【ブログ】日本を次に待ち受けるのは危機=竹中平蔵・慶大教授
6月9日10時56分配信 ウォール・ストリート・ジャーナル
【ベトナム・ホーチミン】日本は、危機の到来をただ待つだけなのか。竹中平蔵・慶応大学教授(59)はそう考えているようだ。なぜ日本では過去4年間で5人もの首相が誕生しているのかとの問いに、竹中氏は、怠慢をその原因に挙げ、危機が迫っていると警告した。
竹中氏は、現在ベトナムで開催されている世界経済フォーラム東アジア会議に出席する傍ら、本紙のインタビューに応じ、日本は典型的な「CRICサイクル」の最終段階にあると説明した。CRICとは、モルガン・スタンレー証券チーフエコノミストのロバート・フェルドマン氏が提唱する考え方で、Crisis(危機)、Response(反応)、Improvement(改善)、Complacency(怠慢)の頭文字を取ったもの。
サイクルの第一段階では、危機(Crisis)が小泉首相を誕生させた、と竹中氏は述べる。小泉氏は、日本の経済問題に対して、銀行の不良債権処理を含め、当時経済財政政策担当相の竹中氏を中心に、厳しい施策で積極的に対処(Response)していった。そして、その結果、事態は改善(Improvement)した。
「小泉政権後から現在まで、われわれは怠慢(Complacency)の段階にある。その意味で、次に予想されるのは、新たな危機の到来と新たなリーダーの誕生だ」と、竹中氏は話す。
竹中氏と4日に首相に正式に指名された菅氏は、経済政策については明らかにお互い反対の立場にいる。二人の見解がいかに異なるかは、昨年12月に内閣府で行われた、日本の成長回復に必要な政策に関する非公開会合で明らかになった。
竹中氏は、外部の視点から、商品やサービスを創造する際の制約を少なくし、供給サイドの成長を促す必要性を強調した。一方、当時内閣府特命担当相の菅氏は、景気回復には需要サイドに関する取り組みの方が重要だとし、竹中氏と小泉元首相が取った政策は社会の格差を拡大したと反論したという。
「菅さんは当時、問題を明確に理解していなかった」と竹中氏は述べる。「わたしが言いたいのは、需要サイド政策と供給サイド政策は、互いに代替的なものでも、競合するものでもない。補完し合うものだということだ。新政権が、この点を理解してくれることを期待する」
竹中氏は、菅内閣が力を入れる「財政再建」には、消費税の大幅な引き上げが不可避だと述べる。現在の財政赤字を補うために必要な40兆~50兆円の国債を毎年発行するには、消費税率を直ちに25%にまで引き上げる必要があるという。
「しかも、菅さんは、社会福祉費も増やすつもりだ。そんなことは不可能だ。したがって、遅かれ早かれ、何らかの増税が必要だ」
だが、供給サイド政策の根っからの支持者である竹中氏は、日本の問題解決はそれほど難しいものではないと主張する。手っ取り早い解決策として、竹中氏は次の2つを挙げる。まず1つは、法人税率を現在の40%から、香港と同水準の17%程度にまで引き下げること。そして、もう1つは、羽田空港を24時間運用とすること。そうすることで、例えば、香港への日帰り出張などが可能になり、東京をアジアの金融ハブへと変貌させることが可能だという。
「北アジアで、この種のハブ空港を持っていないのは、北朝鮮と日本だけだ」
だが、菅内閣のメンバーに関する竹中氏の評価は高い。「非常にいい」人選だとし、菅氏の人事手腕の高さが発揮されていると述べる。国家戦略・経済財政・消費者担当相の荒井聡氏と、官房長官の仙谷由人氏はいずれも、マクロ経済を理解している現実主義者だと話す。また、古川元久氏と福山哲?氏の副官房長官への起用についても称賛している。
では、日本が待ち望んでいる危機到来の引き金となるものは何か。
竹中氏は、政府の債務残高は今後2、3年で約1100兆円に達する見込みだと指摘する。これは、日本の純国民金融資産とほぼ同水準だ。
「つまり、その水準を超えると、政府の借金を国民資産で賄うことが不可能になるということだ」と竹中氏は述べる。国内貯蓄で政府債務を吸収できなくなったときが、危機の到来だ。すなわち、円は売られ、債券・株式相場は下落し、金利は上昇する。
竹中氏は今でも、外貨建て資産の金利上昇は、一部の日本人の間に「暗黙の、静かな資金流出」を招くと考えている。
新政権が、そうした危機を回避できるかどうかについては、竹中氏は控えめに次のように述べるにとどまった。「現時点では、菅さんがこの体制を変えることができるかどうかは不明だ」
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サイクルの第一段階では、危機(Crisis)が小泉首相を誕生させた、と竹中氏は述べる。小泉氏は、日本の経済問題に対して、銀行の不良債権処理を含め、当時経済財政政策担当相の竹中氏を中心に、厳しい施策で積極的に対処(Response)していった。そして、その結果、事態は改善(Improvement)した。
「小泉政権後から現在まで、われわれは怠慢(Complacency)の段階にある。その意味で、次に予想されるのは、新たな危機の到来と新たなリーダーの誕生だ」と、竹中氏は話す。
竹中氏と4日に首相に正式に指名された菅氏は、経済政策については明らかにお互い反対の立場にいる。二人の見解がいかに異なるかは、昨年12月に内閣府で行われた、日本の成長回復に必要な政策に関する非公開会合で明らかになった。
竹中氏は、外部の視点から、商品やサービスを創造する際の制約を少なくし、供給サイドの成長を促す必要性を強調した。一方、当時内閣府特命担当相の菅氏は、景気回復には需要サイドに関する取り組みの方が重要だとし、竹中氏と小泉元首相が取った政策は社会の格差を拡大したと反論したという。
「菅さんは当時、問題を明確に理解していなかった」と竹中氏は述べる。「わたしが言いたいのは、需要サイド政策と供給サイド政策は、互いに代替的なものでも、競合するものでもない。補完し合うものだということだ。新政権が、この点を理解してくれることを期待する」
竹中氏は、菅内閣が力を入れる「財政再建」には、消費税の大幅な引き上げが不可避だと述べる。現在の財政赤字を補うために必要な40兆~50兆円の国債を毎年発行するには、消費税率を直ちに25%にまで引き上げる必要があるという。
「しかも、菅さんは、社会福祉費も増やすつもりだ。そんなことは不可能だ。したがって、遅かれ早かれ、何らかの増税が必要だ」
だが、供給サイド政策の根っからの支持者である竹中氏は、日本の問題解決はそれほど難しいものではないと主張する。手っ取り早い解決策として、竹中氏は次の2つを挙げる。まず1つは、法人税率を現在の40%から、香港と同水準の17%程度にまで引き下げること。そして、もう1つは、羽田空港を24時間運用とすること。そうすることで、例えば、香港への日帰り出張などが可能になり、東京をアジアの金融ハブへと変貌させることが可能だという。
「北アジアで、この種のハブ空港を持っていないのは、北朝鮮と日本だけだ」
だが、菅内閣のメンバーに関する竹中氏の評価は高い。「非常にいい」人選だとし、菅氏の人事手腕の高さが発揮されていると述べる。国家戦略・経済財政・消費者担当相の荒井聡氏と、官房長官の仙谷由人氏はいずれも、マクロ経済を理解している現実主義者だと話す。また、古川元久氏と福山哲?氏の副官房長官への起用についても称賛している。
では、日本が待ち望んでいる危機到来の引き金となるものは何か。
竹中氏は、政府の債務残高は今後2、3年で約1100兆円に達する見込みだと指摘する。これは、日本の純国民金融資産とほぼ同水準だ。
「つまり、その水準を超えると、政府の借金を国民資産で賄うことが不可能になるということだ」と竹中氏は述べる。国内貯蓄で政府債務を吸収できなくなったときが、危機の到来だ。すなわち、円は売られ、債券・株式相場は下落し、金利は上昇する。
竹中氏は今でも、外貨建て資産の金利上昇は、一部の日本人の間に「暗黙の、静かな資金流出」を招くと考えている。
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最終更新:6月9日15時12分
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