2010年6月11日0時17分
中国の自動車市場が昨年、世界最大になり、今年も成長が続いている。昨年は米国の敵失もあっての世界一だったが、今年は米国の過去最高記録1781万台に迫る勢いだ。
この急成長の傍らで、興味深い現象が起きている。簡易の電気自動車や二輪車、三輪車など多様な乗り物が生まれ、それぞれ販売を伸ばしているのだ。高度経済成長を背景に所得が上昇し、多くの人々が自動車を購入できるようになったので、願望を一気に爆発させている。自動車を購入できるまでの所得がない人も、移動の自由をもたらしてくれる安く便利な乗り物を飛びつくように買い求めている。
中でも電動自転車が注目だ。制限時速は20キロだが、ナンバー登録も免許も不要。価格も3万円前後で求めやすい。日本の電動アシスト自転車と違い、こがなくていいので、気軽に利用できる乗り物として重宝されている。スピードの出る電動バイクを加えた電動二輪車の販売規模は、すでに年間2千万台に達したといわれる。
とはいえ、これら電動自転車の技術レベルは高くない。静かな田舎道ならいいが、交通量の激しい道路で自動車と衝突した場合の危険は大きい。それでも爆発的に売れるのは、社会全体が自動車を持ち始めた時期に、マイカーを持つ喜びを与えてくれるからだろう。
ただ、中国政府はこの現象を快く思っていない。速度制限や安全基準を厳しくし、登録管理を強化する方向に動く。業界関係者も、所得の上昇とともに自動車へ乗り換えが進むので、いずれ市場から消え去ると見る向きが強い。
だが、2千万台の市場は巨大だ。電動自転車が新しい乗り物に発展し、化ける可能性は否定できない。(窯)
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「経済気象台」は、第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるものです。