凡語 京都新聞トップへ

上海万博が開幕

 1978年、日中平和友好条約の批准書交換のため初来日した中国の☆小平副首相は、京都の二条城を訪れた際に「中国は最良の先生、日本は立派な生徒」と説明されると、「今はそれぞれの位置が代わりました」と述べた▼謙虚な言葉通り、各地の工場などを精力的に視察。新幹線の車中では速さに驚き、「私たちが必要としているのも速く走らなければいけないということだ」と話した。帰国してすぐに決めたのが、近代化をひた走る改革開放路線である▼30年余りが過ぎた昨日、史上最大規模の上海万博が開幕した。胡錦濤国家主席が「改革開放の中で急速に発展、変化している中国を世界に示す」と強調したのは、実に興味深い▼64年の東京五輪、70年の大阪万博を経て急成長し、新幹線などのインフラを整えた日本を、☆氏は目の当たりにした。一昨年の北京五輪に続く上海万博の開催は、この軌跡をなぞる。訪日を契機にした改革開放の集大成のようにも映る▼万博の年に中国は、国内総生産(GDP)で日本を抜き、世界第2位の経済大国になる見通しだ。またもや、師弟関係が入れ替わるのかもしれない▼しかし、民主化や知的所有権をめぐり、課題も多く残っている。各国の人々と交流する万博を、克服の機会としてほしい。☆氏は「自分が遅れていることを正直に認めることに希望がある」とも語った。改革の初心忘るべからず、である。注=☆の字は「登」におおざとの文字です。

[京都新聞 2010年05月02日掲載]

各ページの記事・写真は転用を禁じます
著作権は京都新聞社ならびに一部共同通信社に帰属します
ネットワーク上の著作権について
新聞・通信社が発信する情報をご利用の皆様に(日本新聞協会)

記事に対するご意見、ご感想は
kpdesk@mb.kyoto-np.co.jp
バックナンバー
2010年6月
2010年5月
2010年4月
2010年3月