菅首相の側近・荒井戦略相に事務所費問題

　クリーンさが売りの菅内閣に、発足から一夜明けた９日、早くも政治とカネの問題が浮上した。菅直人首相（６３）の側近、荒井聡国家戦略担当相（６４）の政治団体が、知人のマンションを主たる事務所として総務省に届け出ていたことが判明。かつて自民党政権を揺るがした事務所費問題だけに、閣内は「問題ない」と火消しに躍起となった。共同通信社の緊急世論調査で、菅内閣は支持率６１・５％と高水準で船出したが、今回の問題で“看板倒れ”に陥る可能性も出てきた。

　共同通信社が８日夕から９日にかけて実施した全国緊急電話世論調査で、菅内閣の支持率は６１・５％に達した。９１年の宮沢内閣以降では６番目の数字で、鳩山政権発足時（０９年９月）の７２％には及ばないが、鳩山政権末期の１９・１％から、Ｖ字回復。理由では「首相を信頼する」が２１・１％と、首相本人への期待の高さを示した。「脱小沢」人事についても、８０％が「評価する」と答えた。

　民主党の支持率も４３・８％と、前回（３６・１％）から７・７ポイントアップ。自民党は２０％と大差がついた。参院選比例代表の投票先も民主党は４３・８％（前回３２・６％）で、自民党の２１・６％を大きく上回った。発足直後のご祝儀相場とはいえ、期待の大きさに党内では「早く参院選をやるべき」との声が強まっている。

　しかし、そこに水を差す問題が浮上した。荒井氏の政治団体「荒井さとし政治活動後援会」が、０２年から解散した０９年までの約７年間に東京都府中市の知人宅マンションを「主たる事務所」としながら、１０００万円以上の事務所費を計上していたことが発覚。荒井氏は「問題ない」と強調したが、事務所の実態など詳細な説明は避けている。

　事務所費問題は、かつて自民党政権で次々発覚。内閣の基盤を揺るがしただけに、細野豪志幹事長代理は急きょ会見し「適切な計上」と発表したり、仙谷由人官房長官も会見で「現時点では（問題ない）判断を変更する事実は入っていない」と述べ、党、内閣がまさに一体となって火消しに追われた。菅首相に至ってはこの日夜、「民主党の調査で問題ないと聞いている。それで１つの結論が出たと認識している」と、“幕引き”発言。

　これに対し、自民党は同様の問題があるとして川端達夫文科相や蓮舫行政刷新担当相を加えた３氏に、領収書などの書類提出を求める質問主意書を提出。徹底追及の構えだ。

　組閣翌日、首相側近にスキャンダルが発覚する最悪のタイミング。民主党内でも「身体検査が甘かった。お友達内閣と言われる」（議員秘書）と懸念が出ている。鳩山内閣がつまずいた「政治とカネ」で説明責任を果たせなければ、国民の菅首相への期待は一気にしぼむことになりかねない。

　［2010年6月10日8時30分　紙面から］