだらいいと言ったが、覚えているか。沖縄の人間はほかに移して万歳という気持ちではない。これ以上の負担は耐えられない。本土から見ると沖縄に置いておけば万歳だ。そういう心が基地問題を難しくして縮小を妨げている。日本人の中に差別があると思う。
田岡 普天間は非常に危険で、辺野古の方がまだましだと前から言っている。普天間も沖縄だけが問題を抱えていると思うから、差別と思うのではないか。
宜野湾市の男性 普天間飛行場は危険性除去が緊急の課題だが、日米両政府の交渉の中でどういう状態になっているのか。42年前、九州大学の構内に米国のジェット機が落ちたのを目の当たりにした。九大の自治は守られていた。2004年に沖国大に米軍ヘリが落ちたとき、市長、学長、警察も現場に入れない状況だった。今もって、米国は沖縄に占領下の意識があるのではないか。普天間移設も結局、日本にたらい回ししている状況にある。
伊波 沖国大事故は地位協定の問題点を明らかにした。もう一つ、事故後、日米間は安全な飛行ということで、場周経路と進入経路を検討し2年間かけてできた。ところが、実際には普天間のヘリはほとんどが守っていなかった。市として防衛局へ守らせるよう申し入れたが、守っていなかった。09年度予算に監視カメラと飛行機が飛ぶ経路を調べる装置を計上し、1月から稼働すると米軍の高度も高くなり、飛び方も変わった。監視したり、日本政府がはっきり言えば改善できるのは明らか。
那覇市の女性 販売の仕事をしているので土日、祭日に休めない。高嶺議長にお願いしたい。県民大会に行けない人でも、県内移設反対の人がたくさんいる。25日に会場に行けない主婦などが、黄色いリボンなどを付けるとかできたらいい。沖縄の反対の思いを各地で表現できる取り組みをしてほしい。
フロア 全く同感だ。孫の世代までを決める千載一遇のチャンス。ファクスでもメールでも意思表示できる。検討してほしい。それを総理や官房長官にぶつけてほしい。
司会 最後に伝えたいこと、強調したいことは何か。
伊波 米軍再編で明確に在沖海兵隊はグアムに移る。日本国内、国会で説明がない。6千億円でグアムに新基地を造る一方で、なぜ国内でも基地を造るのか説明すべきだ。
稲嶺 日米地位協定など沖縄問題に全国の知事は関心を示さない。沖縄が置き去りにされることを危惧(きぐ)する。沖縄も日本を構成する一部。小指の痛みは全身の痛みと分かってほしい。
島袋 うるま市は陸海空どこも基地だらけ。制限区域の合間を縫って生きている。新基地建設が浮上した地域は、政府が認めた観光、海洋振興の場だ。これ以上の巨大軍事基地化は認められない。
田岡 沖縄戦で多くの戦死者を出し、戦後27年間も米軍の占領下にあった。日本全体で後世の御高配を考えるべきだ。私も県外移設を求める。佐世保の揚陸艦のそばが一番妥当だ。
高嶺 今回の移設は普天間の危険性除去にある。普天間を閉鎖、返還するため県民大会を成功させたい。県内移設断念を突き付ける最後のチャンスだ。沖縄の歴史を皆でつくりたい。
司会 県外は駄目だから沖縄県内に−と思考を停止するのではなく、県内・国内が駄目なら国外へ、移設なしの撤去へという議論が巻き起こってほしい。このフォーラムがより根本的に日本の安全保障を考えるきっかけとなってほしい。
次の記事:普天間緊急フォーラム 危険除...>> 今日の記事一覧
今月の記事一覧
最近の人気記事
Photo History
琉球新報掲載写真でつづるオキナワの歴史
しんぽう囲碁サロン
世界中の囲碁ファン会員と対局
ライブカメラ
琉球新報泉崎ビルに設置したライブカメラ
りゅうちゃん商店
ウェブサイトからも購入可能に!
ちょBit
新報パーソナルアド
ウイークリー1
沖縄県内・県外就職・求人情報ニュースサイト
琉球新報の本
琉球新報の本がネットでも購入できます
週刊レキオ
生活情報満載の副読紙。毎週木曜お届け
新報カルチャーセンター
130講座 学ぶ楽しさがいっぱい
新報ローカルブログ
ミニコミ紙連動のローカル情報
〒900-8525 沖縄県那覇市天久905
紙面・記事へのお問い合わせは、読者相談室までどうぞ。
電話098(865)5656 (土日祝日をのぞく平日午前10時〜午後4時)
©The Ryukyu Shimpo
本ウェブサイト内に掲載の記事・写真の無断転用は一切禁じます。すべての著作権は琉球新報社または情報提供者にあります。