覚せい剤を大きな資金源とする暴力団の中にも、国内で覚せい剤密造をたくらむ動きがある。
暴力団が国内で売りさばく覚せい剤の大半は、海外からの密輸入に頼っている。中国や台湾のほか、このごろはインド、ミャンマー(ビルマ)、フィリピンに出向いて買い付けるという。だが各国とも薬物犯罪の取り締まりが厳しくなり、日本に帰国する直前に逮捕されるケースが相次いでいる。
覚せい剤売買の事情に詳しい関係者は「首尾よく日本に持ち込めば相当な利益を得られるが、こんなご時世ではリスクが高すぎる。国によっては死刑になる」と話す。この関係者の知人の暴力団幹部も、海外で仕入れた覚せい剤を、中身をくりぬいたパイナップルの中に詰めて持ち帰ろうとして現地当局に逮捕された。
そこで浮上しているのが国内での製造だ。関係者によれば、すでに密造を具体的に検討している暴力団組織があるという。必要な薬品入手や製造方法を知るのはたやすいが、製造の過程で激しい異臭がするため場所の確保が難点とされる。だが一定の資金を持つ組織であれば、人や車の行き来のない場所に土地を買い、「密造工場」をつくることが可能だという。
別の関係者は「渡航費や仕入れ先への支払いなど密輸コストが不要になるため、より安く大量に売れるようになる」と話す。(編集委員・緒方健二)