|
きょうの社説 2010年6月10日
◎北陸新幹線推進 政権公約に具体的明記を
新政権を始動させた菅直人首相や民主党執行部に望みたいのは、参院選マニフェスト(
政権公約)で北陸など整備新幹線の推進意思を明確に示すことである。民主党は昨年の衆院選マニフェストで新幹線に言及せず、当時の幹事長だった岡田克也 氏からは、新幹線を歳出見直しの例外にしないとの発言もあったが、不要不急の公共事業と同列に扱うような考え方が党内にまだあるとすれば早急に改めてほしい。 政権交代後は北陸新幹線沿線地域で与党の地方議連も組織化され、推進活動が展開され てきたが、気掛かりなのは、そうした声が党全体でどこまで共有されているかという点にある。民主党の政策集では、新幹線について「国全体の総合交通体系を確立し、その中で新幹線整備のあり方を位置づけた上、国民の理解を得ながら整備を進める」とし、推進なのか慎重なのか、はっきりしない。 地域経済への波及効果は言うまでもなく、政府の成長戦略や環境に優しい交通体系整備 の観点からも新幹線は合致している。新幹線をインフラ輸出の柱とし、海外への売り込みも始まった。日本が誇る技術をアピールするためには新幹線整備を国内でも「国家プロジェクト」として位置づける必要がある。そのためにも、既着工区間を遅滞なく完成させることや未着工区間の早期整備を政権公約に具体的に明記してもらいたい。 北陸新幹線の福井延伸をめぐっては、国土交通省政務三役の会議で議論し、夏までに新 規着工の是非や優先順位について方針を示すことになっていた。だが、前原誠司国交相は新内閣発足後、判断を参院選後に先送りする考えを示し、新規着工区間の建設費に使えるよう留保する90億円については「必ず使うとは言っていない」とし、年度内に着工を判断しない可能性も示唆した。そうした発言一つとっても、新幹線対応で腰が定まっていない印象を受ける。 菅首相は財政再建を重視する政権運営を鮮明にした。膨大な追加財源が必要になる衆院 選マニフェストの修正は当然としても、財政の制約を理由に、真に必要な公共事業まで一律的に抑制することは避けなければならない。
◎高峰映画の巡回上映 「挑戦の灯」若者の心に
映画「さくら、さくら〜サムライ化学者高峰譲吉の生涯〜」の巡回上映が金沢市内の全
公立中学校に続いて、県内の全公立高校でも行われることになった。ふるさと教育として、高峰博士の足跡や世界的な功績を学ぶ格好の機会といえる。この映画は偉業を成し遂げた高峰博士の人生が決して順風満帆ではなく、挫折のたびに チャレンジ精神を貫いて目標に向かった人間・高峰譲吉の姿が描かれている。努力の尊さ、家族や仲間の大切さが見る者に伝わってくるだろう。特に多感なころに見た映画に影響を受ける人は多い。「さくら、さくら」は金沢学院東高や高岡高の生徒も団体観賞しているほか、中学生向けに金沢市以外の県内市町でも上映される予定となっている。より多くの若者の心に高峰博士の「挑戦の灯」がともってほしい。 高峰博士を演じた加藤雅也さんは「博士のチャレンジ精神、日本の技術で世界に打って 出る発想は、将来を担う子どもたちにこそ学んでほしい」と語っており、映画を見た大人からも同様に若い世代の観賞を勧める声が多く聞かれた。実際、北國新聞赤羽ホールで巡回上映を観賞した小将町中の生徒らは、高峰博士の功績に理解を深め、努力する気持ちを見習いたい、などという声が寄せられた。郷土の偉人に誇りを持ち、決してあきらめない高峰博士の熱いメッセージを感じ取ったことがうかがえた。理数系に優れた金沢市内の中学生に贈られる「高峰賞」に対しても、これまで以上にあこがれと親しみが増すだろう。 映画では、ふるさとの歴史や化学の分野はもちろん、日本経済の礎を築いた人々や博士 が尽力した日米交流の歴史など、日本の近代史に興味がわくシーンが多く登場する。観賞をきっかけにして、生徒らのさまざまな学びの意欲を引き出せるのではなかろうか。 「さくら、さくら」はこれまで金沢や富山、米国などで公開され、共感の輪が広がった 。これからは全国上映が始まり、全日空国際線全便の機内でも観賞できることになっている。高峰博士の名がさらに広まることを期待したい。
|