治安の悪さが懸念されるサッカーのワールドカップ(W杯)南アフリカ大会で開幕を2日後に控えた9日朝、ヨハネスブルク北西約120キロの町のホテルに拳銃を持った強盗が押し入り、ポルトガルとスペインの記者やカメラマンが被害に遭った。8日にはヨハネスブルクのサッカーシティー競技場で開催都市の担当者が各国メディアの取材に応じ、「準備OK」と治安面の不安を打ち消したが、またしてもメディア関係者が強盗事件に巻き込まれてしまった。
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AP通信によると、ポルトガルのカメラマンは3万5千ドル(約320万円)相当の機材を盗まれ、ほかの2人は現金やパソコン、携帯電話などを奪われた。
3人は四つ星ホテルで、三つの寝室があるロッジを共同使用していたが、警察の調べによると、ポルトガルのカメラマンだけが起きていたため、頭に銃口を突きつけられた。スペイン人記者は「まさかこんな目に遭うなんて思わなかった」と話した。
南ア最大の都市、ヨハネスブルクでは、3日に韓国人記者がショッピングモールのトイレで強盗に遭い、首を絞められて失神。このほか、信号待ちで強盗に襲われるなど、メディア関係者の被害が相次いでいる。
また、5日には同市近郊の旧黒人居住区ソウェトで武装強盗団と警官隊の銃撃戦があり、警官1人が死亡。7日にも大勢の観光客がいる市の中心部で同様の銃撃戦が起きていた。
南アでは、殺人事件が年間1万8千件、1日に50件以上発生する。一方で南ア警察はW杯に向け、約4万4千人の警官を新たに採用。W杯に専従させるなど対策に力を入れてきた。
各都市の担当者は不安の打ち消しに必死。14日に日本の1次リーグ初戦カメルーン戦が行われるブルームフォンテーンの担当者は「安全は保障する」と明言。第2戦となるオランダ戦(19日)の舞台、ダーバンの担当者は「試合会場周辺の交通整理に1600人を投入する」と話したが…。
南ア政府は9日、国民に向け「いかなる不法、破壊的、危険な行為も容認しない」と、良識ある行動を求める声明を出した。