秋田刑務所(秋田市川尻新川町)は、主に東北や関東で2回以上の罪を犯し、懲役8年未満を言い渡された人が入所する。罪名は窃盗や詐欺などが中心だ。
「犯罪性を取り除くため、犯したことの重大さを理解させるための改善指導に最も力を入れている」と垣野敏彦総務部長。さらに出所前、担当刑務官は手紙を家族に渡したり元雇い主と連絡を取るなどしてその後の生活の保障を図っている。高齢の受刑者の中には「福祉にお世話になりたい」「知り合いに身を寄せたい」という人もいる。
しかし垣野部長は「家族から見放されている人が少なくない。現実は厳しく、受刑者もそれを理解している」と打ち明けた。
出所しても、半数近くがまた刑務所に。3月末時点で、約580人の受刑者のうち2割近くを60歳以上が占める。
「更生保護施設は自立できる見込みのある人が対象。だがその対象とならない人が増えてきた。本来は福祉が対応すべき人が、刑務所に来ている印象を受ける」
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高齢や障害のある受刑者の出所後を支えようと4月、秋田市に県地域生活定着支援センターが設立された。
スタッフは福祉業務の経験がある3人。保護観察所などから依頼があった受刑者に面談を重ね、医療機関や福祉施設の紹介、福祉制度活用の検討などをする。全国には23カ所(1日現在)に開設されている。
養護(特別支援)学校で25年間教諭を務めた小泉典彦センター長は「受刑者には、家庭に恵まれなかったり孤立無援や貧困、虐待など劣悪な環境に置かれてきた人が少なくない。負のスパイラルで犯罪に戻ってしまうのを防ぎたい」と説明。「寄り添う姿勢で地域で安心して暮らせるよう支援し、地域の人にも理解を求めたい」と話す。
すでに秋田刑務所の何人かの受刑者について面談を持ちかけられ、近く足を運ぶ予定。刑務所の垣野総務部長も「働けず、生活保護も受給できなくて刑務所に戻りたいという人の再犯の防止につながるのではないか」と期待を寄せている。
毎日新聞 2010年6月8日 地方版