民主主義が破られ、米軍普天間飛行場が残る―。政府の意思決定は理不尽極まりなく、この国の政治の今後に大きな禍根を残すだろう。
 普天間移設問題で、鳩山由紀夫首相と岡田克也外相、北沢俊美防衛相ら関係閣僚が10日に確認する見通しの政府原案のことだ。
 名護市辺野古沿岸埋め立て案を修正し、くい打ち桟橋方式で1800メートルの滑走路を備える新基地を建設、鹿児島県徳之島には普天間ヘリ部隊の訓練移転を模索する。
 沖縄の民意は明確だ。4・25県民大会で求めた普天間飛行場の県外・国外移設だ。知事や県内41市町村長、県議会も「県外・国外」を求めている。政府の「県内」強行は民主主義への挑戦だ。
 首相は先に在沖米海兵隊の抑止力を理由に「最低でも県外」の公約を撤回した。「抑止力」の説明は根拠が乏しく県民は納得しない。
 官僚は日本の防衛に在日米軍の抑止力が不可欠だと主張するが、海兵隊そのものの抑止力が不可欠とのとらえ方には無理がある。
 「台湾有事でも尖閣防衛でも海・空の優勢がなければ海兵隊は使えない」「北朝鮮との軍事バランスは米韓合同軍が圧倒。核・ミサイルには米国の核と日米のミサイル防衛が抑止力として機能している」
 これは政府中枢で安全保障・危機管理を担った柳沢協二元内閣官房副長官補の指摘だ。
 防衛研究所長も務めた柳沢氏は海兵隊が中国や北朝鮮への抑止力になるとの考え方に異論を唱える。有事には大規模な増援部隊が投入されるので「沖縄の海兵隊なしに韓国を防衛できないと考えるのは常識的でない」とも言い切る。
 この国の官僚は、首相が誤りなき判断を下せるよう正確かつ多角的な情報を提示しているのか。
 そもそも日本周辺の軍事バランスの中で海兵隊を「不可欠な抑止力」と位置付けるか否かは、オバマ政権の政治的・戦略的判断の問題である。高みの見物を決め込むオバマ政権の対応ぶりも不可解である。
 鳩山首相は成算のない政策決定は見送るべきだ。ヘリ部隊を米国内に移駐し普天間を閉鎖状態にした上で根本的解決を模索したい。
 県内移設の強行は日米関係の汚点となろう。鳩山、オバマ両首脳は民主主義発展のため普天間の県外・国外移設、撤去を検討してほしい。米軍首脳も民意に寄り添い在沖海兵隊の撤退を決断する時だ。
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