「アンダーさん居ます?」
突然メッセンジャーが立ち上がりログが表示された。
「居るよ?どうしたの?」
相手を確認するまでも無い。
現在はまってるゲーム「三国志」の仲間の祐喜だ。
こいつとの付き合いは今から3ヶ月前にさかのぼる。
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俺こと安藤大輔は悩んでいた。
高校の入学式からすでに2週間が経過してしまっていた。
親の転勤により引っ越してきた大輔は、学校に知り合いがいなかった。
新しく友人を作ろうにも回りは同じ中学の出身者同士がグループを作っており入り込めないでいた。
(まずい。このまま友人ができなければ残りの高校生活を孤独に過ごす事になる。なんとかしないと・・。)
そんなことを考えていると、気が付けば授業も終わり放課後になっていた。
部活にも入っていない大輔は他に寄るべき場所もなく早々に帰宅の準備を始めた。
そんなとき近くの席の会話がふと聞こえてきた。
「今回の仕様変更で早速レアカード引き当てたぜ」
同級生の二人が楽しそうに会話をしている。確か最初のSHRの自己紹介でゲームが好きだと話していた田中とかいったか?
「本当かよ。くそっ・・ついてるな~。俺も強い武将ほしいぜ」
(レアカード?武将?なんの話だろう)
帰宅の準備をするのをすっかり忘れ、ついつい聞き耳を立ててしまう。
どうやら彼らはインターネットゲームで「三国志」をやっているみたいだ。
ゲーム内のレアアイテムを手に入れた事を自慢していたらしい。
そこで気が付いた。
もしかしたら「三国志」をプレイすることにより彼らと仲良く会話をすることができるようになるかもしれない。
思い立ったら直ぐ行動ということで自転車にのり早々に帰宅した俺はパソコンを立ち上げ彼らの熱中しているゲームを検索した。
「三国志」というタイトルからしてかなりの数があるだろうと思っていたが、幸いなことに直ぐに見つけることができた。
そうとう人気があるらしく検索のトップに表示されゲームシステムなどの説明wikiなどもあった。
さっそくゲームに登録してチュートリアルを開始する。
たれ目の爺さんがゲームのやりかたについて色々説明してくれる。
このゲームはどうやら資源を蓄え領地を確保し他のプレイヤーと協力・敵対をして天下統一を目差すようだ。
学校で田中が言っていたレアカードとは「三国志」に登場する人物をカードにしたものらしく、人物により能力やスキルに違いがある。
当然レア度が高いカードのほうがカードとしての価値が高くて強い。
チュートリアルを終了させたあとプレゼントでカードを一枚もらえるらしく早速ブショーダスなるものを引いてみる。
メッセージが表示され一枚のカードを獲得した。
お知らせ「アンダーさんはSR関羽を獲得しました」
思わず画面を凝視してしまった。
いきなり手に入れたカードがもっとも入手難易度が高いSRだったからだ。
チュートリアルによるとカードの種類は4種類有りURとSRとRとCらしい。
右にいくほどレア度が低く弱いカードらしい。
ビギナーズラックとはいえいきなりレアを引き当てたので幸先が良いなと思いつつ次に所属する同盟先を選択する。
このゲームは個人で攻略するのは不可能。
どうしても回りの人間と協力してプレイする必要がある。
ゲームを操作して同盟リストを表示してなんとなく気になった同盟先をクリックしてみる。
「のんびり~♪」という同盟が気になり同盟説明を見てみる。
※基本まったりメインでやりたいと思います。同盟員募集!一緒に仲良くゲームできる人歓迎します。
対人がメインになるとはいえゲームであまりギスギスしたくないと思っていたので早速加入してみることに。
プロフィールにチャット部屋のアドレスがあったのでさっそく訪問してみる。
「こんにちは~」
誰も居ないかと思ったが直ぐに返事がきた。
「はじめまして。のんびりの盟主の橘祐喜です」
「あっ。どうもはじめましてアンダーです。同盟プロフ拝見してきました。宜しければ同盟に加入させて頂きたいのですが」
緊張した為一気に言い切ってしまった。
もっと話をして打ち解けてから話すべきだったか・・。
「加入希望ですね。是非よろしくお願いします。」
あっさりと加入が認められたので緊張が溶けた。
せっかくなのでもう少し会話を続けてみる。
「有難うございます。他の同盟員の人は居ないのですか?」
「他の人は社会人が多いので夜頃にいつも着ますよ~」
どうやら社会人がメインの同盟らしい。
高校生の自分と会話が合うだろうかと急に不安になってきた。
「盟主様はお仕事されているんですか?」
「僕は学生ですよ。あと盟主様と呼ばれるとくすぐったいので祐喜って呼んでください。」
学生と聞いて安心した。社会人の団体に一人だけ学生という状況は考えたくなかったからだ。
「学生なんですか。俺は今高校1年生です。祐喜は高校生?」
まだ相手との距離感が微妙にわからず前半は敬語で後半はタメ口という良くわからないことに。
「今中学2年生です。僕のほうが年下なので敬語ではなくて普通に話してもらえると嬉しいです。」
そこからはお互いに学生ということもあり学校の事や好きな漫画の話などで盛り上がり気が付けば夕飯の時間になってしまった。
「それでは晩御飯の時間になったので落ちますね」
「おう、お疲れ。またな。」
友達作りの為に始めたゲームだったが思っていたより楽しかった。
気が付けば学校で友人が出来なかったらどうしようという不安は無くなっていた。
その日は新しいおもちゃを手に入れた子供のようにドキドキしてなかなか眠りにつくことができなかった。