日本における方位術には、上記の『気学』『奇門遁甲』以外にも古来より様々なものがあり、それに伴って様々な吉凶作用を及ぼす吉凶神が考え出されて来ました。例えば、平安時代に盛んに行なわれた「方違え(かたたがえ)」などは、他出する際にその目的地の方角に「天一神(なかがみ)」という凶神が巡って来ている場合、その方角を避けて別の方角に一泊してから目的地に向かうという方法です。
現在このような考え方をしている人はいないと思いますが、専門家の中にも、平安時代から気学もしくは気学類似の方位術があって、その考え方に基づいて「方違え(かたたがえ)」が行われていたと勘違いしている方がたまにいらっしゃいますので、この点はくれぐれもお間違いの無いようにご注意願いたいと思います。
また、台湾には金函玉鏡という方位術もあり、流派によっては日の吉凶方位を判断する際にはこの金函玉鏡を用いる流派もあるようです。日本にもこれに関する書籍が若干出回っているようです。
日本においては、既に述べたように明澄透派系の『奇門遁甲』が多く広まっているため、自分が何らかの行動を起こす場合に用いる盤(立向盤)と、自分が行動を起こすのではなく周囲からどのような影響を被るかを見るための盤(座山盤)との2種類があると考えている人が多いと思います。立向盤と座山盤の区別をする考え方からすると、『陽宅風水(家相)』で用いる方位盤は「座山盤」の一種とも考えられますが、中国・台湾・朝鮮に存在する『奇門遁甲』の多くの流派においては、使い方が変わるだけで盤そのものは同じ盤を使用するものがほとんどのようです。
ちなみに私は、目的によって盤が変わることは無いと考えていますが、このような点も、方位術を学ぼうとする者を混乱させている要因だと思われます。