2010年6月10日 22時48分 更新:6月11日 1時43分
政府・民主党は10日開いた与野党国対委員長会談で、通常国会の会期を(1)1日延長し16、17日に衆参院予算委員会を開く(2)延長せずに16日に党首討論を行う--の2案を提案した。政府・民主党が会期延長を最大1日にとどめるのを決めたことから、公職選挙法の規定により、参院選は「6月24日公示-7月11日投開票」の日程で行われることが固まった。国民新党が求めてきた郵政改革法案の今国会成立が見送りになったことから、亀井静香金融・郵政担当相は11日未明、辞任する意向を固め政府・民主党に伝えた。ただ、民主党側が参院選後の臨時国会に同法案を再提出するとしたことから、両党は連立維持で大筋合意した。
10日昼、菅直人首相は首相官邸に樽床伸二国対委員長を呼び「今日一日努力してほしい」と同日中の決着を指示。その後、民主党は国民新党に対する姿勢を一気に強めた。
10日夕の民主、国民新党の幹事長、国対委員長会談で、民主党の枝野幸男幹事長は「郵政改革法案は会期延長しても成立は困難だ。参院選後に成立させるほうが実現性が高い」と述べ、参院選後の臨時国会に持ち越す考えを示した。同日夜に再開した幹事長、国対委員長会談では、枝野氏が郵政改革法案を臨時国会で成立させるとする覚書をかわすことを提案した。
覚書を持ち帰った国民新党は両院議員総会で協議したが紛糾。民主党は時間がかかるとみてとるや、国民新党との合意を待たず、与野党国対委員長会談を開いた。樽床氏は「与党間の調整はついていない」と前置きし、6月16日閉会案と1日延長の17日閉会案を提示した。国民新党を置き去りにする見切り発車だった。民主党幹部は「もう変更はない。後は国民新党の判断だ。離脱するならすればいい」と突き放した。
枝野氏と国民新党の自見庄三郎幹事長は10日深夜から11日未明にかけて国会内で断続的に協議。会談後、自見氏は「大筋は連立存続だ」と語り連立維持を表明。同党幹部は「亀井さんは閣僚を辞任する。連立は離脱せず、副大臣と政務官は残す」と語った。
国民新党は「連立離脱」をカードに民主党を揺さぶった。しかし、菅内閣誕生で内閣支持率と民主党支持率は急上昇。民主党にとって国民新党が持つ組織票「郵政票」は大きな魅力だったが、支持率回復でその重みは相対的に下がった。
「鳩山降ろし」に走った参院民主も今回は早期の参院選を求めた。民主党参院幹部は「9日に(国民新党の支持団体の)全国郵便局長会(全特)幹部に会い、臨時国会で必ず郵政改革法案を成立させると説明した。これで全特は民主党を支援する」と語った。別の参院幹部も「国民新党が野党になれば票はいかない」と自信をみせる。
別の民主党幹部は「参院選に勝つには国民新党が離脱してくれた方がいいという人が党内にはもう多数だからこうなった」と漏らした。国民新党は与党として存在感を維持するのか、離脱するのかを民主党に突き付けられたと言える。
亀井氏が辞任を表明したのは、連立重視の鳩山前首相-小沢一郎前幹事長の路線から、菅首相-仙谷由人官房長官ラインに移った点が大きい。菅氏と亀井氏は昨年12月、09年度2次補正予算を巡って対立した。菅氏は財政規律の観点から1次補正の執行凍結分(2・7兆円)で収める意向だったが、亀井氏が大規模な財政出動を主張し7・2兆円まで増額。最終局面では、連立与党の党首級による基本政策閣僚委員会で、20分間も口論する一幕もあった。
3月には郵政改革案を巡り、亀井氏がゆうちょ銀行の預け入れ限度額の引き上げを首相の了解なく発表。仙谷氏が「国民的な議論が尽くされていない」などと噛みついた。ゆうちょ銀行などの消費税減免の方針に対しても、菅氏が「聞いていない」と反発して激論となった。菅-仙谷ラインと亀井氏との政策対立は根深く、懸念されていた事態が政権発足早々現実となった。【大場伸也、横田愛】