中日−西武 9回表1死満塁、高山に同点2点タイムリーを左前に打たれる岩瀬(谷沢昇司撮影)
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悪夢の逆転負けだ。竜の守護神が、今季初めて救援に失敗した。7日の西武戦(ナゴヤドーム)、中日は3−1で9回を迎え、通算250セーブをかけて岩瀬仁紀投手(35)が登板も、4安打を集中され3失点。記念のセーブを飾るどころか一転、敗戦投手となった。首位巨人がサヨナラ勝ちしたため、ゲーム差は今季ワーストタイ、6・5差となった。
これが「生みの苦しみ」なのか。まさかの逆転劇にドームが凍り付く中、岩瀬は「3」と刻まれたスコアボードをちらりと見やった。「名球会」に手が届きかけたとき、守護神は思いも寄らない試練にぶつかり、顔を引きつらせた。
「すべての面で申し訳ないです」。竜の勝利を信じて疑わなかったファン、7イニング無失点と好投した先発川井、そしてチーム…。岩瀬は「すべて」の責任を背負った。
節目の大記録にリーチをかけていた夜。客席では「250セーブ」の横断幕が揺れた。あとはいつも通り冷静に3つのアウトを持ち帰ればよかったが、何かが違った。
先頭打者の片岡、代打中村に連打を許すと、中島は四球でまたたく間に無死満塁。1死後、高山には内角直球を左前にはじき返され、2者が生還して同点。大記録達成の可能性は泡と消えた。
「ここまできたら意識しないわけはない」と岩瀬。記録には無頓着な男が珍しく周囲の期待を敏感に感じていた。ピッチングはどこかで“よそ行き”になっていたのか。続く1死一、二塁で石井義にも左前に適時打を打たれ、逆転。今季初黒星までついてきた。
森ヘッドコーチは「いいときも悪いときもある」と守護神をかばった。いかに岩瀬とて人間。失敗する日もある。球史に名を残す大記録に王手をかけていれば、意識しない方が無理だろう。肝心なのは、この後だ。
岩瀬は「この結果は取り返しがつかない。次、やるしかない」と前を向く。抑えの切り札として6年あまりにわたって君臨してきた原動力は、この精神的なタフさ。失敗しても「その日のうちに切り替える」ことで、249個ものセーブを積み上げてきたのだ。
9日からは楽天戦(Kスタ宮城)、日本ハム戦(札幌ドーム)と敵地での試合が続く。杜(もり)の都か、北の大地で、岩瀬は今度こそ偉大な勲章を手に入れる。 (木村尚公)
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