米金融大手シティグループのグローバル・トランザクション・サービス(GTS)部門が勢いづいている。大手金融機関に対する政府の監視が強まるなかでも、米連邦準備理事会(FRB)を含む幾多の公的機関や企業の取引に関わるシティのGTS部門は一日3兆ドル(約276兆円)以上を取り扱う。このGTS部門はFRBの為替業務や米国パスポート申請処理、米軍によるイラク関連の契約業者への支払いなど、多岐にわたる業務に携わる。
「大きすぎてつぶせない」という立場への反感により、昨今大手銀行には政治的な逆風が吹いている。政府当局はシティグループ幹部に規模縮小の圧力をかけており、下院は、金融システム全体にとってのリスクが予想される場合には財務状況の健全な大手銀行でも解体できる政府権限を認める法案を通したばかりだ。
だがGTSが国際金融分野で果たす、配管部分ともいうべき役割はあまりに大きく、縮小するのは難しいもようだ。世界各地で外国企業、政府などの機関とまともに取引ができるサービスを提供する金融機関はシティのみ、という場所は多い。また同社GTS部門は他部門との関連があまりに深く、GTS部門を切り離すとダメージを受ける政府や企業も出てくる。
サービスの一例を挙げると、例えばヨーロッパ企業のアジア子会社が現地のシティに預金すると、ヨーロッパ本社の会計元帳に瞬時に反映されるといった具合だ。このシステムにより企業の会計部門は財務管理がしやすくなる。また、その他のさまざまな財務関連業務をGTSに委託する企業や政府機関も多い。
窮地に追い込まれていた2008年11月、パンディット最高経営責任者(CEO)を含むシティ幹部はこうした点を財務省やFRBに陳情した。GTSは100カ国以上で利用されており、シティ破綻(はたん)は米国にとって危険すぎると主張した。同社幹部によると、現在80カ国以上の政府と約60の政府系銀行がGTSを利用しているという。
政府とシティの関係者によるとパンディットCEOはケリー最高財務責任者(CFO)とともに、シティの持つ大規模な外国為替事業や政府に提供するGTSの重要な役割などのため同社にはさらなる支援が必要だ、と力説したという。結果、財務省は金融システムにおけるGTSの重要性を認識したこともあり、シティに対し初回の不良資産救済プログラム(TARP)による250億ドルの初回支援からわずか6週間で200億ドルの追加支援という措置をとった。
さらに米政府はGTSを利用するクライアントにその安全性を保証。また、昨年2月に政府がシティ株を34%取得(現在は27%)してからは特に、さまざまな米政府機関がGTSに業務を繰り返し依頼した。2008年半ば以降、米政府機関からのGTSの売り上げは2倍以上になったという。こうして政府とシティの相互依存関係はより深くなった。
昨年末シティはTARP資金のうち200億ドルを返済した。
個人向け銀行業務やクレジットカード事業で知られるシティだが、GTS部門は、親会社の機能にもますます深く食い込んでいる。GTSを通して資金を動かす顧客はGTS口座の預金残高が多く、それは同社が貸し付けその他の目的に使える資金源ともなる。GTSの資金収集能力は金融危機以降さらに重要なものとなり、今ではGTS口座の残高が同社全体の預金残高8000億ドルのうち40%を占めている。
2009年1月から9月までの期間で同社GTS部門は売り上げ全体の10%と、60億ドルの利益のうち半分近くを稼ぎ出した格好だ。