対米追従から対等な関係へ
外交・安保政策は、鳩山新政権の「政権交代効果」を確認する「試金石」と同時に「アキレスけん」ともされる。
焦点は日米同盟、アフガニスタン支援、在日米軍再編、日米地位協定、核密約問題だ。
自民党政権と新政権の違いは「対米追従・アジア軽視路線」から「対等な日米関係、アジア重視への転換」と端的に評される。
戦争責任など歴史認識のずれや小泉純一郎元首相の靖国神社参拝問題などから反日・対日感情を悪化させた経験を持つ中国や韓国からは、新政権のアジア重視への転換に期待も高まっている。
■軍事から民事貢献転換を
だが、米国の知日派識者を中心に「日本の米国離れは、国際社会での日本の孤立を招く」と警告している。
「恫喝(どうかつ)」ともとれる指摘が相次ぎ、鳩山由紀夫新首相も対米関係悪化を招きかねない、と沈静化に躍起だ。
民間知日派からの「恫喝」で、ひるむ新政権だけに対等な日米同盟関係の実現は「言葉倒れ」にもなりかねないとの懸念もある。
同盟優先、対米追従姿勢の転換が頓挫すれば、連立政権で口頭合意された「海上自衛隊によるインド洋給油活動からの撤退」も言葉倒れに終わりかねない。
確かに米国防総省は給油活動の継続を強く主張し、知日派の代表とされるジョセフ・ナイ米ハーバード大名誉教授は「給油活動は日本のアフガン支援の象徴。撤退なら代案を」と迫っている。
一方で、貢献策として「文民貢献」での代替策も助言している。
政権交代を機に軍事的貢献から民事・平和的貢献策への転換をどう図るか。これも新政権の公約実現能力の試金石となる。
その公約実現能力を問う象徴的な問題が普天間飛行場移設問題だ。
民主党は「沖縄ビジョン(2008)」で「普天間は県外移設を目指す」と公約した。だが連立合意では、県外・国外移設について明記を避け、玉虫色の合意とした。
「県外移設」の強行が「日米同盟の基盤を揺るがし、同盟関係にひびを入れかねない」との懸念からだ。
岡田克也外相は17日の就任会見で、県外・国外移設について「目指す姿勢は変わらない」と明言したが、「こちらの望む結論だけを言っていては交渉にならない」と、依然歯切れは悪い。
普天間移設とセットにされた在沖米海兵隊8000人とその家族9000人のグアム移転、その法的根拠となるグアム移転協定の「見直し」も連立政権の公約の一つだが、県外移設と同様に県民にとっては「腰砕け」が心配な状況だ。
内容の不平等性から対米追従外交の象徴とされる「日米地位協定」の抜本的見直しも、民主党「沖縄ビジョン」の公約だ。
■国内法改革も改定の鍵
連立3党は(1)基地外居住の米軍関係者の外国人登録の適用(2)基地外で発生した犯罪は、公務中でも日本が第1次裁判権を行使、原則日本側が被疑者拘禁(3)米軍による環境被害の原状回復義務化―などの改定案をまとめている。
自白強要など非人道的な取り調べや代用監獄問題など前近代的とされる日本の刑事制度改革が、地位協定改定の鍵とも指摘される。
実現すれば、1960年の発効以来一度もない「改定」実現となる。対米追従から対等関係への転換を占う試金石として、地位協定問題も注目したい。
新政権発足と同時に具体的に動きだしたかにみえるのが核密約問題だ。
新政権は有識者による調査チームを設置し、核密約の実態把握に乗りだす。すでに17日の就任会見で、岡田外相は密約の徹底調査を外務省に求める「大臣命令」を発している。
歴代外務省幹部がすでに密約の存在は認めている。解明は時間の問題だ。
実は核密約問題の核心は、核持ち込みを認める「密約」の存在ではなく、新政権が密約が認める持ち込みを認めるか否かにある。
新政権は「核の傘」を認めながら、「核持ち込み」を拒否できるか否か。密約ではなく、公然と持ち込みを認める事態にもなりかねないとの懸念がある。
そうなれば自民党政権すら堅持した国是の「非核三原則」が瓦解する。その危険性も含め、新政権の動きを注視したい。
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