これは僕の個人的な考え方ですが、およそファンドマネージャーにとってマルチプル・コントラクションがおきているマーケットになんだかんだと屁理屈をつけて留まり続けることほどカッコ悪いことは無いと思います。
マルチプル・コントラクションというのはPERが下がることを指します。
PERは株価収益率の略で、株価をEPS(一株当たり利益)で割り算した数字です。
株価 = EPS × PEマルチプル
株価が下がる局面にはいろいろありますけど、そのひとつは言うまでも無く会社の業績が下がるときです。これは言いかえればEPSの数字が小さくなる時だと説明出来ます。
もうひとつ株価が下がる局面の例として、EPSは悪くないのに株価が上がらない場合があります。これは逆に言えばその株に対する市場参加者の評価がだんだん下がっていることに他なりません。
運用の役割分担ということを一般の読者の人に分かってもらうため、極端に単純化した説明をすれば、EPSの方向を予想するのはアナリストの仕事です。
その株に対する市場参加者の評価がどうなるかを予想するのはファンドマネージャーの仕事です。
マルチプル・コントラクションが起きているということは評価が剥げているわけだから、なぜ評価が剥げているのか?という原因を徹底的に究明しないのは、ファンドマネージャーがファンドマネージャーとしての仕事をまっとうしていないことに他なりません。
すくなくとも僕の美意識は、そういうことです。
アメリカのヘッジファンド・マネージャーの間にはマルチプル・コントラクションが起きている市場にぐずぐず拘泥することを恥とする気風があります。
年金や投信のマネージャーにはそういう考え方はありません。それはなぜかというと彼らは自分のベンチマーク(S&P500指数など)に比べてテキトーにやっておればよいという使命があるからです。
EPSが悪くなる時はアナリストが見込み違いをした事実は誰の目にも明らかです。なぜならEPSの数字そのものが小さくなってしまうからです。
これに対してマルチプル・コントラクションという「病(やまい)」を放置しているファンドマネージャーの失敗は一般の人には見えにくいです。でもプロが見れば「こいつはただ手をこまねいているだけだな」というのはイッパツでわかります。
マルチプル・コントラクションというのはPERが下がることを指します。
PERは株価収益率の略で、株価をEPS(一株当たり利益)で割り算した数字です。
株価 = EPS × PEマルチプル
株価が下がる局面にはいろいろありますけど、そのひとつは言うまでも無く会社の業績が下がるときです。これは言いかえればEPSの数字が小さくなる時だと説明出来ます。
もうひとつ株価が下がる局面の例として、EPSは悪くないのに株価が上がらない場合があります。これは逆に言えばその株に対する市場参加者の評価がだんだん下がっていることに他なりません。
運用の役割分担ということを一般の読者の人に分かってもらうため、極端に単純化した説明をすれば、EPSの方向を予想するのはアナリストの仕事です。
その株に対する市場参加者の評価がどうなるかを予想するのはファンドマネージャーの仕事です。
マルチプル・コントラクションが起きているということは評価が剥げているわけだから、なぜ評価が剥げているのか?という原因を徹底的に究明しないのは、ファンドマネージャーがファンドマネージャーとしての仕事をまっとうしていないことに他なりません。
すくなくとも僕の美意識は、そういうことです。
アメリカのヘッジファンド・マネージャーの間にはマルチプル・コントラクションが起きている市場にぐずぐず拘泥することを恥とする気風があります。
年金や投信のマネージャーにはそういう考え方はありません。それはなぜかというと彼らは自分のベンチマーク(S&P500指数など)に比べてテキトーにやっておればよいという使命があるからです。
EPSが悪くなる時はアナリストが見込み違いをした事実は誰の目にも明らかです。なぜならEPSの数字そのものが小さくなってしまうからです。
これに対してマルチプル・コントラクションという「病(やまい)」を放置しているファンドマネージャーの失敗は一般の人には見えにくいです。でもプロが見れば「こいつはただ手をこまねいているだけだな」というのはイッパツでわかります。
最近のマーケットでマルチプル・コントラクションが起きているのは、例を出せばBRICsです。(但しロシアを除きます)
マルチプル・コントラクションが起きている市場にとどまることを正当化するのは簡単です。
常套的な理由付けとしては「だけどこの市場は最近、とても割安になっている!」という主張です。これは運用会議などの場で必ず口にされる逃げ口上です。
一例を上げれば日本株はバブルのピークでは80倍近いPERだったので、90年以降の長期下げ相場では常に「だんだん割安になっている」と主張できたのです!
でも(それではなぜ割安になってしまったのか?)という検証はおろそかになりがちです。
僕は仕事柄、欧米の機関投資家のそういう運用会議の場に居合わせた機会が何度かありますが、マルチプル・コントラクションが起きている市場でぐずぐずしていたマネージャーは徹底的にやりこめられます。
また社内の会議だけでなく、その機関投資家にお金を預けている顧客投資家からもしつこくそのへんのところは追求されます。満足な回答が無ければお金を引き揚げられてしまいます。
マルチプル・コントラクションが起きる市場を去ることは、一見するとカンタンなようですが、実は至難の業です。
なぜかというとマルチプルがリッチ(fully valued=割高)な市場は多くの投資家がお金や時間をかけて研究し尽くした市場である場合が多く、それだけの労力を投入し、ノウハウを積み上げ、基盤を築いたがために、逆に去りがたいという未練やビジネス上のしがらみが出来るからです。
でもそういう風にその市場が一般の投資家にも知られてくると、新しい発見(ディスカバリー)はなくなります。実はマルチプル・コントラクションの起きる最大の原因がこのディスカバリー機会の喪失なのです。
そういう言い方だとわかりにくいので、もっとくだけた言い方をすれば:
「ほほう」とか「スゲー」という風に新鮮な気持ちで感嘆したり、驚嘆できることがあるか?
ということです。
例えば中国株を例にとれば北京オリンピック、上海万博などを相場の手掛かりとしてこれまで世界の投資家は中国株に投資してきました。そういう株の「買い方」は確かにあると思うし、僕も否定はしません。でも現実に上海万博が始まってしまえば、普通に考えれば「相場は知ったら、しまい」という法則が働き始めるリスクの方が大きいということは或る程度相場をやった人なら皆、知っています。
(つぎに何かあるだろう)
そう考えるのは希望的観測であり、自分を誤魔化していることに他なりません。
そして今、中国株は音を立ててマルチプルの陥没が起きているのです。
この理由は僕に言わせればカンタンで、先ず金融の引締めが行われているからです。
次に需給が悪い事です。早ければ今週にも中国農業銀行の2.8兆円ものIPOが申請されます。この地合で、一体、どうやってこれだけの供給をこなせるのでしょうか?
また中国政府が沿岸の都市部ではなく、内陸の開発に力を入れ始めているのも労働生産性のアービトラージのゲームが終わったことを象徴しており、長期的には不吉な兆候です。
僕の考えでは投資家が守らなければいけないルールは「投資環境の良いところで投資する」ということであり、決してひとつの国やひとつのアセット・クラスと心中することではないと思います。
マルチプル・コントラクションが起きている市場にとどまることを正当化するのは簡単です。
常套的な理由付けとしては「だけどこの市場は最近、とても割安になっている!」という主張です。これは運用会議などの場で必ず口にされる逃げ口上です。
一例を上げれば日本株はバブルのピークでは80倍近いPERだったので、90年以降の長期下げ相場では常に「だんだん割安になっている」と主張できたのです!
でも(それではなぜ割安になってしまったのか?)という検証はおろそかになりがちです。
僕は仕事柄、欧米の機関投資家のそういう運用会議の場に居合わせた機会が何度かありますが、マルチプル・コントラクションが起きている市場でぐずぐずしていたマネージャーは徹底的にやりこめられます。
また社内の会議だけでなく、その機関投資家にお金を預けている顧客投資家からもしつこくそのへんのところは追求されます。満足な回答が無ければお金を引き揚げられてしまいます。
マルチプル・コントラクションが起きる市場を去ることは、一見するとカンタンなようですが、実は至難の業です。
なぜかというとマルチプルがリッチ(fully valued=割高)な市場は多くの投資家がお金や時間をかけて研究し尽くした市場である場合が多く、それだけの労力を投入し、ノウハウを積み上げ、基盤を築いたがために、逆に去りがたいという未練やビジネス上のしがらみが出来るからです。
でもそういう風にその市場が一般の投資家にも知られてくると、新しい発見(ディスカバリー)はなくなります。実はマルチプル・コントラクションの起きる最大の原因がこのディスカバリー機会の喪失なのです。
そういう言い方だとわかりにくいので、もっとくだけた言い方をすれば:
「ほほう」とか「スゲー」という風に新鮮な気持ちで感嘆したり、驚嘆できることがあるか?
ということです。
例えば中国株を例にとれば北京オリンピック、上海万博などを相場の手掛かりとしてこれまで世界の投資家は中国株に投資してきました。そういう株の「買い方」は確かにあると思うし、僕も否定はしません。でも現実に上海万博が始まってしまえば、普通に考えれば「相場は知ったら、しまい」という法則が働き始めるリスクの方が大きいということは或る程度相場をやった人なら皆、知っています。
(つぎに何かあるだろう)
そう考えるのは希望的観測であり、自分を誤魔化していることに他なりません。
そして今、中国株は音を立ててマルチプルの陥没が起きているのです。
この理由は僕に言わせればカンタンで、先ず金融の引締めが行われているからです。
次に需給が悪い事です。早ければ今週にも中国農業銀行の2.8兆円ものIPOが申請されます。この地合で、一体、どうやってこれだけの供給をこなせるのでしょうか?
また中国政府が沿岸の都市部ではなく、内陸の開発に力を入れ始めているのも労働生産性のアービトラージのゲームが終わったことを象徴しており、長期的には不吉な兆候です。
僕の考えでは投資家が守らなければいけないルールは「投資環境の良いところで投資する」ということであり、決してひとつの国やひとつのアセット・クラスと心中することではないと思います。