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菅首相の経済政策

 「これ以上質問を続けると(政権への失望で)市場が暗くなる」。1月の参院予算委で自民党の林芳正氏にここまで言い切られたのは、財務相だった菅直人首相である▼政権の目玉施策子ども手当の経済効果を聞かれ、しどろもどろになった。悔し紛れにノーベル賞学者サミュエルソン氏の著書「経済学」を購入したが、「10ページだけ読んだ」という。財務相が経済学者である必要はないが、首相が経済通でなかったのは確かだ▼それが今、偉大な経済学者ケインズの系統ケインジアンに比肩するかのように、「カンジアン」経済政策を掲げる。財政出動に頼る第1の道や構造改革による第2の道をとらず、第3の道で日本経済の立て直しを図る▼介護や医療などの分野を充実することで、強い経済、財政、社会保障を一体として実現するそうだ。2月に内閣府参与に任命された小野善康大阪大教授らと勉強会を重ね、この結論にたどり着いた▼教授は、需要不足が起きた場合の対策は、生産力の拡大ではなく労働資源の活用で、そのための資金は所得のある人や事業を継続する企業から集めるしかない、と説く(「不況のメカニズム」中央公論新社)▼ごもっともだが、第1の道を借金、第2をリストラと読み替えると第3は増税となる。どの道もつらい。「増税しても使い道を間違わなければ成長できる」−首相の言葉は、林氏を論破できた時点で信じよう。

[京都新聞 2010年06月10日掲載]

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